第5話 おぬし、昨夜、何かあったか?
(トントントントン)
二人はどれくらいに起きてくるのかな。それよりも朝ごはん、ちゃんと食べてくれるかな。
「朝から、この音を聞くのも懐かしいわ」
振り向くと背の高い綺麗なお姉さんが立っていた。
「あ、おはようございます。祥さん」
「おはよう、
「はい、気が付いたら朝でした」
信君に干してもらったお布団と、祥さんの紹介で蓮花さんからもらった服のおかげで朝までぐっすりだったんだよね。
「ふふ、よかったわ。それにしてもいい匂いね、早くから起きてやっていたの?」
「いえ、夜に下準備をしていたので、さっき起きたばかりです」
「いつの間に……料理も上手だし、玲玲ちゃんはいいお嫁さんになりそうね」
「ありがとうございます。誰かもらってくれたらいいんですけどね」
「玲玲ちゃんならすぐ見つかるわよ。もし誰も見つからない時には、私のところに来たらいいわ」
「あはは、その時はよろしくお願いします。もうすぐできますので、食堂で待っていてください」
祥さんはたのしみにしてるわーと言って、食堂の方へ向かって行った。
私をもらってくれるか……祥さんってあんな格好しているけど、どっちの方がいいんだろう。
「おまたせしました。あ、信君おはよう」
出来たての料理をワゴンに乗せて食堂に行くと、祥さんの他に信も座って待っていた。
「おはよう、姉ちゃん。君はいらないぜ」
ん? なにか変な感じだ……
「あら、信ったら、玲玲ちゃんのことをお姉ちゃんだって」
ああ、そういうことか。
「ば、バカ、あんな美味いメシ食わしてくれるんだから、これくらい言ってもバチ当たらねえよ」
「ありがとう。祥さん、信、温かいうちに食べて!」
ふふ、こんな美味しそうに食べてくれるのってなんだかうれしいよね。
「こんなに早くから行くんですか?」
食事をすませた私たちは、おばばさんの元へと急いでいる。確かに朝ごはんも早かったんだけど、今の時間はまだ早朝と言ってもおかしくない時間だ。
「ばあちゃんだから朝が早いんだ」
「そういうことね。そして遅れると怒るの……」
う、昨日会った時も気難しいように見えたけど、そのままなんだ……
「まあ、取って食われるわけじゃないから、心配しなくても大丈夫よ」
「は、はい」
おばばさんの小屋は……確かこの先を曲がったところだったよね。
王宮の中庭を三人で進む。
「さあ、着いたわ。遅れてはいないと思うけど……おばばー、来たわよー」
祥さんが小屋のドアを開け、三人で中へと入る。
「遅い!」
おばばさんはこちらを見るなり一言吠えた。
それを見た信は、こっちを振り向いてほらなって顔をする。
「いつもと一緒の時間よ。それで、どうだったの? 易を立てたんでしょう」
中は昨日と同じように雑多な感じだけど、かろうじて昨日の場所がそのままになっていたから、三人でそこに座る。
「ふん、ちゃんと立てたわい。それで……ん? おぬしちょっとこっちに来い」
私の顔を見たおばばさんが手招きする。
「わ、私?」
「早くせんか!」
「は、はい」
下に置いてある物にできるだけ触らないように、おばばさんのところへ
「おぬし、昨夜、何かあったか?」
おばばさんは昨日と同じように私の顔を撫でながら聞いてきた。
「別に何も……ご飯作ってみんなで一緒に食べて、先にお風呂頂いて、ちょっとだけ朝食の準備をしてから寝ただけです」
「ふむ、こいつらが手を出したわけでもないようだし……」
さらにおばばさんは私の頭をポンポンポンと三回叩く。
「ばあちゃん、姉ちゃんに何かあったのか?」
「なぜかは分からんが、昨日より巫女の力が強まっておる」
うそ!
全然気付かなかったよ。
「おばば。玲玲ちゃん、何かできるようになったの?」
「うーむ、まだ覚醒はしとらんようじゃの」
やっぱりそうなんだ。
「あら、残念。それで易の方はどうなのよ」
「急かすな! よく聞け。昨夜見たところによると
朱雀廟? 困難?
「朱雀廟って確か南の山奥で結構遠かったよな。行かないとどうなるんだ?」
信君は場所を知っているみたい。
「しばらくの間、雨が降ることは無かろう」
「そんな……雨が降らないとみんな困ってしまいます」
畑があんなに干上がっているのに雨が降らなかったら作物が育たない。それに、近いうちに飲み水だって怪しくなるかもしれない。
「そうじゃ、今はまだ不満で済んでいるが、食うに困るようになったらそれだけでは収まらん。恐らく反乱がおこるじゃろう」
は、反乱……
「父さんは王様が新しくなったのが原因だって言っていました」
「あら、王様が変わったからって、そうなることがあるのかしら」
私もそう思う。王様のせいにしても仕方がないんじゃないかな。
「あながち的外れでもないのう」
そ、そうなんだ。
「ばあちゃん、どういうことだ」
「お前たちにも関係あることだからよく聞けよ」
それから、おばばさんはこうなった原因を話してくれた。
「ほんと、驚いたわ。信、知ってた?」
私たちはおばばさんの小屋から戻り、食堂に集まって話を整理することにした。
「し、知らねえよ。俺が知るわけねえじゃねえか!」
「なにムキになってんのよ……まあいいわ。それで玲玲ちゃん、どうするの? おばばは朱雀廟に行けば分かるって言っていたけど、元はと言えば姉妹ケンカよ。私たちがそれに巻き込まれる筋合いはないわ。危ないみたいだし、断ってここから出てもいいと思うの」
おばばさんは、この干ばつの原因は隣の国である
「私が行って呪詛を解かないとみんな困るんですよね……」
「確かにそう言っていたけど、そのやり方も朱雀廟に着いてからじゃないとわからないみたいだし、行っても無駄になるかもしれないのよ」
でもおばばさんは、行かないとずっと雨が降らないって言っていた……
「無駄足になるかもしれないけど、私、行ってみます」
だって、行かずに安全な場所にいたとしても、雨が降らないのならご飯が食べられなくて飢えてしまう。それに反乱になったり、戦争になったりしたら、巻き込まれて死んでしまうかもしれない。
「そう……決めたのね。わかった、私は玲玲ちゃんについていくわ。信、あんたはどうするの?」
「もちろん、おいらも行くぜ」
「そうと決まったらしっかりと準備しないとね」
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