第43話 信と玲玲はここに残ってくれ
翌日王妃さまより呼ばれた私たちは、早速王宮に向かった。
「
星さんが私たちを代表して王妃さまに言葉をおかけする。
「そなたたちも大儀であった。皆のおかげでこの国は救われた。礼を言うぞ」
謁見の間に通された私たち六人を前に、王妃さまが
「ぶっ! 姉ちゃんその話し方、ちゃんちゃらおかしいんだけど」
し、信、王妃さまに向かって……
「あーあ、せっかく威厳を出すために頑張ってるのに、信のせいで台無しだよ」
お、王妃様!?
「そうそう、ここには姉ちゃんの足を引っ張るものはいないんだから、普通にしてればいいってえの」
謁見の間には、私たちの他に王妃さまとお付きの侍女の人が一人いるだけ。
「ふぅ、そうさせてもらおうかね。急に商家の嫁から王妃になったもんだから、やっかみが激しいんだよ。それだけならまだしも、王妃たるものはなんたらかんたらって毎日のように小言をいう奴までいてやってられないよ」
お、王妃さまも苦労してんだ。
「ほんと、あたいの妹のせいであんたたちには迷惑をかけたね。改めて礼を言うよ。ありがとう」
王妃さまの落差がすごくて、信以外のみんながポカーンと口を開けている。
「姉ちゃん、それでもう大丈夫なのか?」
「今、
えっと、濮蘭さんはおばばさんだったよね。あいつというのは妹さんの事だろうから、西新のお妃様か。確か名前は
「こっちから反撃したらいけないのか?」
「露が手を出したという証拠があったらいいんだけど、あんたたちも見てないんだろう?」
私たちは首を横に振る。
あ、そういえば……
「お、王妃さま。朱雀廟では術をかけた人が亡くなってました。その人の気持ちに触れたのですが、その中には西新の国に対しての深い恨みがありました。それではダメですか?」
「玲玲がそやつを癒したから呪詛が解けたのだろう。よくやってくれた。ただ、それだけでは難しいねえ」
そうか、私が感じただけじゃ無理か。
「なあ姉ちゃん、次もまたあんな奴らが来たら大変だから、西新から人が来るのは止められねえのか?」
「それも難しいね。相手がこちらに攻め込もうとしているとはいえ、表向きは西新との関係は良好なんだ。それに、あたいと露は姉妹だろう。これまで表立ってケンカしたこともないから、誰も仲が悪いだなんて思わないんだよ」
「王妃様。ということは、相手がボロを出すまで手が出せないってことですか?」
星さんのいう通り、王妃さまの話だとこちらから何もすることができないように思う。
「まあ、そうなるかね。こんな状態でこちらから手を出したら、これ幸いにって難癖付けてくるに決まってる。それも周りに盛大な迷惑をかけてさ。だから、あんたたちも申し訳ないけど、しばらく付き合ってもらえるかい」
しばらく付き合うってことは……
「お、王妃様。俺、もうすぐ役人になるんですけど」
そうだ、星さんは秋から働くって言っていた。
「お前さん、もしかして科挙に?」
ハイと星さんが答える。
「そうか……なら、巫女付きの文官として仕えな」
「えっ!?」
そ、そんなのあるの?
「あ、あの、王妃様。私は?」
「祥か、あんたは腕が立ってたから……よし、巫女付きの武官だ」
「武官、私が……。あ、王妃様、服はやっぱり兵士の物を着ないとダメですよね」
「巫女の守りが疎かにならないのなら、好きにしたらいいさ」
「や、やったわ。甘鏡さまに頼んで動きやすい服を作ってもらわなきゃ」
ふふ、よかったですね祥さん。
「あとは、そこの子供たちか……」
王妃さまに隠し事はできないよね。
「春鈴ちゃん、延くん」
「うん」
「わかった」
春鈴ちゃんと延くんは変化を解き、元の姿に戻る。
「こ、これは……なんとも可愛らしい姿に」
王妃さまの顔がデレっと……動物が好きなのかな。それならこのまま話しても大丈夫かも。
「王妃さま、春鈴ちゃんは妖狐で延くんは
「妖狐に大神……大丈夫なのかい?」
「春鈴ちゃんのお母さんは、おばばさんと一緒にこの国を作った黄蘇さまです」
「へぇ、あの伝説のお方の。それで、大神の方は?」
「ぼ、僕はお姉ちゃんの言うことなら何でも聞くから」
延くんは人型に戻って答えた。
「あはは、玲玲次第か。まあ、いいだろう。お前さんたち、すまないがみんな中庭の離れに住んでもらえるかい。部屋はたくさんあるから大丈夫だろう」
「おいらは?」
「あたいが言うのもなんだけど、あんたはそろそろ勉強しないとまずいんじゃないか。話し方とか」
「ぐっ……」
「住むのは離れでいいから、みんなと仲良くやりな」
ふふ、信とも一緒にいられそうだ。よかった。
「さてと、用事はこれですんだが、信と玲玲はここに残ってくれ」
私と信だけ……あのことかな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます