家臣

やっとお世話になった人や、騎士団を援助してくれる人達に挨拶が終わりました。

何人もの人達から引き留められたがわたくし決断は変わる事はなく、そして今日我が主のもとに行けます。


我が主の泊まっていると思われる宿の前に来ると、この前我が主と一緒にいた赤い髪の女性が宿に入ろうとしていました。


「すみません貴女は確か我が主と一緒にいたお方ですよね?

わたくしはファルシーと申します、どうか我が主と会わせていただけませんか?」


「えーと貴女は銀翼の騎士団の団長だった人よね?我が主って誰の事?」


「我が主は権兵衛様です。お願いです、会わせてください!」

わたくしは頭を深く下げてお願いします。


「別に会わせるのはいいけど、報復じゃないよね?報復なら会わせないわ」

赤い髪の女性から凄まじい圧を感じ、初めて会った時とは大違いです。

食堂で会った我が主の仲間同等、いやそれ以上に感じました。


「報復ではございません、ただお願いをする為に来たのです」


「ふーん、まあいいわ。着いてきて」


「ありがとうございます奥方様!」

赤い髪の女性がその言葉に足を止めました。


「えーとファルシーさんだっけ?私はまだゴンベエの奥方じゃないよ?

今はこ、恋人なだけだから」

顔を真っ赤にさせて否定してきましたが。


「まだとおっしゃるならいずれは奥方様になるということですね、なら奥方様と呼ばせていただきます」

いずれこのお方にも仕えるのだから無礼な呼び方はできません。


「うーんじゃあそれでいいわ、とりあえずゴンベエのところに行くわよ」


「はっ!」

わたくしの返事に少し驚いてから奥方様は歩き出しました。


そして宿の二階に行き一つの扉の前で止まりました。


「ゴンベエ、ゴンベエにお客さんが来たよ」

トントンと扉を叩いた後に奥方様が言うと、扉が開き我が主の姿がありました、感動で泣きそうでした。


「やはり来おったか」


「はっ!大変遅くなりました。

権兵衛様が家臣、ファルシーただいま我が主のもとに参りました」

わたくしは跪きこうべをたれ宣言します。


「はぁ、部屋を変えるかのぅ。

ローニャ、カリン、メリサにアリサ話が終わったらまた来るからそれまで自主練じゃ」


「かしこまりました」「はーい」

「「うん」」

一番年上水色の少女がお辞儀をしながら答え、次に年上の子が手をあげて答えます。

そして瓜二つの幼い子が同時に答えました。


「クレア、ローニャ達をよろしくね、わたし少し気になるから行ってくる」


「分かりました、リリーゴンベエ様をよろしくお願いしますね」


「任せて、変なやつだったら叩き出すわ」


「僕も行くよ、いきなり来て権兵衛の家臣って意味が分からないからね」


「俺は興味ないから行かない」


「私も遠慮します、金になる話じゃなさそうなんで。メリサちゃんとアリサちゃんを見てた方が和みますし」

紫色の髪をした娼婦のような格好をした女性と、短く切られた茶色の髪のおそらく女性は一緒に来るらしいです。


「あっ当然私も行くわよ」

奥方様も付いてくるようだ、多分だがここにいる少女達以外は我が主の奥方様になるのでしょう。

失礼のないようにしなくてはいけません。


「はい、奥方様も来てください」


「え?レベッカいつゴンベエの奥さんになったの?ずるいわ!」


「リリス誤解よ、ファルシーさんがそう呼ぶから許可しただけよ!だからアルミールさんその目はやめてよ!」


「よかったよ、アレは譲ったけど最初の妻は僕だからね」


「あらそれはどうかしら」

茶色の髪の奥方様はアルミール様で、紫色の髪の奥方様はリリス様ですね。


「アルミール奥様とリリス奥様ですね、そういえば奥方様のお名前はレベッカ様でしたので、これからレベッカ奥様と呼んでもよろしいでしょうか?皆様も」


「別に構わないわ」


「あらわたしもついに人妻ね」


