棒々鶏っぽい

 昨夜は好物をこさえていたがために、はしゃぎすぎましたね。反省です。

 私はほっとくと一年三六五日は豚肉を食べつづけるので、時には意識的に他の肉を食べなくてはなりません。そんなわけで鶏肉です。


 棒々鶏バンバンジーを食べよう。


 実は私ふだんは小説を書いていまして、次回作に向けてHIIT式自重トレーニングwithバーピーを再開したんですよ。まだ理論が確立していなかった戦前の作家さまはご存じなかったでしょうが、小説の執筆には頑強な肉体と強靭な心肺が必要なんですね。筋肉はすべてを解決する。というわけで、痛めつけた肉体に十分な栄養素を、とくに良質なタンパク質を補給しなくてはなりません。


 そうですわね。鶏ささみですわね。


 棒々鶏は丸鶏? 鶏もも肉? 無作法なことをおっしゃってはいけません。どのみち食べる前に割いてしまうのですから、丸鶏で作ってたまたまササミ部分だけが手元にきたと思えばよろしくてよ。棒々鶏の語源にも似たような話がありますし。


 さぁやりましょう――といっても、やることめっちゃ少ねーですわ。愛用のステンレス鍋に胡麻油を引きまして、生姜のみじん切りを炒めます。中華ですから多くていいですわ。でもここに限ってはニンニクは入りませんの。中華料理って難しいですわね。あとは火を止めて油のパチパチパンチをキャンセルしつつ水をいれ、もっかい点火ののち沸騰するまでお待ちいただくだけ。

 

 ささみの筋取りは面倒ですから拒否しますわ。わたくしの歯は筋ごとき断ち切りますし。おまじないに長ネギの頭をぶち込んで止め火。汁はのちほどスープにしますから鶏ガラスープの素を入れましょう。あと雰囲気でお酒。料理酒でよくてよ。それから先日いただきました森永乳業さまのお大人のプロテイン(無味)も少々。おくそうございますおホエイプロテインフレグランスも生姜パワーが粉砕ですわ。


 え? 脂質が? かまへんかまへんですわ。たかだか運動強度十五くらいの素人がアスリート仕草を真似したとしても滑稽こっけいでしかありませんもの。烏骨鶏うこっけいでなくってよ? ふふ。


 さて茹で上がる前にお野菜の準備を。キュウリと大根、人参、美味しいから玉ねぎも。面倒ですけれど手と包丁で千切りしていきますわ。というのも、わたくし以前はスライサーを使っていたのですけれど、貧乏性を発揮した結果お薬指がスプラッタホラーになったことがありますの。以来スライサー恐怖症ですわ。あの方を前にしますと生まれたての子鹿のようにお手々プルプルでしてよ。


 あと何かすることありましたかしら? あ。タレ。醤油と味醂とラー油を少々、微塵に刻んだ長ネギ、お酢もいれちゃえ。あとはお胡麻。まぁ何を入れてもラー油パイセンがうまいことやってくれますわ。鶏も茹で上がりましたし、ザルに取って氷を仕込んだボウルに乗せ、冷気で粗熱を取りましょう。鶏だけに。ふふふ。


 スープはもうなんか適当なお野菜とキノコをぶっ込んで卵を回し入れれば、完成ですわー! といきたいところですが、まだ。タレを作ったボウルに手で割いたササミと千切りお野菜をぶち込み、撹拌。これで完成ですわー!!


 わたくし特製、棒々バンバンよだれ油淋ユーリンタイ式椒麻鶏ジャンマージーでしてよ!!


 え? 棒々鶏は蒸し鶏? 茹でるときに蓋をしましたわ。スープごと蒸しただけでしてよ。なんですの? よだれ鶏には唐辛子が? ラー油に入っていますわ! ええ? 油淋鶏は揚げる? ……油淋は油をかけるという意味ですけれど!? 棒々鶏はもっと細い? 中華屋だと豆板醤がついてる? 


 ……………。


 うるっっっっっせーーーーですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?


 オドレの通う中華屋なんぞ知るかボケェ! 棒状に切った鶏じゃけぇ棒々鶏じゃ! なんぞ文句あるんけぇのう! おお!? ほだらね! ワレェの手ぇでこさえてワシャに美味かぁ言わせてみせんかい! おぉん!?


 エホ! ゲェッホ! ゲヘッ! はぁっ、はぁっ……。

 またしても思い出し憤怒ふんぬで西進してしまいましたわ。ごめんあそばせ。


 でも、不思議ですわね。なんで普段は食べるばかりで、たまに作ればたいして美味しくもないものをドヤ顔で披露したあげく後片付けをしない御仁おひとは、ああも口ばかりお達者にお育ちあそばさせられるのでしょう。そういうとこだけ男女差がでずジェンダーフリーかつポリティカリーコレクトにできていますのが、人間という生命体の闇ですわね。



※ワンポイント油淋鶏

 タイ式椒麻鶏は台湾オリジナルの油淋鶏でしてよ! 名古屋の台湾ラーメンや新潟のイタリアン、佐賀のシシリアンライス、長崎トルコライスみたいなものですわ! タイでは食べられないのでお気をつけあそばせ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る