肉と菊芋とお味噌汁

 金曜日の恒例行事、藪睨みスーパーですよ。当て所もなく店内を彷徨い、目についた商品を籠に入れて晩飯にしようというサバトの一種。あ、生姜の大袋。そういえば切れてたから買い足して……生姜じゃない!? なに? ふむ? 


 今日はこの菊芋とやらを食べてやりましょう!

 

 私はじめて見ました。見た目は生姜で名前は芋。未知の食材は煮る焼く炒めるで何とかするのが基本ですが、芋ってくらいだしふかしてみようかと検索しますと、なんと生で食べられると。芋が!? デンプン消化できなくない!? じゃあ芋じゃないんでしょうか。薄切りにして生でいけると。ふむ。皮つきでスライスして、パクリ。


 …………この記事を書いたライターを呼んでくださいまし!


 おうコルァ! 土の味しかせぇへんやないけ! なんやこれ味も食感も生のジャガイモ口に入れたときの奴やないか! これは、アレや! どう考えても火ぃ入れた方がええもんを生で食べれるからって生でも美味しいとか書いとるアレやろがい! 


 くっふ! ぬぅあぁぁぁぁん! 憤怒が口からまろびでますわ! 

 あんまりビックリしたから調べ直してみたら、なんですの!? 北アメリカの原住民が主食にしてたとか、戦後の食糧難の時期に奨励されたとか、これどう考えても痩せた土地でも育つからとりあえずこれ食っとけって奴でしてよー!!


 ふぅ、ふっ、ふぅっ……! スーパー逆鱗コチョコチョタイムでしたわ。わたくしったらはしたない。なんにしても帰ってきてしまった以上は冷静になってこいつで夕食をなんとかせんといけなくってよ。さぁ、どうしますの、わたくしさま!


 ……ニンニク醤油で肉と炒めよか。


 わたくしご家庭所属の疲れたキッチン・クォーターバックを代表して思考を彼方へロングパスいたしました。ニンニクと醤油がすべてを包み込んでくれるはず。わたくしはニンニクさまを信じますわ。あ、いちおう甘味に玉ねぎもいれておきましょう。


 なんとなくヨーロッパな土の香りがしたので、油はオリーブオイルを選択。ステンレスパンをあっためーの豚ロースいれーのからのテケトースライス菊芋でわ! ……こいっつ、見た目も何も変わらんど……ですわ。なんとなく透き通っていくようなそうでもないような……わかりませんわね。


 では次にお味噌汁を選択。味噌汁もゲームチェンジャーとしては最強クラスの汁ですものね。わたくしトマトとピーマンと渦巻きビーツのポタージュ味噌汁とかとっても好きですのよ。というわけで……生姜みたいなみためのせいでいい形になりませんわ。乱切りでいいでしょう。キノコはエリンギさま。地味にいい出汁がでますの。グルタミン酸でいうと愛すべき舞茸さまと同程度かしら。


 というところで、サクっとできましたわー! 菊芋のなんか! ですわ!


 やってることが代わり映えしないので文章量も節約できてお得ですわね。では頂きましょう。まずはこの茶褐色にテカる、菊芋さま! いざぁ。


 ……味ねー……ですわー……。


 なんでしょう。食感はレンコンで味はお上品かつ慎ましくお静かであらせられますのね。繊細すぎてわたくしのような粗忽者には理解がおよびませんのね、きっと。では次にお味噌汁をば。


 ……芋、ではない何か?


 芋っぽいんですけれど芋ではないような。炒めよりも甘みが強くでていますので煮るのがおすすめかもしれませんわ。っていうか、欧米の荒れた大地で取れる根っこ食系のもんは大概が煮込んだほうが美味しいだけですわね。


 なんか栄養豊富でアンチエイジング食材らしいので、お試し遊ばせ!


 ……てかこれ粉末にしたり乾燥チップにしたり基本栄養豊富だけどあんまり美味しくない食材に対する加工を施されていますわ……菊芋さま……お可哀そう……。

 


※ワンポイントでんぷん

 イモ類が生食厳禁なのは、含まれているデンプンを消化できないからですわ! 米に含まれるデンプンは加水と加熱によりアルファ化したのち唾液で分解していますのね! ですから大皿の餡かけがとろみを失ってきたら、箸についた唾液が餡に混ざり片栗粉のデンプンを分解したってことでしてよ!

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