独占権

「では皆様自己紹介をさせてもらいます。

わたくしの名前はファルシー、

今日より権兵衛様の家臣です。

奥方様達にも仕えますのでなんなりとご命令ください」


「そうか、俺のことはフィーと呼べ。

あとスケさんの女ではない」


「私の名前はアルサです。

私もゴンベエ様の奥様ではありません」


「私はクレアです、奥様ではなく妾を目指しております」


「それは失礼しました!

ではフィー様とアルサ様、クレア様と呼ばせていただきます。

御三方も我が主のお仲間ですのでどうぞご命令下さい。


ところで我が主、この四名のお子様は我が主の子供なのですか?」


「実子ではないが皆で育てることになったのぅ。それとあと一人おるぞ」

桜はリハビリの為、宿の女将さんに食堂で働かせてもらっている。


「そうなのですね、あとでご挨拶に行きたいと思います」


「そういえばファルは何処に泊まるんだ?確か今日も満席だったはずだよ?」


「アルミール奥様ご安心下さい、外で見張りをしようと思っておりますので、宿は必要ありません」


「もしかして徹夜で見張るの?」


「はいレベッカ奥様」


「それは良くないわね、レベッカ今日は特別にゴンベエの部屋に泊まっていいわ。

ファルはレベッカの部屋に泊まりなさい」

リリスがレベッカとファルシーに言った。


「それはレベッカ奥様にご迷惑をかけるのではないでしょうか?」


「それはないわよ、レベッカはアレをしたくて毎日のように通っているから」


「アレとは?アレですか?」

ファルシーは顔を赤らめてレベッカを見て聞いた。


「そ、そうよ!仕方ないじゃない、知っちゃったんだもの」


「そそそそんなにいいものなんですか?」

ファルシーがさらに赤らめてレベッカに聞いた


「えーと、そうよ!」

少し悩んだレベッカは吹っ切るように答えた。

そしてファルシーがワシをチラチラと見てきた。


「ねぇ、子供達がいるんだからそういう話は夜にしない?」


「そうねアルミールさん。

さっ貴女達も自己紹介しなさい」


「分かりました、私の名前はローニャです。

ご主人様とリリスお母さんの奴隷でクレア姉様と同じく妾を目指しております」


「僕の名前はカリン、僕もご主人様とリリスお母さんの奴隷で特に何も目指してない」


「メリサ」「アリサ」

二人は同時に自分の名前を言った。


「了解いたしました、ローニャ様にカリン様にメリサ様とアリサ様ですね。奴隷と言われましたが立場は御四方の方が上と考えていますので、ご自由にご命令下さい」


「えーとファルシー様それは違いますよ、私達四人は奴隷なのですから、一番下のように扱って下さい」

ローニャ困った顔をして言う。


「それはできません、御四方は我が主の所有物であり、そして庇護下にあると考えられます。そんな御四方を無碍に扱うことは決してできません。どうかご了承下さい」


「ローニャ、いずれ貴女はゴンベエの妾になるんでしょ?誰かに仕えられる事も今のうちに経験しときなさい。

ゴンベエはいずれ沢山の者の頂点に立つわ」


「分かりましたリリスお母さん」

ローニャは最近リリスの言うことを素直に聞くようになった。

まるで本当の親子のようだ。


「リリス、ワシはそんな面倒な立場になりたくないんじゃが?」


「無理よ、ファルがその証拠だわ。

迷宮で最強と呼ばれるパーティーで団長と呼ばれるほどのカリスマ性を持つのよ?

ゴンベエではなく彼女に仕える人達は必ず現れるわ」


「はい!必ずや銀翼の騎士団のような騎士団作り、我が主をお守りします!」


「はぁ、まあなるようになるじゃろ」


「ゴンベエ様夕食のお時間です!」

勢いよく開いた扉から桜の声が聞こえた。


「どれ食堂にいくかのぅ」

ワシらは一階に下りた。


食堂では桜が料理を運んでくれていたので、すぐに食べられた、桜の仕事はワシらの夕食を運ぶまでなので一緒に席に座る。


ファルシーは丁寧に桜に挨拶し、桜はローニャと同じように困惑していた。

だがファルシーの語る騎士の物語を聞くうちにどんどん仲良くなっていき、

最終的に桜ちゃんとファルシー姉ちゃんと呼ぶ事でお互い納得したようだ。

夕食や晩酌が終わり、レベッカと部屋に入り一緒にベッドで寝転ぶ。



「はぁ、はぁ、ねぇゴンベエ」


「なんじゃ?」


「もうそろそろ他の人もいいよ」


「よいのか?」


「うん。もう充分にゴンベエを独占したから、リリスやアルミールさん、クレアも誤魔化してはいるけど少しだけ私に対して冷たい態度とってる気がするの」


「気のせいじゃと思うがのぅ」


「そうかも、でも私がそう感じるって事はきっと後ろめたい気持ちがあるんだと思うの、

だから今日でゴンベエの独占権を放棄する」


「レベッカがそう決めたのなら、ワシは何も言わんよ」


「ありがとう、じゃあゴンベエ」


「レベッカおいで」

最初の日と同じく夜が明けるまで起きていた。


次の日レベッカは皆にその事を話すと、頭を撫でられたり抱きしめられていた。


リリスには悪いがリリスとは明日一緒に寝ることを伝えた。


「ふーん、まあいいわこれだけ待ったんですもの一日くらい平気よ、でも明日は必ずよ?」


「分かっておる」

リリスは少し不満を顔にうかべながらワシの部屋を出て行った。


「どれ、エリナーデ」


【今度も随分と待たされたな】


「すまんのぅ、ワシのおなごがワシを独占したかったのじゃ」


【そうか、まあそんな事はどうでもいい、早く寝るぞ】


「いや今日は添い寝ではないぞ」


【まさか妾を抱く気か!】

目を見開きエリナーデは驚いた。


「そうじゃ」


【そ、それは困る!妾を抱けばそなたが死んでしまう!」

泣きそうな顔をしてエリナーデが伝えてくる。


「かっかっかっかっ!お主がそのような顔をするとはのぅ」


【仕方ないだろう!もうそなたの温もりを覚えてしまったんだ!妾は今日は帰るぞ】


「させんよ、妖術『幻界』」


「ここは?」


「ここはワシの世界じゃよ」


「世界だと!そなたはただの異世界人ではないのか?それに妾が普通に喋っているのは何故だ?」

ワシの世界に来たエリナーデが驚きながら言った。


「それはワシの世界じゃからのぅ、ワシの意のままじゃ。おなごの声は頭ではなく耳でききたいからのぅ」

エリナーデに近づきながら答える。


「く、来るな!そなたを失いたくない!」

エリナーデは後ろに下がると段差に足をとられ尻餅をついた。


「安心せい、ワシは死なんよ」

優しくエリナーデを覆い被さった。

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