絶望のアジフライ
私は年に百回くらいアジフライが食べたくなるんですが、そのうちの七十回くらいは我慢して、残りの二十九回ないし三十回はアジフライを食べに行くか、買って済ませてしまいます。だって、面倒くさすぎるんですもの。
でも、たまにはアジを自らの手でフライにしてやりたくなるんです。
なぜそんなに揚げ物の自作を避けるかというと、もう単純に後片付けが面倒なのと熱した油のパチパチパンチ恐怖症だからです。痛いし熱いし汚れるし怖いし作るのに時間かかるくせに食べるのは一瞬だし、いいことないのです。
そんな私にとって魚介類の揚げ物なんて輪をかけて辛いんです。エビフライとか好きですけど尻尾の水が切りきれてなくてバチコンいったら
けっきょく、釣ってすぐ揚げるアジフライには勝てねぇんですのよ!
魚介類の調理は、お料理というエンジニアリングの限界を示していますわ。何をどう足掻こうか鮮度には負けるんですの。まぁ干したり熟成したりを料理のうちに含めれば多少は抵抗できていることになるかと思います、けれど――、
ことアジに限っては! アジに限ってはダメですの! 釣ってすぐ締めたその日フライにされるとお
も、もうアジフライが切れて手ぇがブルブル震えてますわ……!
辛抱たまりませんのでスーパーにアジを探しに行きますわ! まずここが最難関でしてよ! 旬の時期からがっつり外れていますし調理がめんどくせぇので売り場に少なくなっていますわ! ……ねぇので商店街のお魚屋さんへ!
ありましたわー! と叫ぶ前にお目々チェックでしてよ。鮮度が良ければ夢や希望を映しているのか瞳がキラキラしていますの。そこから
で、このとき頼めそうなら開くとこまでお願いするのが世話ねーですわ。わたくしは普段こないお魚屋さんで話しかけるのこえーですから今日はこのへんにしといたりますわ!
では、死んでるアジを
さて、こっから。関西では
……なんて、わたくしあたかも美しく捌いているかのようですけれど、基本へたっぴなので徐々にグズグズになっていきましてよ。数をこなさないと上手くならないので当然ですわね。背骨をぶった斬ったら腹骨を削いで小骨抜きですわ。こういうときに便利なのがラジペン――ラジオペンチでしてよ。DIYですわね。
もう衣をつけて揚げるだけですけれど、その前に、塩を振って水抜きするのをオススメしますわ。お魚さまの死臭もとい生臭みを抜きますのね。あいだにおタルタルソースの準備をしますの。つくりかたは割愛。ちなみに突っ込む漬物はわりとなんでもいけましてよ。お魚さま相手なら酸性つよめがオススメなくらいかしら。
さぁ、揚げ。衣を
熱した油のお加減はどうですの!?
お気に召しましたかしら!?
オーホッホッホですわー! ンゥアッツイ!!
……んでは、両手を揃えて尊き犠牲に感謝の祈りを捧げましょう。
いただきます。
……ああ、やっぱり……やっぱりですわ。以前、ふらりと寄った閑散とした定食屋さんにて味わった、釣りバカ日誌に出てきそうなおっちゃん乱入からのアジ釣ってきたから食べていきなよのアジフライには遠くおよびませんわ……。
やはりアジフライは絶望の――ギャーッ! おシンクに死んだ魚の目が!
――そんな目でみないでくださいまし!
※ワンポイントアジフライ
アジフライ、実は切り身スタイルのほうが熱のとおり方が均一になりますわ! また、お魚さまの死臭は時間とともに倍加いたしますので、生お廃棄物の日の前日に
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