第19話 再会
翌日。
わたし達はアメジストの街を出発した。
次の目的地は、ハスター渓谷を越えた先にあるというサファイアの街だった。
アイナちゃん達キャリー姉妹はトラックに乗り、わたしとクロナちゃんはバギーに乗って移動する。
道中、襲い掛かってくる魔侵獣はいたけど、そんなに数がいなかったからわたし一人で対処していた。
そして渓谷を越え、お昼頃にサファイアの街へと辿り着いた。
積み荷を一緒に卸していると、アイナちゃんがポツリと呟いた。
「そう言えば……この街ってローエングリン卿の領地なんだよね」
「うん? ローエングリン卿?」
「そう。今の当主が、若くしてベアトリーチェ殿下の近衛騎士に抜擢された傑物だって、ちょっと有名なの」
「う〜ん……?」
……まさか、ね。
そうは思いつつも、わたしはアイナちゃんに尋ねる。
「ちなみに……その当主の名前って?」
「確か……ラインハルト、だった気がする」
「ん? そこにいるのは……クロナ! クロナじゃないか!」
「えっ!? ハル!?」
すると、そのラインハルトさんがわたし達の前に現れた。
オフだからなのか、鎧は身に着けずにYシャツとスラックスというラフな格好だった。
彼がいる事を知らなかったらしいクロナちゃんも、驚いた様子を見せる。
それにしても、「ハル」か……ふ〜ん(ニヤニヤ)。
クロナちゃんは少し駆け足で、ラインハルトさんに近付く。
「何でハルがここにいるの?」
「いや……姫様から『溜まっている休暇を消化しなさい』と言われてしまってな。故郷に戻って休暇を満喫していた所だ。そちらは? 何故この街に?」
「あたしとマシロは、ある運び屋の護衛を引き受けたのよ。その護衛でこの街までやって来たの」
「そうか……せっかくならゆっくりしていってもらいたかったが……そうも言ってられない状況になりつつあるしな」
「……? どういう事?」
「兄様! ここにいたんですね!」
すると、新しい声が響く。
そちらに目を向けると、ブラウスと膝上丈のスカートを身に着けた、ラインハルトさんに何処と無く似ている女の子が彼の下へと駆け寄る。
もしかしなくても、ラインハルトさんの妹かもしれない。
だってさっき、「兄様」って言っていたし。
「紹介しよう。彼女はリリア、私の妹だ。当主代行を任せている」
「兄様、こちらの女性達は?」
「前に話した事があっただろう? 姫様の恩人達だ。黒髪の方がクロナで、白髪の方がマシロ殿だ」
「初めまして。兄ラインハルトの妹のリリアと申します。ローエングリン家の当主代行を務めております。以後お見知りおきを」
リリアちゃんはそう言うと、スカートの裾を軽くつまみ上げながらお辞儀をする。
「それにしても……身内以外の女性の名前を呼び捨てですか。兄様にもとうとう良いヒトが見つかったようですね?」
「リ、リリア!? 何を言っているんだ!?」
「そ、そうよ! あたしとハルはまだ、そんな関係じゃないわよ!」
ラインハルトさんとクロナちゃんは激しく狼狽える。
その様子を見て、リリアちゃんは面白可笑しそうにクスクスと笑う。
「まだ、ですか……将来が楽しみです」
「「うっ……」」
「まあ……兄様と未来の姉様を弄るのはこれくらいにして……兄様を探していたんでした」
「そ……そうだ。何故私を探していたんだ?」
ラインハルトさんがそう聞き返すと、リリアちゃんはさっきとは打って変わって神妙な表情をする。
「ハスター渓谷に潜伏するケルベロス変異種の居場所を、家で雇った調査員が大まかですが特定したようです。その報告をしたく、探していた次第です」
「分かった、すぐに屋敷に戻る。……ああ、そうだ。クロナ、マシロ殿」
「何?」
「何ですか?」
「二人の力を借りたい。なので、私と共に屋敷に来てくれないか? 無論、そちらの運び屋の少女達も含めて、だ」
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