「ゴンベエ」


「不安な顔をせんでも現実じゃ」

レベッカは一人でCランクダンジョンを制覇した。




レベッカはワシの渡した剣を横になるように胸の前に構える、右手は柄にあり、左手は人差し指と中指が鍔と刀身の間に置かれている。


「ふぅー」


「集中せい、そうすればお主の中に与えた力に気づくはずじゃ」


「そう言われてもあの時の事が頭に浮かんで集中できないのよ」


「それでも集中せい、何度も与えたのじゃ」


「分かったわよ」

目を閉じてレベッカは集中しだした、

レベッカの身体の中にはワシの力を注いである、魔力とは真逆の方向に動くそれはこの世界の住人には難しいらしい。


「ゴンベエ、なんかお腹が熱い」


「それがワシの力じゃ。それを身体を循環するように回すのじゃよ、そうすれば自ずと分かる」


「う、うん」


「うむ、やはりワシの力はレベッカと相性がよい、そのまま続けるがよい。

周りはワシが大人しくさせるからのぅ」


「ねぇゴンベエ、なんでダンジョンの中でやるの?一度その力を把握してからダンジョンでもよくない?」

ワシ達はレベッカと二人きりでCランクダンジョンにいる、周りにはたくさんの魔物がいるがワシが殲滅している。


「力とは実践の中において上達するのじゃよ、すぐに実践できんと意味がないじゃろ」


「そういうものなのね」


「レベッカはワシが守るから気にせずその力を把握せい」


「はーい」

ワシを信じているレベッカは目を閉じて集中しだした。


「レベッカは本当に素直じゃの、さて邪魔させんようにいい感じで討伐するかの」

すべて討伐してしまうとレベッカの初陣に支障がでるから。


しばらく集中していたレベッカの身体の周りに赤い気が現れる。


「ゴ、ゴンベエ!どうしようなんかすごい身体が熱い!」

顔を真っ赤にしたレベッカが言う。


「大丈夫じゃ、その熱い物を剣に受け渡せばよい」


「う、うん分かった」

レベッカの赤い気がワシのあげた赤黒い剣に注がれる。

剣の刀身の真ん中に橙色の丸い紋章が現れ、そこから刀身に複雑な紋様が現れる。


そして刀身から凄まじい熱気が放たれている。


「ご、ゴンベエなんか熱いの出てるんだけど!」

レベッカはすごく慌てている。


「その剣は烈火と呼ばれる剣じゃ、刀身は太陽の次に熱いんじゃ」


「そ、それってやばくない?私太陽なみの剣持ってるってことだよね?」

剣を投げてそこから逃げるレベッカが聞いてくる。


「安心せい、レベッカはその剣と適合しておるから火傷も怪我もせんよ」


「ほ、本当?」

ビビりながらそろりそろりと剣に近づいていく。


「ワシがレベッカにあげたんじゃ、大丈夫じゃよ。それより一度落ち着くがよい」

レベッカの右目が爬虫類の目のようになっていた。


「え、なんで?」


「気づいてないのかのぅ、左目を閉じたら分かるぞ」


「うん、、、何これ!なんか辺なオーラが見えるんだけど!」


「それは魔力じゃ」


「魔力?見えるなんて聞いた事ないんだけど!あっもしかして私は魔眼に目覚めたの?」

ウキウキしながらレベッカが言う。


魔眼。

この世界では結構持つものがいてクレアの鷹の目は魔眼の分類に入る。

しかし魔力や人の鑑定をする目はとても珍しい。


「魔眼ではないが特殊な目じゃな」


「ゴンベエはこの目が何か分かるの?」


「そりゃあのぅ、それより今はワシが与えた力を使いこなすのが重要じゃよ。

じゃから一回落ち着くんじゃ」


「ゴンベエが言うならそうなんだね。

すーはー、すーはー、はーふぅー。

どうゴンベエ?」

少し不安そうなレベッカが聞いてくる。


「大丈夫そうじゃの、目のことは忘れて今は少しづつワシの力になれるとことだけ考えなさい」


「うん!」


ワシの力を少しずつ理解したレベッカは、Cランクダンジョンの魔物を簡単に屠っていく。


ワシのあげた剣に少し触れただけで魔物は燃え姿を消していく、最初は勿体無いとレベッカがどうにかできないか考えて色々動いていたが、今は諦めて剣を振るっている。


「ゴ、ゴンベエ!どうしよう、このままだと私だけで最下層に着いちゃう」


「かっかっかっかっ!それでいいんじゃよ!」


「本当?ゴンベエがなんかしているわけじゃないんだよね?」


「しておらん、まあしたと言ったというか与えたと言った方が正しいのぅ」


「ゴンベエの変態!」


「それは否定できんのぅ、じゃが昨日もレベッカは」


「やめてよ!まだ恥ずかしいんだから!!」

レベッカの力が増し魔物を一掃していく。


「何であんな事しないと強くなれないのよ!他に方法なかったの!

もう、嫌じゃないからムカつくわ!」

熱気が増しレベッカが暴れている。


「もう八つ当たりよ!

あんたが最後の魔物ね!オーガキングなんてもう簡単に倒せるんだから!」

レベッカが言うように一刀両断されていた。





ダンジョンを制覇すると、自動的にダンジョン近くにあるゲートと呼ばれる場所に移動させられる。


「ゴンベエ!本当に制覇したよ!」


「そうじゃな、よくやったぞレベッカ」

頬を赤らめて喜ぶレベッカの頭を撫でて言う。


「ねぇー今日は一緒に寝ようね!」


「リリスの許可を得たらよいぞ」


「大丈夫!もう約束しているから!リリスだけだけど」


「なら大丈夫じゃろ、おなご達の中でもっとも手強いのはリリスじゃからのぅ」


「だよね!リリスに口で勝てる気がしないんだよね」


「リリスは経験豊富じゃからのぅ」


「むぅ、私だって大人なのに」


「ワシからしたら可愛いおなごじゃよ」

レベッカの頭を撫でながら言う。


「ねぇゴンベエ」


「分かっておるわい、気にせんで大丈夫じゃ」

レベッカと歩くワシにヒソヒソと見た者達は話している。


銀翼の騎士団の解散。


迷宮都市で最も強いパーティーが解散した。


その話は瞬く間に迷宮都市に広がり、その原因のワシ達は恨まれている。

というかワシ。


この迷宮都市ではワシの悪い噂が流行り、ワシの周りにいるおなごを好きな者達に、ワシは何人も喧嘩という名の奇襲を受けている。


まあワシがいた世界の武士よりも弱いから楽しくも面白くもないからつまらん。


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