　いまさらですが、私は料理するのが嫌いです。できることなら包丁を手にしたくないくらい。ではなんで作っているのか。なぜ外食ですませてしまわないのか。外食の方が料理するよりもうちょっとだけ嫌いなんですね。消極的選択です。ただこんなエッセイあるいはノンフィクションを書いていると、あらぬ誤解を受けかねません。そこで今回は、私の料理嫌いの一端を示すため、

　チキン南蛮のタルタルソースを作ろう。

　チキン南蛮というのは宮崎の郷土料理だそうでして、鶏のカリカリ衣付き唐揚げに南蛮由来の甘酢をかけ、タルタルソースを添えたものです。南蛮人……蛮人だというのにオシャレなものを召し上がっておられますわね。あなどれませんわ。

　というわけで、まず鶏胸肉のカリカリ衣付き唐揚げを買ってまいりましたわ！　え？　なんですの？　胸カラが惣菜コーナーに並んでいなければ鶏ももの唐揚げでもなんでもいいですわ。できるだけ衣がデカめについているのをオススメするくらいでしてよ。まんま鶏南蛮が売ってたらしめたもの。あとはタルタルソースをつくるだけですもの！

　わたくし常々思っておりますの。揚げ物は制作カロリー高すぎですわ。そこからさらにもう一手間を加えて後片付けまでいれたら摂取カロリーを上回り食べているのに痩せる謎人間になってしまいますわよ！　だから唐揚げを食べたいとき――いいえ、揚げ物を食べたいときは揚げ物だけに注力して終わり！　その先の手間がいる料理は揚げ物部分は買ってくるべきですわ！　だって、鶏南蛮におけるトリ唐は食材ですもの！　そうでなくって！？

　さぁ南蛮人ソースの精製ですわ！　基本は甘酢ダレですから、ここは作り置きしているみょうがの甘酢漬けから漬け汁を少々拝借しましょう。しょうが大変なことに。ふふ。ただお漬物用の甘酢ですから、お醤油とお味醂をくわえて少し調整。うすーくスライスした玉ねぎを水晒ししてからトリ唐に乗せ、ソースをかけます。

　これでチキン南蛮部はほぼ完成ですけれど、ここからが本番ですわ。そう。タルタルソースでしてよ！　甘酢漬けのみょうがをいくつか回収、みじん切りにしまして、玉ねぎのみじん、ゆで卵のみじんなどとマヨネーズで和えますわ。黒胡椒に気持ちお塩。常備しているハーブ類から適当なもの――今回はパセリを選択してパラパラ、コネコネしまして、

　チキン南蛮のタルタルソースができましたわー！

　……でもここまでやったのですし、せっかくですから味変がもうひとつくらいほしいですわね。一昨日のお大根をお下ろしして水気を絞り、豚レバの日からちまちまモシャってますけどなかなか減らないサニーレタスに乗せて、横に添えましょうか。

　箸が！　箸が止まりませんわね！

　こらもうアレですわ！　かつてわたくしをチキン南蛮沼に引きずり込んだ伝説の弁当、おセブンイレブンさまのタルタルチキン南蛮弁当のアレですわー！　わたくし、あれが一番好きなアレでしたのに、健康志向という名の不健康な御仁（おひと）しか得しないアレのせいであれしてしまって、しばらくタルタルチキン南蛮難民でしたのよ。古いアレですわ……。

※ワンポイントタルタル

　チキン南蛮の元祖と言い伝えられているお店ではタルタルソースをつけないそうですわ！　またタルタルの語源は中央アジアの遊牧民タタール族からきているそうですの！　生まれた地が九州ですから、古き時代の江戸民からすると鶏の薩摩蛮族（バーサーカー）風唐揚げの南蛮人ソースかけ西蛮人ソース添えですわね！　蛮人……おハイソですわ！