団長
「はぁぁぁぁぁ!」
「良い一撃じゃ、じゃがつまらない一撃じゃのぅ」
「お前の感想などどうでもいい!卑怯者め!」
「卑怯な事などしておらんがな」
「嘘をつけ!お前の適正がFランクだと知っているんだぞ!そのお前がSランク冒険者だと?
ふざけるな!」
「ふざけてなどおらんよ、楽しくダンジョンで遊んでおったらSランク冒険者になったんじゃよ」
「もうお前と話す事はないようだな、銀翼の騎士団の団長の名において断罪する。
『銀翼』
これは銀の翼の生えた竜と同じ力を持つことができるスキルだ。
冥土の土産に見ておくといい、これがお前の最後の光景だ」
彼女の背中から美しい銀翼が生え、キラキラと光の粒が舞っている。
「確かに死ぬ前に見る光景と言われれば最高じゃの」
「そうだろ。
ゴンベエといったか、我が銀翼によってお前の魂を浄化する。
『銀翼の鎮魂歌』」
ワシは銀色の斬撃に包まれた。
Sランク冒険者になったワシのもとに一人のおなごが現れた。
「話がある、着いてこい」
「ちょっといくらSランクパーティーの団長だからって失礼じゃない?」
「ふっ下位の冒険者の言葉などこの迷宮都市では通用せん。
怪我をしたくなければどけ」
ワシの目の前で文句を言うレベッカにこの都市最強のおなごが言う。
「よいよい、レベッカは下がるがよい。着いて行くのは構わんが何処に行くのかのぅ?」
「いいから黙って着いてこい」
おなごはワシに背を向けて歩いて行った。
「ゴンベエ」
「大丈夫じゃよ、どれ行こうかのぅ」
ワシは大人しくおなごについて行った。
どうやら目的の場所はSランクダンジョンのようだ。
向かってくる魔物達はおなごの一撃で屠られ、ワシは特に何もする事無く歩いている。
「ここだったな」
おなごは立ち止まりワシの方を向いた。
「それでなんのようかのぅ?」
「決まっているだろう、何をしたのか聞きたい」
「はて何のことかのぅ?」
「ふっ、でははっきり聞こう、どうやってダンジョンを一人で制覇したんだ?」
「普通に魔物を討伐してじゃのぅ」
「それは当たり前のことだ、私が聞きたいのはそれをどうやって討伐したのかだ。お前程度の実力で制覇するなど無理だろう。
冒険者ギルドから困惑してると相談されてな、真実を語って欲しい。今なら私の権限で最低限の罰で済ませてやろう」
「どうやるも何も普通に討伐したと言ってるじゃろ」
「はぁ、これだから卑怯者は困る。お前達少し痛めつけてあげろ、迷宮都市の平和は我々で守るんだ!」
「「はい!団長!」」
おなごの宣言を聞いた男達や女達が現れた。
「かっかっかっかっ!なかなかの猛者の集まりよのぅ、どれこの迷宮都市の最強パーティーの実力を見せてみよ!」
「舐めた口を!死ねぇ!」
「殺したらいかんじゃろう」
ワシに叩きつけてくる金棒を手刀で弾き、男の顎に掌底を叩きつけて気絶させる。
「ランタン!お前ら一人ではなく三人一組で戦え!こいつは少し厄介だ!」
「はい副団長!」
副団長と呼ばれた男の命令で三人一組でワシにかかってくる。
「オラァ!」
「かっかっかっかっ!よいぞよいぞ!昔を思い出すぞ!さあもっと本気でかかって来い!」
ワシは敵から奪った剣を使い男共を気絶させる、おなごは優しく撫でるように気絶させていく。
「かっかっかっかっ!」
楽しい、昔罠に嵌められ沢山の武士達に囲まれた事を思い出す。
「権兵衛!」
「おや、これはこれは武士の皆様。こんな夜更けに何のようかな?ワシはこれからこのおなごと遊ぶんだけど?」
「馬鹿なやつだな!その女は私達の仲間なんだよ!つまりお前はここに誘い込まれたということだ」
「瑠璃、本当か?」
花魁の瑠璃は悲しい顔をして頷く。
