　食材の管理って難しいですよね。根菜類は日持ちがするのでどうとでもなるんですが、菜っ葉類の、特にこないだ使った水菜とかめちゃ厄介です。一袋にだいたい四束くらい入ってるから食べきれないのなんの。足も早いですし。ということで。

　鶏もも肉の照り焼きを作りましょう！

　なにがどういうわけかといいますと、近ごろの寒気でガンガンに冷えた冷蔵庫の奥地から凍りかけた水菜を見つけたからです。それも二束。というかよく見ると外の方の葉っぱが萎びているというか溶けかけているような気配があります。

　可及的速やかに！　可及的速やかに処理する必要がございましてよ！

　ちなみになんで鶏もも肉の照り焼きなのかと申しますと、お家（うち）のおトースターについているらしいノンフライなんちゃらいう機能を使ってお唐揚げを拵えたかったからですわ。ええ。用意をしたまでは良かったのですけれど、めんどくちゃくなっちゃいましたの。ふふ。

　そんなとき冷蔵庫の奥で発掘したのが水菜！　死にかけの水菜！　これはもう土中に沈む棺桶に捧げるお花のように、茶色く照り輝く鶏の焼死体（もも）に水菜を献花せねばと思いましたの！　わたくし想像力も豊か！　嘘、テキトー言いました。

　ともかく、ちゃっちゃと進めていきましょう。わたくし今日はざっくりさっくり終わらせたい所存ですの。とりあえず下準備ですわ。水菜の傷んでそうな葉っぱをプチプチしたら包丁でざっくり分割ですわ。いまザクって言いました。凍ってますわ。

　したら……おニンニクをスライスしておきましょうか。なんとなくガーリィ（おニンニク）気分ですし。お味付けは醤油と砂糖と気持ちお酒かしらね。まぁざっくりテキトーでよろしくってよ。準備完了ですの。

　ではではお鶏もも肉の表面の水分をキッチンペーパーでお拭りしまして、ステパンちゃんに油をオン！　じわじわーっと滲んでくるのを待って、皮目を焼き付けるようにイン！　ッキャー！？　バッチバチ！　バッチバチですわ！　なぜ！？　わたくしちゃんと拭きましたのに！　お手々アッツイですわ！　ガチ火傷！　お水！

　水が、水がファッｋ――お交尾ン・コールドですわぁぁぁ！？

　はー……わたくしちょっぴりビックリしました。ふふ。でももう大丈夫。あとはおニンニクを投入してひっくり返すだけ……あ、あら？　焦げてますわ！？　なんでですの！？　あ！　表面の水分をお拭りしたから！？

　くぅ！　ここは急いで調味料を――投入するときにまたバッチバチかしら？　となれば先にフライパン表面を覆う何がしかが必要ですわね。……そうですわ！　水菜を入れてしまいましょう！　ちょっと傷んでますし！

　というわけで、えーい、ですの。すかさず調味料！　バチバチキャンセル！　あとは鶏もも肉にちゃーんと火が通っているのを確認してから……から……なんか、ブニョいですわ……？　これは、生！？　ピンク！？

　このままではテカリ鶏もも肉の生焼けですわー！？

　どうしましょう、どうしましょう、どうしましょう！？　すでに死にかけていた水菜が消し炭に変貌しようとしています！　というかおニンニクはすでにガーリィなチップス！　どうしたら、どうしたら……キュピーン！　ですわ！　お水を投入して炒め煮とし、大惨事を防ぎます！　

　わたくし的お料理リスクヘッジ秘術！　ノアの方舟！　鶏もも肉の照り焼きは水没しましてよ！　おぶなしめじと共に！　ついでに長ネギを適当にカットして加えましょう！　したらば蓋をバチッと閉めてお味噌汁の準備は割愛ですわー！　わたくしったらお料理の天才！　お料理界のグレートムタ！　黒師無双！

　蓋！　オープ――なにこれマジもんのお排泄物色でしてよー！

　どういうことですの！？　なにが起きましたの！？　マジ汚ねぇですわー！　なるほどフライパンの焦げが水に溶けて……でもいい匂いですわー！　脳が！　わたくしの脳が！　一般的にいう混乱のちょっと上の状態になってきていましてよ！　とんらんですわ！　網走番外地の若山富三郎さまが空気階段のモグラさまに見えてきてましてよ！？

　あ、でも、美味しいですわー！　

　水菜はぐったりタイプの溺死体と化していますし完全に照り焼きではございませんけれどなんか美味しく頂けてますわー！　見た目に目をつぶれば大丈夫！　というかわたくし料理の見た目で味が変わるタイプの人種ではないので無問題（もうまんたい）！

　このお料理、鶏もも肉の混沌（ケイオス）炒めとしてレシピにメモしておきましてよー！

　……わたくしだって失敗することくらいありますわ。

※ワンポイント武藤敬司

　一足先に引退して魔界の門を閉じられたグレート・ムタさまのお友達ですわ！　新日本マットの天才ですの！　膝が人工関節ですのにコーナートップに登って棚橋さまに全力で阻止されていましたわ！　本日の引退興行……相手は内藤さまですし最後だからで飛んじゃうかもしれませんわ！　セコンドは全力で止めてくださいまし！　フリではありませんわよー！？