ファルシー

「ふーんゴンベエを殺そうとする奴らと離れるのは正解よ、ファルシーさん正解よ」


「レベッカの言う通りね、ファルシーさんの判断は間違えてないわ」


「僕もそう思うよ。ファルシー殿がもしその案に乗っていたらこの世にいないしね」


「ありがとうございます。あとわたくしの事はファルとお呼びください。奥様達もわたくしの我が主の奥様なのですから」

ファルシー殿は頭を下げてお願いしてくる。


「じゃあファル、銀翼の騎士団の話は分かったからなんで権兵衛の家臣なんだ?」


「お答えします、アルミール奥様は愚者騎士テリアーネをご存知ですか?」


「もちろん知っているよ、確か300年前暴君と呼ばれた愚王に最後まで忠義を尽くした女性騎士だよね?」


「そうです、わたくしは彼女に憧れているのです」


「憧れてるの!確かあの騎士は国民に重税や強制的に兵士にして戦争しまくっていたアランドロ国王を崇拝した人だよ!

何で憧れているのよ?」

レベッカが不思議そうに聞いている。


「この国ではそう言われているのです。ですが事実は違います、愚王と呼ばれたのは最悪を避ける事だったです」


「最悪?」


「そうですレベッカ奥様、あの時愚王や暴君として振る舞わらないとガゼール帝国に目をつけられ戦争を仕掛けられていたようです」


「ガゼール帝国?確か300年前にこの大陸の覇権を持っていた国よね?」


「そうです。暴君と呼ばれたアルザビーネ国王は本当は賢王と呼ばれ、国をどんどんと発展させましたが、それを恐れたガゼール帝国の帝王パラディスが危険視したとわたくしは教わりました。


そしてアルザビーネ国王は国民を守るため、最低限の犠牲でどうにかできるかを考え愚王を演じる事を選びました。

そして家臣達は一人を残し全て愚王、

アルザビーネ国王の敵に回しました」


「という事は愚者騎士じゃなくて、かろうじて噂になってる忠騎士テリアーネは愚王を演じた国王を信じ続けたって事?」


「はいレベッカ奥様」


「疑問に思うんだけど、ファルだっけ?

何でファルは知っているんだ?」


「そ、それはわたくしの祖先が忠騎士テリアーネ様だからです」


「えぇー!やばいわよゴンベエ!テリアーネの血筋が生きているなんて知られたら大変よ!」

焦ったようにリリスは言う。


「安心せい、それは正しく正しくない。誰もこの者を理解できんよ」


「どうゆう事かしら?」


「そんな事より続きを知りたいんだけど」


「そうね、ファル続きを話しなさい」


「はっ!わたくしの父に何度も何度もテリアーネ様の話を聞き、憧れました。

ですが騎士というのは貴族以外をなれませんので諦めてました。

両親が病で死に、その時やはり誰かに仕え騎士として生きたいと思いました。

ですが私がいたラーバルト帝国はそのような事はできない、その時実力さえあればなんとかなる所があると聞いてこの迷宮都市に来ました」

彼女がそう言うと異変が起こった。


「うぅぅん、痛いよゴンベエ」

頭を抱えてレベッカが苦痛で顔を歪めている。


「レベッカすまんの、うっかりしておった。

妖術『遅延』これで大丈夫じゃろ?」


「ありがとうゴンベエ、ごめん少し、寝る」

レベッカは気を失うようにベッドに倒れるのを、リリスが抱きしめてゆっくり寝かした。


「それで?」

リリスがレベッカの髪の毛を撫でながら言う。


「レベッカ奥様は大丈夫なのですか?」


「気にしなくていいわ、ゴンベエがレベッカを助けられないはずないもの。

レベッカの代わりに聞いてあげるから早く話しなさい」


「はっ!わたくしがこの迷宮都市に来て始めたのは下賤な者を排除することでした。

それを続ければ我が主に相応しいお方に会えると確信していたのです、そして見つけた我が主にお仕えする時に功績がないと失礼に値しますから」


「何故それが分かるんだ?」


「アルミール奥様、我が母は占い師でした。

そして死んだ後に道標として手紙残してくれたのです」

目を閉じ左目から涙を一筋流した。


「じゃあ何でゴンベエが主だと思ったのよ?」


「リリス奥様それは簡単です。

わたくしは産まれて初めて戦いが楽しいと思いました」


「それも道標?」


「はい、わたくしが楽しいと思う戦いをした方が我が主だと書いてありました。


いえ違いますね。あの時感じたのです、楽しいと思う以外に他の感情を。


この方の剣として生きる人生の事を。


はぁ、はぁ、はぁ、我が主の命令で剣を振るう、はぁ、はぁ、なんて素晴らしい。


はぁ、はぁ、だめです我が主!我が主はわたくしが守ります!」

これはアルミール殿が暴走している時と似ている。


「なるほどね。ファルの気持ちは分かるわ、わたしもゴンベエに命令されてあんな事やこんな事されたいわ」


「そうですよね!流石は我が主の正室様です!」


「あらやっぱりわたしが正室なのね」


「だめよ!正室は私よ!

それよりファルシーさん話が噛み合ってないわよ!」

急に起きたレベッカがファルシー殿の所に行き耳打ちすると、ボンっと聞こえるように真っ赤にファルシー殿は染まった。


「えーと、そのー、あー。

我が主が望むならわたくしはご奉仕します」


「あら、レベッカより話が分かりそうね。

仲良くしましょう」


「ありがとうございます!リリス奥様!」


「ふーんそういうタイプ子なのね嫌いじゃないわ、本当に仲良くなれそうね」


「僕もそう思うよ、確固たる信念を持った人は好きだよ!

権兵衛この子を家臣にしてあげてよ!」


「リリス奥様、アルミール奥様ありがとうございます。

あとレベッカ奥様頭を撫でないで下さい」


「いやー少し前の私を見てるみたいで可愛いんだよね、ごめん」


「あら、レベッカも言うようになったわね」

レベッカがファルシー殿をワシのベッドの方に連れて行き、楽しく話している。


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