　先日、いや先々日……もっと前？　とにかく私は肉じゃがを食べようと思って冷蔵庫を開いたんですね。ところが豚肉を手に取ってみたら鶏もも肉だったんです。しかもじゃがいもが里芋で。まぁ鶏里（とりさと）にしたんですけど納得いくわけありません。

　というわけで、筑前煮です！

　いや鶏里はびっくりするぐらい肉じゃがの味に仕上がったんです。鶏臭すぎて黒コショっちゃいましたけど肉じゃがだったんです。でも、鶏肉の煮物と言ったら牛蒡が欲しくなるんです。明日は寒いらしいし今日のうちに南方の料理を食べておきたいじゃないですか。となったら買うのは牛蒡の他にレンコンこんにゃく、鶏もも肉。

　筑前煮ですわー！

　ひとたび思い立ってしまったわたくしは、どなたさまにも止められませんのよー！　というわけでおレンコンから乱切りにしていきましょう。皮は剥かなくておっけーちゃんですので縦割りにしてからザクザク切ってお水に投入。つぎはお牛蒡。たわしで擦って乱切り。わたくし雑な料理は大好きでしてよ。お水に投入！

　したらば今度は人参を乱切りしつつお湯を沸かしますの。おこんにゃくの下処理ですのね。スプーンを手に握り込んでぶちぶちっとちぎりまして下茹で。お臭（くそ）うございますお蒟蒻を無臭化ですわ。この、地味で面倒っちー下処理が最終形の味に超絶影響しましてよ。

　ええ。料理の美味しさというのは、悲しいかな下ごしらえの面倒臭さと比例していますのね。面倒なことほど大事！　あ、でも、ちゃんと測るとか、味見するとか、そういう味付けに影響する下ごしらえでしてよ！？　肉を巻くとかの見た目に関する下処理はやってもやらなくても同じですもの！

　さぁ鶏肉ですわ！

　愛用のステパンでおサラダ油を温めて、バッチバチですわー！　なんでこう鶏肉ってすぐバチバチになりますの！？　食すのは基本お雄鶏だからですの！？　闘鶏なんですのー！？　からのおレンコンとお牛蒡！　人参！　鎮火！

　水を入れておソルルに足らずですわー！

　さぁさぁ、こんにゃくと二つ割りにしたおしいたけを投入、味付けはお砂糖とお醤油とお味醂の鉄板コースでキッチンペーパー落し蓋ですわ。やっぱり豚鼻のシリコンお落し蓋を買おうかしら……？　中火。

　……煮物ってソッコーでやることなくなりますわね。なにか話すこと。あ、そうですわ。筑前煮といえば名前の通り筑前――現代でいう福岡のあたりの煮物ですの。具体的には、九州地方最南端に生まれたスーパー薩摩人（バーサーカー）こと島津のよっちゃんにワシが天下（九州）統一しちゃるけぇ！　と熱（いき）り立たれ、せからしか！　ぶっ殺しちゃるけいのう！　とブチ上がった高橋紹運がいたのが筑前ですわ。

　ええ！　バーサーカーでしてよー！

　ざっくり言いますとブチ切れヨっちゃん数万に対し千人未満で徹底抗戦キメるくらいバーサーカーですわ。無論、負けましたわ。そのあと息子さんが二千人の兵士でヨっちゃん釣って羽柴の秀ちゃん登場、修羅の国に束の間というか寸毫（すんごう）の間、平和が訪れますのね。ちなみに時期を前後して戦国キャノン大友宗麟が――めんどくちゃい！

　そも関東の方々からするとどうでｍ――遠すぎるので筑前っていうからには築後もありますのん？（ニチャア）となりがちですわ！　ありましてよ！　山を挟んで北が筑前、南が筑後ですの。そもそも筑前筑後は筑紫の国の南北で、豊前を入れた筑豊っていうのもあって――どいつもこいつも殴り合ってましたわ！　え、こわ、ですわ。

　……ん？　はて、名前が別れているということは、筑前煮みたいに筑紫煮とか筑後煮とか筑豊煮とかその他モロモロもありますの？　別物？　それとも、もしや、関東人にとって馴染み深い芋煮戦争や今川回転大判まんまるどらおきんつば（中略）御座候みたいな戦争が繰り広げられていますの？

　……で、できましたわー！　筑なんとか煮ですわー！！

　お味は安心、安全、信頼と実績の田舎味ですわ。不思議ですわ。なんで九州なんて言うサツバツしたところでこんなほっこり味の料理が生み出されましたの？　実はわりと近代の料理だったりするのかしら？　

※ワンポイント大友宗麟

　いちおう九州の名誉（？）のために補足しておくと、基本的には島津と大友の二勢力で戦っていましたわ！　話にでてきた高橋なんちゃらは大友様の配下ですのね！　ただ当の大友は東の毛利と二正面作戦しながらバーサーカーとやりあうバーサーカーなのでやっぱバーサーカーしかいないのが九州ですわね！