第33話 黄金の夜明け、銀の星 後編
「行くぞ! 覚悟しろ、魔装少女!」
銀髪の少年はそう叫ぶと、マシロの方目掛けて接近してきた。
マシロに近付けさせまいと、あたしは両腰のビーム砲で少年に向かって射撃する。
少年は左腕に装備されたバックラーでビームを防ぎ――そして吸収された。
「えっ!?」
あたしが驚いている間に、少年はマシロにさらに近付いていた。
「くっ……!」
マシロは顔を顰めつつも、背中のキャノン砲を展開して少年を狙い撃つ。
『星霊』すら一撃で屠るその攻撃はしかし、またしても少年のバックラーによって跡形も無く吸収されてしまった。
今ので予想はほぼ確信に変わった。
「その盾、もしかして……ビームを吸収するの?」
「当たらずとも遠からず、って所かな。このバックラーに搭載されているのはマジックアブソーバーって言って、魔力の籠った攻撃ならどんな威力を誇っていても吸収出来るんだ」
ガシャン、と左右に分かれていたバックラーを元の形に戻しつつ、少年は自ら手の内を晒す。
手品のタネを知られた所で、不利にはならないという事かしら?
それに、魔装によるビーム攻撃は、ビームとは言ってもその本質はあたし達の魔力をビームという形に変換しているだけだから、一応筋は通る。
「さて……次は僕の番だ」
少年はそう言うと、右手をこちらに向けてくる。
手の平には丸い水晶体があり、そこが赤く輝いていた。
「……っ!? マシロ、避けて!」
「喰らえ!」
あたしがそう叫ぶのと、少年が攻撃してきたのはほぼ同時だった。
少年の手の平から極太のビームが放たれ、マシロに襲い掛かる。
だけどマシロは、上空に逃げる事でビームを回避したみたいだった。
そんなマシロはお返しとばかりに両腰のビーム砲からビームを連射するけど、その尽くをバックラーに吸収されてしまっていた。
でもそれでいい。
少年の横に回り込んだあたしは、そのまま大剣を下から振り上げる。
少年はそれを回避し、あたしから距離を取る。
そして一度は離した距離を、自ら詰めてくる。
その理由はすぐに分かった。
少年は右手を貫手のような形状にし、手の平から出ていたビームをサーベル状に固定する。
そしてそのビームサーベルを、上段からおもいっきり振り下ろしてくる。
「くっ……!」
あたしは大剣を横に構え、少年の斬戟を防ぐ。
「クロナちゃん!」
マシロは急降下して大剣を振り下ろすけど、その斬戟は少年のバックラーによって防がれていた。
そしてこの密着状態は、少年に有利に働いた。
「《サンダー》!」
「がっ……!」
「きゃあっ!」
至近距離から魔法が放たれ、あたしもマシロもモロに喰らう。
ゴロゴロと地面を転がり、立ち上がろうとするけど、雷撃を受けて痺れているのか左足に上手く力が入らない。
見ると、マシロもあたしと似たような状態で地面に手をついていた。
「この程度なのか、魔装少女も……そんな実力で今までよく『星霊』を倒せたね? 運が良いのかな? でも安心して欲しい。これからは、僕達が『星霊』を倒すから」
「な、にを言って……」
「だってそうだろう? こんなに弱い女の子達に世界の脅威たる『星霊』の討伐を任せるくらいなら、自分達で討伐した方が早いからさ。だからお疲れ様。あとはゆっくりしてていいよ」
「嫌、だ……!」
マシロは大剣を支えにして、フラフラと立ち上がる。
「『星霊』を討伐するのは、わたし達の使命だから! その使命は、誰にも譲らない!」
「そうね……」
あたしも大剣を支えに、立ち上がる。
まだ左足は痺れてるけど、まあ……なんとかなるでしょ。
「あたし達の願いのためにも、『星霊』の討伐だけは誰にも譲れないわね」
「だからその為にも……」
「アンタ如きの実力の相手に、負けるわけにはいかないのよ!」
「それが、わたし達魔装少女だから!」
マシロと二人、そう啖呵を切る。
その瞬間。
ドクンと、身体の奥底から何かが目覚める鼓動が聞こえた―――。
◇◇◇◇◇
「『星霊』も半分まで集まった」
「力も順調に蓄積されてきてる」
「なら次は、その溜めた力を解放する段階だ」
「祝福しよう、魔装少女。これからキミ達は生まれ変わる。この――」
「「『対の魔王』の、器として」」
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