第3話 初戦闘
自己紹介も済ませた後、妖精達―白い方がフィーラ、黒い方がリーファっていうらしい―の案内で、わたし達は近くの街へと向かう。
その道中、妖精達がこの世界についての簡単な説明をしてくれた。
この世界には魔法が存在し発達しているけど、それと同じように科学技術も発達しているらしい。
だから科学技術に関しては、わたし達の世界とあまり変わらないかも、と言っていた。
それと、この世界には人間だけでなく、エルフ、ドワーフ、獣人なんかもいるらしい。
なんか一気にファンタジーっぽくなってきた。
その印象を決定付けるのが―――。
「二人共! 警戒して!」
「魔侵獣が来るよ!」
妖精達のその言葉を受けて、わたしとクロナちゃんは身構える。
魔侵獣というのは、この世界に満ちる魔素という物質に、廃棄された機械が侵食されて生み出される機械生命体のことらしい。
その姿形が動物に似ていることから、魔侵獣と名付けられたそうだ。
そんな魔侵獣が、わたし達の視線の先にある丘の上に姿を現す。
見た目は狼っぽいけど、全体的に刺々しいのと、元が機械だと主張するように、金属の体で出来ていた。
その数は十体ほど。
「初戦闘になるけど、準備はいい?」
「あれくらいの雑魚を軽く倒せないと、『星霊』を集めるなんて夢のまた夢だよ?」
「……言われなくても」
「やってやるわよ」
妖精達にそう返し、わたしとクロナちゃんは一歩前に出る。
そしてブレスレットに触れ、魔装少女に変身する。
「「変身っ!」」
一瞬の内に、わたしは白い、クロナちゃんは黒い鎧を身に纏う。
そして翼から謎のエネルギーが出て、わたし達は浮遊する。
不思議なことに、全身の武装の使い方が昔から知っていたかのように理解出来ていた。
これが二度目で、ついさっき初めて変身したにも関わらず、だ。
まあ、不思議だとは思っても、便利ではあるからあまり気にしないことにしようと思う。
「……行くわよ」
「うん!」
クロナちゃんの言葉に頷き、大剣を握り締めながら魔侵獣の方へと向かって行った―――。
◇◇◇◇◇
マシロと共に魔侵獣へと接近し、あたしは大剣を横薙ぎに振るう。
たったそれだけで、一体の狼型の魔侵獣はバターを切るような手応えで上下真っ二つに切断された。
マシロの方も大剣を振り下ろしており、やっぱりたった一太刀で魔侵獣を左右に真っ二つに斬り裂いていた。
その威力にマシロは目を丸くし、あたしも彼女ほどではないけど驚きを隠せずにいた。
すると、無事だった魔侵獣があたし達の方へと突進してくる。
ハッと気を取り直して、翼を羽ばたかせて回避行動を取る。
「魔法も使ってみて!」
「詠唱はさっき教えたヤツだよ!」
妖精達からのそんなアドバイスを受け、あたしは近くにいた魔侵獣に狙いを定める。
そして初めてとなる魔法を発動させる。
「《サンダー》!」
あたしの手の平から稲妻が迸り、魔侵獣に命中する。
急所か弱点に当たったようで、魔侵獣は今の一撃で行動不能になった。
「《ファイア》!」
マシロの方も魔法を発動させ、魔侵獣を行動不能にしていた。
「二人共、その調子!」
「残りの魔侵獣も倒しちゃって!」
……今気付いたけど、あの妖精達はあたし達のサポートをする気は更々ないようね……。
そんなことを思いながら、あたしは残りの魔侵獣を倒しに掛かった―――。
◇◇◇◇◇
クロナちゃんと協力して魔侵獣を倒していき、残すは一体だけとなった。
「これで、ラス……とおおお!?」
大きく踏み込んだ瞬間、ぬかるみに嵌まったのか足を滑らせる。
その隙を突かれ、魔侵獣がわたしに飛び掛かって来る。
大きく開けた口にはノコギリみたいに鋭い歯が並び、鎧があるとはいえ噛み付かれたらひとたまりもないだろう。
反撃しようにも、体勢が不自然だから剣も満足には振れないし、翼を動かすこともちょっと難しい。
これからやって来るであろう激痛を想像し、わたしは思わず目を瞑る。
だけど、そんな未来は訪れなかった。
ガァァァン! と大きな音が聞こえたと思ったら、ふわっと身体が浮遊感に包まれる。
恐る恐る目を開けると、クロナちゃんの顔が間近に映る。
……というか、今……もしかしなくてもわたし、クロナちゃんにお姫様抱っこされてる……?
「大丈夫?」
「えっ……う、うん……」
クロナちゃんの質問に、わたしは子猫のように身体を丸めながら答える。
音のした方に目を向けると、わたしに飛び掛かろうとしていた魔侵獣の胴体に、わたしのモノとは異なる剣が突き刺さっていた。
たぶん、クロナちゃんが自分の剣を投げたのだろう。
「お疲れ様、二人共!」
「魔侵獣はもういないから、変身を解除していいよ!」
妖精達にそう言われ、わたし達は変身を解除する。
わたし達は元の制服姿へと戻り、魔侵獣に突き刺さっていた剣も消えていた。
クロナちゃんのブレスレットの中に戻ったんだろうけど……いったいどういうシステムなんだろう? 興味は尽きない。
それから、妖精達の指示を受けて魔侵獣から活動の核、人間で言う心臓に当たる部分であるコアを摘出する。
このコアを然るべき場所に持っていくと、お金と交換してくれるらしい。
十体分のコアを摘出した後、わたし達は再び目的地へと向かって行った―――。
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