第48話 玲玲を幸せにする……します!
詳しく話をするためにみんなで家の中に入ることになった。
「
「ちゃんと
「おいもそいは見とっし、玲玲が幸せになるならよか話って思うとったとけど、いきなりこん子供が嫁にくれ言うやろ、どげんなっとっとかって思うたったい」
お父さんから睨まれた信は、私の隣で身を正したまま話し出した。
「お、おいらは姉ちゃんにお願いして、ちゃんと返事ももらってる」
「お、おい、まさかこん子が?」
「はい、お父さま。この方は甘信さまと言われ、成人された際には皇太子になることが決まっております」
振り向くと、私の後ろに座っていた祥さんが真面目な面持ちで語っていた。
「り、玲玲、そげん大事なことは早う言わんばね。か、甘信様、このようなあばら家においでいただき恐縮です。どうか足を崩されてください」
「い、いや、おいらはまだ町人の息子だから、普通にしてください」
「でん……」
お父さんが助けを求めてきた。
「信は堅苦しかと苦手やけん、言うた通りにしてあげたらよかとよ」
「わかった、そんなら変わらんごとすっけん。そいで、そん子たちは……」
お父さんは、祥さんの隣に座っている可愛らしい二人に目を向けている。
「春鈴です。はい、延も」
「陸延です」
うん、二人とも上手だよ。
「まだ幼かごったっとの……まさか!」
「まさかって、父ちゃん計算の合わんやろう。で、こん子たちはどうしたとね」
「春鈴ちゃんは巫女の守り手で、延くんは神様になるかも……」
「はぁ!」
「こ、こん子たちが……」
「お姉ちゃん、僕、オオカミになる?」
「ううん、ならなくてもいいけど、もしかして退屈だったりする?」
延くんはうんと頷く。
「そりゃ、いかん。話はもうよか。そいで、ここじゃたいしてもてなしができんばってん。どがんすっか母ちゃん」
「そうたい。こげん
「
「材料のあっとやったら、私も手伝うたい」
「そいに巫女の守り手かも知らんばってん、子供ば野宿させるわけにはいかん。そん子たちはうちで寝せんね。そいで甘信さまには悪かけど、家の狭かけん。外で寝てくれんやろうか」
「だって、祥さんと信は外でいいかな」
「もちろん、最初からそのつもりだからかまわないわ。ねえ、信」
「おいらはどこで寝てもいいんだけど、お父さんからの返事をもらってない……」
返事って?
お父さんもきょとんとしている。
「あー、父ちゃん、甘信さまは玲玲と結婚してよかかって言いよらすとよ」
「なんね、そがんことね。玲玲が良かと言うとやけん、おいからは言うことはなんもなか。逆に幸せにしてやってくれと頼みたかぐらいたい」
「お、父さん。おいら、ね……玲玲を幸せにする……します!」
「おう、頼むな、婿殿!」
「ほぉー、春鈴ちゃんうまかもんやね」
春鈴ちゃんの包丁さばきを見てお母さんが感心している。
毎日王宮の離れで料理の手伝いしてくれているもんね。
「えへへー」
「こん子が妖狐っち聞いた時には何かの冗談かと思うたばってん、あんげん可愛いか子ぎつねに化けるとは思わんかったばい」
お父さんとお母さんが春鈴ちゃんと延くんのことが気になるようだったから、結局本当の姿を見てもらったんだけど、お母さんは二人が子ぎつねやオオカミに化けたと思っているみたい。逆なのにね。
「そいにしてん、皇太子さんばうちの狭か畑に連れて行ってよかったとやろか」
「信が言い出したことやけん。気にせんでよかよ」
信が畑を見てみたいというから、お父さんは信、祥さん、延くんの三人を連れて出て行っちゃった。たぶん、今頃は畑仕事を手伝っているんじゃないかな。
「延、大人しくしているかな……」
包丁で野菜を切りながら春鈴ちゃんが呟く。
うちの畑のあたりはひらけているから、走り回っているかも……
「ま、まあ、信がいるから大丈夫だよ。こっちはこっちの仕事をやろう」
私と春鈴ちゃんはお母さんの指示に従いながら、料理を作りあげていく。
「さてと、こいはあと煮込むだけたい。腹ば
お母さんの料理はほんと手際がいいよ。まだまだ勉強が必要だな。
「じゃあな、姉ちゃん」
夕食が終わり、信たちは家の外に出て行こうとしている。
「ごめんね、私たちだけ中で」
「平気だって、なあ、祥」
「そうよ、外と言ってもすぐそこだから、何かあったらすぐに駆け付けるわ」
「だな、お休みー」
「お休みなさい」
二人を見送り、中に入ろうとして春鈴ちゃんを見ると何か考え込んでいるみたい。
「どうしたの?」
「お姉ちゃん、ここがどんな場所か知っている?」
「うん、龍脈の上だね」
帰ってきてびっくり、家の真下を龍脈が通っていたんだ。
わかったのは私も巫女の力を使えるようになって、少しだけど龍脈を感じることができるようになったからだね。
「それがどうしたの?」
もしかして、龍脈の上に住んだらいけなかったのかな……
「来た時と流れが変わっているみたい」
えっ! 私にはそこまで感じることができないんだけど、春鈴ちゃんがいうのならそうなのだろう。
西新のお妃さまが動き出したのかもしれない。
「何が起こるかわかる?」
春鈴ちゃんは首を横に振る。
延くんはまだ龍脈の動きは分からないって言っていたし……
「明日みんなに話して王都に帰ろう」
おばばさんもきっと私たちを待っているはずだ。
「
春鈴ちゃんたちを寝かしつけた後、お父さんたちと話をすることにした。
「ああ、王妃様からの手紙にも王都で暮らせって書いとったばってん、おいたちはここを出で行こうとは思わんばい」
「父ちゃんの言う通り、うったちはここがよか。生活の面倒ばみてくるっらしかとけど、あっちには知っとるもんの誰もおらん。行ったっちゃ寂しかばっかいたい」
「でん……」
「そがん顔せんちゃ、おいたちのどっちかが体の動かんごとなったらお願いすっけん。そいまでは好きにさせてくれんね」
そうだよね。お父さんたちにはお父さんたちの人生があるもんね。
「二人とも、体に気を付けてね」
「おいたちのことは気にせんでよか、二人で仲良うやっとくけん。そいよりも、そっちの心配ばせんね。明日も早う行くとやろ。早う、休まんね」
「うん、じゃあ、そうする。おやすみ。……あれ?」
立ち上がろうとした時、何か違和感を感じた。
「お姉ちゃん!」
春鈴ちゃんと延くんが起きてきた。
「春鈴ちゃん、何があったかわかる?」
「わからないけど、嫌な気が急にしてきて……」
信と祥さんには明日伝えようと思ったけど、早い方がいいかも。
「祥さんに伝えてくるから、二人は待ってて」
家の直ぐそばにある木に向かう。
「……、……、信、……信! しっかりして!」
祥さんの声だ。様子がおかしい。
「う……うぅ……」
うめき声?
この声は!?
「祥さん!」
祥さんは隣で寝ている信を覗き込んでいるみたい。
「り、玲玲ちゃん、大変。信が急に苦しみだしたのよ!」
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