姫さんの才能

「なるほどのぅ」

爺さんと姫さんに詳しく事情を聞いた。


「はい、どうやら来るのが遅かったようです」


「じゃから山の民の数が少なかったんじゃな」

姫さんがこの里に来る前に、山の民が敵国が占拠している国に攻めこんでしまったらしい。そして圧倒的に敗北した。

今ここに残っているのは何とか逃げのびた者達のみ、もう戦う意欲はない。


「ゴンベエ様、どうすればいいのでしょうか?」


「特にないのぅ」

聞いてくる姫さんにワシは即答した。


「そんな、、、、」

姫さんは絶望した顔をしている。


「ワシが何とかしてやってもよいが、お主はこれから山の民と交流していくつもりなのじゃろう?お主が考え、行動してあの者達をもう一度戦うという心構えにせよ。そうでなければまた国を失う事になるぞ」


「、、、、ですがわたくしには力はありません。あるのはゴンベエ様に貰った仮初の力だけ」

ワシがあげた小刀を出して姫さんが言う。


「今はそうじゃな、今は」


「どういう事でしょうか?」

姫さんは首を傾げた。


「お主も修行開始という事じゃな」


「はい?」

目をパチパチして姫さんは答えた。

次の日から姫さんの修行始まり、今日で一週間経った。


「はっ!」


「腕だけで振るうな!全身を使え!」

剣を振るう姫さんの剣を受けるフィーヌが叫ぶ。


「はい!」


「ふむ、才能がまるでないのう」


「ゴンベエ様今それを言わないでください!

気が散ります」

ワシが姫さんを見ながら感想を言うと、睨みつけて答えてきた。


「お前も集中を乱すな!そんなんじゃ国を失うぞ」


「いやです!」

フィーヌが喝を入れると、また集中して剣を振り出した。

「そうだ!今の一撃のように動け!」


「はい!」

気を散らすのも悪いと思ったので、離れた場所に座ると、リリス達がこちらに来た。

リリスは隣に抱き付くように座り、アルミはワシの太ももに頭を乗せ目を閉じた。


「レベッカはどう?」

心配そうな声でリリスが聞いてくる。


「あまり進展はないのぅ、随分と深くまで潜っているようじゃ」


「そう、早く会いたいわ」


「あんなにいがみ合ってたリリスがそんな事言うとは不思議じゃのぅ」

初めて会った時レベッカとリリスは何度も口喧嘩していた、レベッカが眠るまでリリスはレベッカと意気投合していた。


「あれから随分一緒にいるのよ?もう家族同然よ、はぁ、何もしてあげられないのが歯痒いわ」

リリスはワシに全体重を預けた。


「そうじゃな、じゃがこれは仕方ない事なんじゃよ」


「会いに行くのもダメなのは辛いわ」

いつ暴れだすか分からない場所に、リリス達を連れて行くわけにはいかない、目覚めたレベッカはやばいから。


「リリスお母さん元気出してください!これあげますから」

クレアとローニャ、カリン、メリサとアリサもこちらに来た。


「ありがとうローニャ、少し元気出たわ」

ローニャは草で作った冠をリリスの頭に被せた。


「リリスお母さん!僕からはこれ!」


「美味しいわ、カリンはすごい腕前になったわね」

ローニャはリリスの大好物であるワシが教えた、この世界で鰻に似ている奴で作ったひつまぶしを作ったらしい。

正直ワシも食べたい、ちなみに米はワシが渡した。


「おかーこれ」

「ははーこれ」


「メリサにアリサありがとう、これで栞でも作るわ」

メリサは赤い花、アリサは黒い花をリリスに渡した。


「あの、サクラからもこれあげます!」


「さくらもお母さんって呼んでくれたらもっと嬉しいのに、でもありがとう」

サクラはファルシーから貰った手作り装飾品一式で作った、首飾りを渡し、リリスはそれを嬉しそうに付けた。


「えーと、記憶を全部取り戻してから言うって決めてます」


「そうね、ゴンベエ早くサクラの記憶取り戻してあげてよ」


「分かっておる、桜は中々難しいんじゃよ」


「ゴンベエ様!サクラはどんな辛い記憶があろうとも、きっと乗り越えてみせます!」


「そうじゃな、桜は強い子じゃからな」

記憶の方は問題ないが、別な方が大変。


「スケさん、アンジェリカが倒れたぞ」

フィーヌが剣を持ちながらこちらに来た。


「今日は結構もったのぅ」

最初はすぐに根を上げたが、今は気絶するまで頑張っている。


「なぁスケさん、本当に才能が無いのか?たまにヒヤッとする攻撃を受けるんだが?」


「かっかっかっかっかっ!そうかそうか、こんなにも早く開花したか。フィーヌ、姫さんは剣の才能ははっきり言ってない、むしろ弓の方が才能があるじゃろう」


「じゃあなんで弓をやらせないんだ?」


「決まっておる、剣を扱えんといかんのじゃよ、姫さんの本当の才能を使うためにのぅ」

フィーヌが聞いてきたので答える。


「そうか、スケさんがそう言うならそうなんだな、その代わり今日は相手してもらうぞ」

フィーヌは本当に積極的になった、もう誰が一緒にいても関係なくワシを求めてくる。


「今日は僕も参加しようかな」

太ももに頭を預けている目を開けたアルミが言う。


「たまには全員なんて面白いですね」


「クレアもすごい事言うようになったわね、あと全員じゃないわレベッカがいないもの」


「そうでしたねリリーごめんなさい」


「罰としてクレアはお預けね」


「リリー!」

すごい形相でクレアが言う。


「冗談よ、でもみんなのサポートよろしくね」


「それならいいですよ」


「あのー我が主」

ファルシーが右手で挙手をした。


「ファルシーはまだお預けじゃ、レベッカの許可がないからのぅ」


「はい」

絶望したように四つん這いした。

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