豚こまカボスシルバーニング
せっかくの土曜日じゃけえ久しぶりに赤身でステークしちゃろうかのうと台所に立った私は、ふと左手に――つまり、コンロの側に――視線を感じたんですよ。首を巡らせると背筋に冷たいものが滑り落ちました。それが怖気と気づくと同時に叫んでいました。
わたくしのステパンめっちゃ
汚い! 汚いですわ! 外側の話でありませんわよ!? 焦げ付けば最悪ヤスりますからピッカピカですもの! ではどこが汚いか! 内側ですわ! 内側がっ!
まだら模様に茶色く変色したり白く濁ってたりレインボゥに輝いてやがりますわー!
いえ、みなまで仰っていただかなくても結構でしてよ。ステパンにおける白や茶色や虹色は汚れではなくただの変色。お酸化被膜が高熱に曝された結果ですの。ですから汚ねーといっても物理的汚染ではなく視覚的汚濁ですわ。味にも健康にもなんの影響も及ぼしませんのね。無害。無害ですから無罪ですわ。ノー、ギルティ! ノットじゃないところがアグリーできかねます的なアレが感ぜられてエモいですわね。
さてさて、ステパンの変色が気になってしまった以上、わたくしは今日、このステパンでお牛肉をステークすることはできなくってよ! 久々に書いてみたら主語やら主体やらの置き場所がフワフワしてますわね。まあ直に慣れるでしょう。
お使いのステパンが変色したら! そう! カボス料理でしてよー!
ええ、ええ、わかっていましてよ。ヤスればええやんいうてはるのも理解しておまんがなでしてよ。なんか三ヶ国語くらい混ざったような気がいたしますわ。
ともかく! わたくしの愛すべきド田舎から届きました、こちら! 時期が外れてすっかり蜜柑っぽくなりつつあるお
おカボス料理を作るときのポインツはおカボスの爽やか気取った刺すような香味を活かすに限りますわ。だからおサンマのお
普通におタマネギの薄め千切りと豚こま炒めに垂らしましょう。
なんですの? ブチ切れを期待しましたの? ふふ。わたくし、いつもブチ切れているわけじゃありませんわ。お嬢様活動における
っというわけで、ステパンの表面におカボス汁を塗り塗りしやすくするよう、お玉ねぎはできるだけ薄めにスライスしておきましょう。無論、他のお野菜でもかまいませんけれど、ステパンの手入れを前提に選定しますと、お玉ねぎ、お長ねぎ、お大根にお蕪におパプリカおピーマンあたりが千切りないし薄切りでお刷毛の代りにできてお得だと思いますわ。
ではでは、ステパンにオリーブオイル……と思わせてサラダ油を引きましょう。でないとおカボス臭と混ざって地味にシャム猫のフレーメン反応みたいな顔になってしまいますものね。温まったらお塩を振って豚こまイン! バッチバチ色味が変わったらお玉ねぎもイン! でもおカボスはまだ! もうちょいクタるのを待ちつつ半分に切ったおカボスを両手に握ってゲットセット……、
――くぉぉぉれが左右七十キロの猛虎ベアハンドじゃぁぁぁぁぁい!
猛虎なのにベア。ふふふ。
ああ! 芳しい酸味! 目が痛いくらい! したらば、お菜箸をステパンにぶっこみまして、よく絡めるフリしつつ、クタったお玉ねぎでステパンの変色箇所を撫でてくださいまし。いまはまだ豚こまとお玉ねぎのメイラード反応色で茶色く見えていますけれど、お皿に盛ったらステパンには即水! ぶじゅーっとしますわ!
……ピッカピカの銀色に戻りましたわー!
あ、もちろん、炒めた豚こまも美味しく仕上がっていましてよ。
※ワンポイントカボス
一個だけ欲しいのに五個も六個も入っるからカボス買いにくくて困るって方もいらっしゃいますわ! わたくし、そんな方にはカボスカッテージチーズを作るようオススメしていますの! レモン系にはない香りも新鮮ですし、発酵させないから安心安全ですのね!
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