第4話 やっぱりふわふわだー
「
「あら、祥じゃない。いらっしゃい。ちょっと聞いて、この前教えてくれたお茶、彼も喜んでくれたわよ」
離れから連れ出された私は、祥さんに連れられて王宮の侍女の控室まできている。
「そうよ、あのお茶で落ちない男はいないわ。ということは、うまくいったみたいね」
蓮花さんは王妃様に仕える侍女で、離れの客人、つまり私たちに日用品などを届ける係をしているみたい。祥さんとは仲がいいらしく、普段から暇を見つけてはおしゃべりしているんだって。
「ええ、祥のおかげでね。今なら何だって言うことを聞いてあげられそうよ」
「あら、いいときに来たのかしら。実はこの
「へぇー、玲玲ちゃんって言うんだ。祥が女の子を連れて来るからどうしたのかと思ったら、王妃様のお客様なのね。ということは……わかった、服はこっちで用意してあげる。でも、着の身着のままということは、とりあえずのがいるわね……玲玲ちゃんついて来て」
私は祥さんと別れ、蓮花さんに手を引かれ控室の中まで入って行く。
「それじゃ、寸法を測るわね。そのままジッとしてて」
蓮花さんは私をまっすぐ立たせ、後ろに回った。
「きゃっ!」
「動かないで……」
急に抱き着いてくるから驚いちゃった。
「ふむふむ……あら、思ったより……着やせしているのかしら」
あ、あの、そこは……
「小さくないでしょうか……」
「気になる? 大丈夫よ。私は王宮にいる侍女全員のを知っているけど、玲玲ちゃんは平均よりもちょっと上よ」
全員のを知っているんだ。もしかして、こんなふうに全員に抱き着いて調べたのかな。
「お父さんが大きい方がいいって……」
「ああ、そういうことをいう男もいるけど、大きい子は大きい子で苦労しているのよ。大きさは母乳の出にあまり関係ないみたいだし、あんなのは
そ、そうなんだ。
「玲玲ちゃんのは形がいいんだから、自信を持ちなさい。ところで彼氏はいるの?」
「いえ、いません」
「彼氏がいたらそんな心配は無くなるのにって、……玲玲ちゃんは、王妃様から呼ばれたということは巫女様なんでしょう?」
「自分ではわからないんですが、そうらしいです」
「となると、彼氏は作れないわね。それで巫女様って何をするの?」
「王妃さまから国を守ってくれって言われたんですが、何をしたらいいのか……」
「そうねえ……あまり気負わずに、自分がやれることをやったらいいわよ。背伸びしたって、届かないものは届かないわ。さてと、玲玲ちゃんに合うのは……えっとー、この辺りのは使ってないから……これとこれがいいかな」
私は蓮花さんからいくつかの下着と普段着を渡された。
「とりあえずはこれで足りると思うけど、他の物は今度街で見繕ってくるね」
「あ、あの、私、お金をあまり持ってない……です」
「いいのいいの、巫女様に関することは王妃様が出すことになっているから」
それは助かるけど、私、それに見合うことをできそうにないよ……
「あ、そんな顔しないで、だいたい国のことを女の子一人に背負わせるのがおかしいんだから。気休め程度って思っていたらいいんだって」
「あ、ありがとうございます。えーと、蓮花さん?」
「そうか、挨拶がまだだったわね。改めまして玲玲ちゃん。私は蓮花、よろしくね。そこそこ長く侍女をやっているから、結構、融通利くんだ。何かあったら言ってね」
蓮花さんは私の手を握り、にこやかに微笑んでくれた。
「信、帰ったわよー」
「ただいま、帰りました」
王宮での用事を済ませた私と祥さんは、離れの食堂まで戻ってきた。
「いないわね。まだ、玲玲ちゃんの部屋にいるのかしら」
奥の廊下を進み、つい先ほど私の部屋となった場所に向かう。
「信、いるの?」
「あ、お帰り」
信君は外に干していた布団を寝台に置いているところだった。
「あ、ありがとう」
私は慌てて王宮から貰って来た荷物を降ろし信君を手伝おうとすると、片手で制される。
「いいって、もう終わるから。それで、どうだったんだ」
「玲玲ちゃんの服も貰えたし、食材もあとから届くわ」
「よかったじゃん」
「玲玲ちゃん、布団も間に合ってよかったわね。信、ご苦労様。あら、あなた、部屋の掃除もしてくれたの?」
確かに積んでいたホコリもキレイになっているようだ。
「え? だって祥が後は頼むって言うからてっきり……」
「信君、ありがとう、ほんと助かったよ」
今から部屋の掃除をしていたら、夕食の準備の時間までかかっていただろう。
「ふん、メシ作ってくれるっていうからな」
信君って口は悪いけど、強がっているだけなのかも。
「おいらはもういいよな。それじゃ、少し寝るから」
信君は自分の部屋へと向かって行った。
「ふふ、照れちゃって、玲玲ちゃんも少し休んだら、疲れたでしょう」
「でも、今寝ちゃうと夕食が作れなくなりそうで……」
今日はいろいろあったから、今寝ちゃうと朝までぐっすりな気がするんだよね。
「食材が届いたら起こしてあげるわよ。それとも一度寝たら起きられない方なの?」
「いえ、起こしてもらったら大丈夫です。祥さんは休まないんですか?」
「私は読みたい本があるから、それを読んでおくわ。安心して休んで」
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて休ませていただきますね」
「ふふ、またね」
祥さんが出て行って、部屋には私一人になった。
寝台の上には信君が干してくれた布団が畳んで置いてあり、顔をうずめるとお日様の香りがしてくる。
「やっぱりふわふわだー」
あの時は布団だと思っていたものはあれだったんだよね。驚いちゃった。
うーん、本物のお布団は気持ちいい。眠くなってきたかも……
「玲玲ちゃん、玲玲ちゃん……」
遠くから誰か呼んでいる気がする。
「玲玲ちゃん、起きて……。仕方がない、触るわよ。玲玲ちゃん、起きて!」
「うーん……あれ、祥さんなんで?」
「ごめんね。外から声をかけたんだけど、返事が無いから入っちゃった。食材が届いたわ」
そうだ、祥さんに食材が届いたら起こしてもらうように頼んでいたんだった。
「私、どれくらい寝てました?」
「そうね、
「はい、任せてください!」
祥さんと一緒に厨房に行くと、様々な野菜と肉それに調理道具が届いていた。
「野菜は日持ちするから大目に、肉はその都度持ってくるから使い切っていいって言っていたわよ」
おおー、油も調味料も揃っているから、何でも作れそうだ。
「そうだ、私が作れるのって田舎料理だけなんですけど、大丈夫ですか?」
「心配しないで、私も田舎の出身なの。王都の料理よりも口に合うはずよ」
よかった。それじゃ腕を振るいましょうかね。
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