第2話 魔装少女


「見つけたよ、リーファ!」

「見つけたね、フィーラ!」


 突然の出来事に、あたしと一緒に異世界転移してしまったらしい、白髪ショートボブのセーラー服の女の子と困惑していると、そんな声が聞こえてきた。

 でも……前後左右を見渡しても、声の主は見当たらなかった。


 幻聴? と思いながら、ふと顔を上げると、そこには絵本とかに出てくる妖精のようなビジュアルの生き物……生き物? がいた。


 片方は白い、もう片方は黒い服みたいなのを纏っていて、蝶のような羽は半透明だった。

 大きさはだいたい、十五センチくらいの大きさだった。


「うわっ!?」

「何? ……うわっ!?」


 あたしの声に反応して、セーラー服の女の子も妖精(?)に目を向ける。

 そしてあたしとおんなじ反応をする。


 ビックリしてるあたし達に構うことなく、白と黒の妖精はあたし達の回りを飛び回る。


「ワタシ達が召喚した魔装少女を見つけたよ、リーファ!」

「そうだね、フィーラ! アタシ達が待ち望んだ魔装少女だよ!」

「魔装……?」

「少女……?」


 聞き慣れない単語を耳にして、あたしは首を傾げる。

 白髪の女の子の方も、聞き覚えはないようだ。


 言葉の意味的には……魔法少女に近いのかしら?

 とすると、「そう」の字は……装甲とかの「装」かしら?


「あの……魔装少女って、何?」


 すると、あたしより先に白髪の女の子が妖精に尋ねていた。

 妖精達はあたし達の前で止まり、女の子の質問に答える。


「魔装少女は魔装少女だよ!」

「そうだよ!」

「あの……答えになってないんだけど……」

「仕方ないなぁ……それじゃあちゃんと説明するね!」

「説明するね!」

「……初めからそうしなさいよ……」


 ボソッと呟くけど、幸い(?)にして妖精達には聞こえていなかったようだ。

 そして白と黒の妖精達が、魔装少女の説明を始める。


「魔装少女は、魔法と武装を使って戦う少女のことだよ!」

「でも、魔装少女になれるのは限られたヒトだけなの!」

「「それがキミ達だよ!」」

「はあ……」

「そう……」


 説明を聞いても、あまりピンとこなかった。

 白髪の女の子の方もピンときていないのか、曖昧な表情を浮かべている。


 今度は、あたしの方から質問する。


「限られたヒトしかなれないって言ったけど……あたし達が魔装少女になる義務も必要性もないわよね? 召喚した意味が無いんじゃないの?」

「それがあるんだよ!」

「あるんだよ!」

「……何よ?」


 何となく嫌な予感というか……マンガとかでありきたりな展開から予想すると、次に来る言葉は自然と想像がつく。


「魔装少女にならないと、キミ達は元の世界には戻れないよ!」

「戻れないよ!」

「でしょうね……」

「だろうと思ったよ……」


 あたしだけでなく、白髪の女の子もこの展開を予想していたようだ。


「具体的には?」

「この世界で暴れ回ってる『星霊』っていう存在を、全て回収して欲しいんだ!」

「そうすれば、貴女達は元の世界に戻れるよ!」

「回収って言っても……いったいどうやって?」


 白髪の女の子がそう尋ねると、妖精達はそれぞれあたし達の方に近付いてくる。

 白の妖精は女の子の方に、そして黒の妖精はあたしの方にやって来た。


「「右手を前に出して!」」


 女の子と顔を見合せ首を傾げるけど、ここは大人しく妖精達の指示に従う。


 右手を出すと、妖精は手首に触れる。

 次の瞬間、眩い光が妖精の触れた箇所から放たれた。


 思わず目を瞑り、光が収まった後に恐る恐る目を開ける。

 すると右手首には、黒いブレスレットが嵌められていた。

 白髪の女の子の方を見ると、彼女の方は白いブレスレットが嵌められていた。


 妖精達はあたし達の手元を離れ、再び説明をする。


「それが魔装少女に変身、『星霊』を吸収するデバイスだよ!」

「変身って言えば変身出来るよ! 試しにやってみて!」

「……どうしよっか?」

「……するしかないんじゃない?」


 白髪の女の子が困ったような表情で尋ねてくるので、あたしはそう返す。

 と言っても、あたしの方も若干混乱してるけど……。


「「変身っ!」」


 妖精に言われた通りの掛け声を同時に言い、変身する。

 光があたし達の身体を包み込んだのも一瞬で、あたし達の姿は制服姿から変わっていた。


 なんて言ったらいいんだろう……。

 足下はブーツで覆われ、両手も肘の辺りまで手袋で覆われている。


 そして胴体部分は、競泳水着に似た姿になっていた。

 控えめに言っても、すごく恥ずかしい格好だった。


「あの、これ……すごく恥ずかしいんだけど……」


 そう思っていたのはあたしだけではないようで、白髪の女の子が胸元を隠すようにしながら、真っ赤な顔でそう抗議する。

 でも、妖精達は彼女の抗議を無視して続ける。


「そのままだと『星霊』に太刀打ち出来ないから、ワタシ達が回収した『星霊』の力を渡すね!」

「渡すね!」


 そう言い、妖精達は正八角形の物体を何処からともなく取り出す。

 数は四つで、内二つは明るめな色、二つは暗めな色だった。


 明るめな方が白髪の女の子の、暗めな方があたしのブレスレットに吸収された次の瞬間、あたし達の身体に新たな変化が訪れた。


 全身を機能性をある程度失わないくらいにゴテゴテした鎧が覆い、背中からは金属の翼が生えていた。

 そしてあたしと白髪の女の子の手には、一メートルを超える大剣が握られていた。


 武器も鎧も、何なら翼も全く同じ形だけど、白髪の女の子の方が全部白いのに対して、あたしの方は全部黒かった。

 差し色で女の子の方は青色が、あたしの方は赤色があるけど、誤差の範囲だろう。


「それで最低限、『星霊』と戦えるだけの力は得られたハズだよ!」

「それと、もう変身を解除していいよ! 解除って言えば元に戻れるよ!」


 妖精がそう言うので、あたしと白髪の女の子は変身を解除する。

 すると、元の制服姿へと戻った。


「そう言えば……まだ名前を聞いてなかったね!」

「名前を教えて!」

「わたしは……マシロ。吹雪 真白」


 あたしより先に、白髪の女の子―マシロが名乗る。

 それに続いて、あたしも名乗り上げる。


「クロナ。あたしの名前は月夜野 黒奈よ」


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