冷しゃぶは面倒くささでできている

 二月も半ばに入っていよいよ出てきましたね。新玉ねぎが。いえ、もちろん新玉ねぎとは白玉ねぎという品種なだけなのですけれど。旬とされるのはもう少しあとだったりするのでまだ多少は辛いかも。とはいえ、新玉ねぎを入れたからにはそう!


 冷しゃぶを頂きましょう!


 ここで冷しゃぶってなんやねん問題が発生します。面倒。というのも、しゃぶしゃぶとは関西生まれの水炊きのこと。水炊きは水ないし昆布だしで煮るわけですが、そのなかでもお肉を一切れつまんでお湯でしゃぶしゃぶしてタレにつけていただく形式のものをしゃぶしゃぶと――、


 めんどくせーですわぁぁぁぁ!?


 定義が! 定義がマジでクs――お排泄物めんどっちくありませんこと!? ちなみに九州の水炊きは鶏肉で関西は牛肉、関東では豚肉を使った豚しゃぶが一般的だと思われますわ。なので牛肉のしゃぶしゃぶは関東では牛しゃぶと言いますのね。しゃぶしゃぶ三国志のはじまりですの。


 わたくしは関東人かつ今回は冷しゃぶにしますので豚ロースの薄切りを選択いたします。さぁめんどっちー冷しゃぶの定義ですわ。冷しゃぶはお肉に湯通ししたのちお生野菜の上にドロップインしてお野菜を巻き込む形で縦スリーハンドレッドシクスティからの横ワンエイティでお口にダイブですのね。


 ではまず……めんどっちさの初手、新玉ねぎの薄スラ! ふぐ刺しをつくる心持ちで切りますわ。でもって氷水を張ったボウルにダンクですの。お鍋にお水を張ったら塩を投入。久々の浸透圧調整をしてお肉プルモチでしてよ。


 沸くのを待つ間にお大根とお人参を線切りしまして、おピーマンも輪っか状に薄くスライス。すべてを薄く細くが基本ですわ。なぜかといえば水菜も入れるから! 水菜の細さに合わせたサイズ感ですのね。手ぇがだるうございます。


 お湯が沸いたら第二面倒! おポン酒をちょろっとからのお肉の登壇。ここで焦って全部をドボンしますと温度が下がってカッチー仕上がりになりますので一切れずつ箸でつまんで、そう!


 しゃぶ! しゃぶ! ですわー!


 お湯から上げても余熱で火が入りますので、ちょいピンクでもおっけーちゃんですの。ボウルに氷を入れてザルを乗せ、その上にお肉をあげます。冷気で粗熱をとりますのね。さぁさぁどんどんしゃぶりますわよ! お湯の温度が下がりすぎたら沸騰待ちを忘れずに!


 アレお肉をしゃぶり倒したら例のアレ氷ボウル皿アレして粗熱とってアレ生野菜それそうします飾り置きますわ。せやろ違いますか? でもちゃうねん! ですわ! 関東の冷しゃぶ道には二つの流派がございましてよ! すなわち!


 先混ぜ、後混ぜ!


 行を変えてまでいうことですのん? ですわ。ちなみにわたくしのお知り合いに混ぜ混ぜした状態で提供するとたいそうお嫌そうなお顔をされる御方がいますわ。わたくしは洗いモンをアレしたかっただけですのに。見た目が悪いそうですのね。でもさいですかと思っているとその御仁、お店の先混ぜ式にはお洒落ですわと仰って……、


 ファッk――おセッk……お交尾ですわー!!


 どういうこっちゃねん! どういうこっちゃねんですわ! わたくしおトサカにきましたわ! ワレぇ因縁つけたいだけちゃうんか! ですの! お交尾! 今日はわたくしひとり分ですし先混ぜしてやりましてよ! お交尾よりお交接の方が正しいのかしら? わかりませんわ。

 

 ではお肉とお野菜をボウルに投入! タレを入れて撹拌ですの! タレはポン酢でもゴマダレでもなんでもよろしくってよ。ポイントとしてはせっかく冷やしていますし、お箸などをお使いになって、手のぬくもりを伝えないようにすることくらい。めんどっちーですわ。マジで。


 そんなときは手を氷水にドボンしてから素手ですわー!


 この寒い時期にはオススメできませんし、わたくしのように生まれつき無駄におハイポニキウムが長くて指から爪が出ちゃってるとお肉がちぎれたりするのでお気をつけあそばせ! お気をつけてもどうにもなりませんけれど。


 わたくしこの長く大きな爪のせいでお料理では深爪しろと迫られ、おクラシックギターでは爪が欠け、おピアノでは鍵盤上でチャカチャカ鳴ってお犬の散歩かしらとちくちく言葉をぶつけられてきましたの。おファック! あ、いけませんわ。お交接! やっぱりお交尾の方が語呂が良いしお獣性じゅうせいも感じられますわね。


 冷しゃぶがあがりましてよー!


 こちら先混ぜですので、しゃぶ漬けといいますのね。もちろん嘘ですけれど。今日は二月十四日ですしお安いけれど癖がなくて飲みやすいおブレンデッドウィスキー、バランタインさまを添え――、

 

 よう冷えたしゃぶでハッピーバレンタインですわー!



※ワンポイントハイポニキウム

 爪の先っぽの裏側に貼っ付いてる皮をおハイポニキウムと言いますの! こいつのおかげで爪が剥がれませんのね! 伸ばすには爪を切らないこと、縮める場合は痛みに耐えて爪の白いところを全カットですの。地獄すぎて諦念。でもあるとき長くて綺麗な爪ですわねと言われてお交尾! わたくしネイルなんてしませんわー!

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