「そうか、瑠璃は逃げなさい。
また会いに行くから気にするな」
「やはり女に弱いのは本当のようだな、お前ら!」
女を盾にした男達が俺の前にいた。
「はっはっはっ!お前ら覚悟しろ」
俺の周りには女以外は生きてはいなかった。
「君らはここに行くといい、君らのようなおなごがたくさん匿われている。
安心しろ、女将さんはとても優しいから」
おなご達は何度も頭を下げた。
おなご達は無事女将さんの所に行き過ごしている、あそこはお役人も手を出せない夜の街。そして女将さんはその夜の街の顔役。
これでなんとかなるだろう。
「よそ見か?」
「そうじゃ、少し昔を思い出してのぅ」
副団長と呼ばれた男が大剣を振ってきた。
「団長が言っていたようにふざけた奴だな!」
「お主は三人一組じゃなくてよいのか?」
「何を言っている、もう俺しか残ってないだろ!」
男が言っているように周りには気絶している者達が倒れていた。
「お主はワシが卑怯者だと思うかの?」
「さあな!俺達は団長の命令で動くだけだ!」
「副団長と呼ばれるだけあるのぅ、まさかその大剣で普通の剣のような動きをするとは」
副団長の剣は振り下ろす横薙ぎをするだけではなく、避けられると分かると大剣を止め、別の動きをしてくる。
並の相手ならすぐにやられるだろう。
並の相手なら。
「うむ面白かった!あと一撃で終わらせよう」
「そうだな、どうやらそれしかないようだ。
痛めつけるのはやめだ、お前はここで殺す!
我が[銀翼の騎士団]の名において断罪する!
『銀騎士』」
副団長が白銀の鎧を纏った、
そして大剣はランスと呼ばれる槍に変わった。
「待てパトス!痛めつけるだけだ!殺すな」
「団長こいつは危険です!きっとこの先この男は大変な事をしでかします!
ここで殺す事が世界の為です!」
「私達はこの迷宮都市を守ればいいんだ!世界など関係ないだろ!」
「今はそうです!ですが団長はきっと世界を守る存在になります!
だから俺達は付いて来ました!
だから、お前のような存在は見逃せない!
死んでもらうぞ『グンニグル』」
「パトス!」
彼の一撃はワシの胸を突いた。
「ば、馬鹿な」
「その程度の攻撃ではワシを傷つけられんよ。よき忠義心、見事」
着物すら破れる事無くその一撃受け止め、その男の忠義を認める。そして懐から扇子を取り出して気絶させる。
「お、おのれ!」
「満足かのぅ?」
「な、何者なんだお前は」
私の奥義とも言える攻撃を受け男は無傷で立っている、服も何もかも何事もなかったように。
「そうじゃのぅ、お主に初めて敗北を与えるものかのぅ。
そしてお主はワシからしたらこの世界で初めて刀を使うに値する実力を持つおなごと言ったところじゃの」
腰している剣を抜くと凄まじい覇気を感じる。
「そうか、あの女が言っていたのは本当だったんだな。私の目は節穴だ」
「おなごに刀を向けないワシに刀を向けさせたんだ、光栄に思え!」
「ああ、光栄に思う。
だが最後まで足掻かせてもらう!」
どこまで耐えられるか分からないが戦う、きっと初めて私が弱者として戦うから。
ああ、なんて私は弱いのだろう。
どれだけ剣を振っても当たる気がしない、ああこの人の動きは素晴らしい、無駄が全くない。
「ふふふ」
何故か笑いが止まらない。
「楽しいか?」
「楽しい!こんなこと産まれて初めてだ!
なぁちゃんと名前を聞いていいか?」
「ワシの名前は権兵衛」
「そうか、権兵衛様。我が主よ」
私は限界を超えて戦っていたので意識を手放した、だが手放す瞬間に感じた温もりは暖かった。
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