「僕が最初の妻だから気をつけるように」


「アルミールさんとは話し合いが必要ね」


「そうだね、リリス殿とは話す必要があるね」

二人の間には何やら火花のようなものが見えた気がします。


「二人とも今はこの者の話を聞かんといかんじゃろ」


「そうね、じゃあ夜にみんなわたしの部屋に集合よ」


「そうだな、こういうのは一気に決めた方がいいからね。レベッカも来るんだよ」


「はーい!」


「あら今日は随分素直ね」


「うんもう諦めたの、リリスにはいくら誤魔化してもバレるから!」

腰に手を当ててレベッカ奥様が言いました、なるほど力関係はリリス奥様が上なのですね。


「じゃあゴンベエの部屋でいいわよね?

移動するわよ」

リリス奥様が先頭を歩き、奥様達と我が主と歩き出しました。やはりリリス奥様が正妻なんだと思います。


部屋に入ると、とても質素なベッドと椅子とテーブルが置いてありました。


二つしかない椅子にそれぞれ我が主とわたくしが座り、奥様達はベッドに腰をおろしました。

もちろん最初は遠慮していたのですが、わたくしがお客様という事で我が主の命で座ります。


「それで権兵衛の家臣てどういう事?」


「その前に銀翼の騎士団の話聞きたいんだけど、ファルシーさん解散ってゴンベエのせい?」

アルミール奥様が家臣ついて聞いてきますがレベッカ奥様が遮り、わたくしの元騎士団の事を聞いてきました。


「ではまず騎士団の解散についてですがわたくしのせいです」

わたくしは何故解散したのかを話し出しました。





「団長!今すぐあの者を殺すべきです!」


「パトス!お前の言い分は理解したが、私はそうは思えない!」

気がつくと銀翼の騎士団の拠点にいました、あの時我が主と戦った者達全員生きたまま。

話を聞くと我が主が送り届けてくれたようです。

そして副団長のパトス、その他隊長格と会議室で話し合いをしています。



副団長のパトスは我が主を殺せと言ってきます、理由はパトスのスキル『神の神託』が危険だと判断したとの事です。

あの時命令を無視して殺しにかかったのはそのせいのようです。


パトスの『神の神託』は神託と言っても言葉ではなく、危険や脅威が迫っていると発動するもので確実性はあまり高くはありませんが、それで救われた事もあるのでむやみに無視することはできません。


「俺もパトス副団長の意見に賛成だな、あいつは危険だ」


「私もそう思う、相打ちでもいいから殺すのが世界の為だ」

黒髪のランタンと茶髪のベレーナが発言してくる。


「ランタン、ベレーナ。

皆最近おかしいぞ!元々この騎士団はこの迷宮都市の秩序を守る為に私が作ったんだ!

何故世界など意味のわからない事を」


「お言葉ですが、私達は貴女様に光を見たのです、貴女様が君臨すれば世界をもっと平和にできると」

神父服を着た回復担当の神父が発言しました。


「ハイル神父。気持ちは分かるが私は世界など守るつもりはない!

私の真の目的は主を得て忠義を尽くすことだ!

その為に騎士団を名乗った!

迷宮都市を守るのはその時に実績を作る為だ!

パトスは知っているだろう!」


「団長、いくら探してもいなかったじゃないか、もう皆の主というのは団長なんだ。

そして皆はあの者を殺せと言っている、主としてそれを汲んでぐれないか?」


「分かった」

目を瞑り覚悟を決めます。


「分かってくれたか!では今すぐ作戦会議をしよう!」


「悪いが銀翼の騎士団は解散する、私はここを抜けあの者、権兵衛様に仕える」

皆目を見開き驚いた顔をしました、

そこから何度も言い合いをしましたが、わたくしと皆の思いは真逆でした。


そして銀翼の騎士団は解散し、パトス率いる[銀の守護騎士団]という名に変わりました。

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