猛虎ゲルマンポテト(三沢式)

 お久しぶりでございます。気づけば九月も半ばを過ぎてなお暑すぎてベランダでキマダラカメムシが熱死していました。仕事しろよカラスどもと言いたいところですがカラスさんもあの毛色ですから夏は地獄なのでしょう。ほどほどに頑張って。

 

 で、この頃の私はがっつり小説を書いていました。いちおうメインは小説書きだと申しておりましたけれども、あれから三本か四本は書きました。書いたはず。うち何本かはまだネットに公開しておりませんけれども。


 やるこたやったし、メシを食おう。そうなるのは自然の摂理にして人間の悲しき宿命であります。なんだ、ありますって。まあいいや。ともかく私の手元には膨大な量のじゃがいもがあります。どれくらいかってダンボール箱一箱くらい。道民の知り合いもいないのに三食ジャガイモでいけそうな事態。芋、芋、芋。


 このジャガイモども! わたくしが喰らい尽くして差し上げましてよー!


 久々のブチ切れも仕方ありませんわ。だって、わたくし日本人ですもの。お米食べたい! 食べたいのにおかずがおジャガ! 炭水化物地獄でおかずにならない! なりにくい! クッs――Scheiße! おシャイセでしてよー!!


 と、ドイツ語が出たので、おジャガ! 貴女あなたをおゲルマンポテトにしてやりますわ!


 ……なんですの? ジャガイモは女性名詞ですから貴女であってましてよ? あ、ちなみにおゲルマンポテトこと、おジャーマンポテトは、おドイッチュラントには存在しませんからお気をつけあそばせ。


 おドイチュでおゲルマンポテトを食べたいときは、おシュペックカルトッフェルンをお頼みくださいまし。意味はおベーコンおジャガですわ。日本でいうおジャガ塩辛みたいなゲテモn――おフランセの香りがする料理ですのね。


 手順事態はかーんたーん。おブロックベーコンを食べたいサイズと量だけぶつ切りにしまして、お玉ねぎを薄め千切り、オジャガは……めんどっちーのでちょい厚めの薄切りをチョイス! 皮? 本場では剥きませんわ、きっと。わたくし行ったことないので存じ上げませんけれど、あのゲルマン人どもが皮を剥くなんて文明的な下処理をするとも思えませんし。


 さてさて、極東から四世紀フランス仕草を披露したところで、わたくし愛用のステパンにオリーブオイルを引いていきますわ! ええ。ええ。わかってましてよ。わたくし、みなさまが何をお考えになられているのか、手に取るようにわかりますの。


 ゲルマン人ゆう蛮族はオリーブオイルなんちゅう文化的油つこてへんやろ!


 ええ。わたくし、みなさまのお気持ち、よーくわかっていましてよ。でも、いいんですの! なぜならこれは、おゲルマンポテト! 銀座ライオン様で提供され始めたともいわれる歴とした日本料理ですもの!


 てことでオリーブオイルなんですけれど、薄めに引いておきますの。おベーコンから滲み出る油も相まってバッチバチのバチポコヘッドになっちゃいますものね。それから、おジャガイモもしっかり水につけておデンプンを切っておきますわ。でないとお友達に戻りましょうと告げたメンヘラ彼氏彼女くらいへばりついてきますのね。


 ――んでは、いざ! フライパンにベーコンイィィィン!

 

 でも中火コールドスタートだからバチりませんの。ふふ。残念でした。なんでかといえば、おベーコンからおベーコン臭がする油を出して後におジャガイモと絡めたいからですのね。じっくりやって、じっくりやって……


 バァン! って弾けましたわー!! 毎回これビビる! 最低!


 でも大丈夫ですの。わたくしカリカリおベーコンマニアだった過去をひた隠し日々を送っておりますゆえ、おベーコンがご自分の脂で爆ぜるのを見ると――ふふ。笑みが溢れてしまいますわー! ヒィッ! 怖っ! 熱くないけど怖い!


 そんなときは、おベーコンをフライパンの端っこに寄せてからおジャガイモとお玉ねぎを投入ですわ! オーッホッホッホ! どうですの!? 焼けたオリーブオイルの上でパソドブレを舞う御気分はどうですのー!? オホホホホ! 


 さあさあ! その焼けた躰に、この!

 大人のふりかけ、おクレイジーソルトもかけまくってやりましてよー!


 それはもう! 親の仇のように振って差し上げますわ! わたくしお父様お母様には感謝もそれなり、ほどほどに恨んでおりますよし、ちょうどいい塩加減になりますのね。ご両親を憎んでおられる方はお気をつけあそばせ。さっぱり健康志向のお味になってしまいますわ。


 というわけで、ぽいっちょとバター追加で蓋をカパンですの。あとは蒸すだけ!


 待ってる間におビールを冷やしておりますと、うっすら思い出してきますわー。初めて食べたおゲルマンポテトはお父様がこしらえた、おマッシュポテトウィズインおノザキコンビーフでしたのね。黒胡椒をたっぷり振ったけどコンビーフの脂臭が全開放されて、わたくしの意識は煉獄に立っていましたの。


 ……思い出したら腹が立ってきましたわ! 

 おクレイジーソルト入れすぎたかしら?


 まぁでも! できましてよー! 


 わたくし特製、猛虎おゲルマンポテトですわ!


 ――って、くs――おシャイセ! このメンヘラおジャガ!! この! くの! あ、でもいい香り……食欲をそそられますわー!!


 

※ワンポイント・タイガースープレックス

 いま一般に知られているタイガースープレックスは二代目タイガーマスクこと三沢光晴様のダブルチキンウィング風に両手を取って背中側でクラッチするタイガースープレックス’84ですわ! 初代タイガーこと佐山様式は両手を取ったら背中に手を添えますのね! 呼吸を合わせて顎を引くようにするのが受け身のコツでしてよ!

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