ハルバスの魔眼

「ははははははははははは」


「たしかにゼイクに間違いないが、これはどうしたんだ?」


「少しワシの逆鱗に触れてしまってな、お仕置きしたまでじゃ」


「権兵衛それってさっき相談された女性が関係しているでしょ」


「正解じゃ」

ハルバス殿とアルミール殿に指名手配犯であるゼイクを引き渡す。


「それでアルミール殿。

おなご達はどうすればよいかのう?」


「そうだなー、一旦僕の屋敷で引き取るよ。

この近くに盗賊団の拠点があってその盗賊団の被害を受けたんだ。


僕達が責任を持って償う必要があるからね」


「一つだけ言い忘れたんじゃが、皆盗賊団に捕まっている間の記憶が消えているんじゃ。


それに身も心も綺麗じゃからそのつもりで対応して欲しいんじゃ」


「どうゆうこと?


盗賊団に捕まって何もなかったなんて信じられないんだけど?」


「ワシの妖術で捕まる前の状態に戻したんじゃ」


「権兵衛嘘はいけないよ。

そんなことができるスキルなんて聞いたことないし、もしできたら大騒ぎになっているよ!」


「できるんじゃから仕方がないじゃろ。


時にハルバス殿の左目は見えないんじゃろ」

ハルバス殿の左目は眼帯で見えないが、深い傷があるのを感じた。


「ああ。昔強い魔物との戦闘で魔眼を使い過ぎてな、代償に視力を失ってしまった。


魔眼としての効果は発揮できるので特に問題はない」


「どれ治して見せようかの」


「これはどの治癒師に見せても治せなかったんだ。たとえゴンベイ殿でもそれは無理だ」


「アルミール殿、ハルバス殿の目を治したら先程の話は信じてくれるかの?」


「いいよ。信じてあげる」


「ではハルバス殿にこちらに来てくれるかの」


「あ、ああ」

ハルバス殿がこちらに来て眼帯を外し、ワシは右手をその目にかざす。


「ふむ、このぐらいの年数かの。

妖術『遡及』。


どうじゃちゃんと見えるじゃろ?」


「どうハルバス兄様」


「ふっふっふっはははははははは!

ゴンベエ殿に見えるぞ!アミー本当に治ったぞ!


両目で見えるのは20年ぶりだ!こんな風に見えていたんだな」


「ハルバス兄様本当なの?」


「本当だ!百人以上の治癒師達に見せても誰も治せなかったのに、ゴンベエ殿はいとも簡単に治してくれた!

ありがとうゴンベエ殿」


「よいよい、これでアルミール殿に先程の話を信じてもらえるからの。


それより笑い方が同じで面白かったわい」


「ねぇ権兵衛!!それって前の姿戻すだけ?」


「そうじゃな、ハルバス殿の目を治したのはもとに戻しただけじゃな」


「じゃあ元々産まれた時から病気の人は治せないんだ」


「別の妖術なら産まれた時から病気の者でも治せるのう。誰が治したい者でもおるのか?」


「本当!」「本当か!」

アルミール殿とハルバス殿が驚いた顔をして同時に叫んだ。


「本当じゃ」


「じゃあ弟を治して欲しい!

弟は先天的に魔力が多すぎて、その魔力が体を蝕みあと五年も生きてられないらしいんだ。


病名は[流魔過剰症]一応不治の病なんだ。


魔力ない権兵衛は本当に治せる?」

アルミール殿が不安そうな顔で聞いてくる。


「大丈夫じゃな。魔力は無くとも二人の魔力は感じ取れるし、それがどのように動いてるか分かるからの。


おそらくじゃが、魔力と呼ばれる力が出ておる器官に欠陥があるんじゃろ。

アルミール殿安心して任されよ」


「権兵衛!ハルバス兄様今から屋敷に行ってもいい?」


「もちろんだ!これでハリーが助かる!


なんていい日だ!」


「じゃあ権兵衛屋敷に行こう!」


「アルミール殿その前に仲間に会ってワシの得物を回収したいのじゃが、よいかの?」


「そういえばそう聞いていたよ。

もちろんいいよ、権兵衛の仲間がら泊まっている宿は僕も知っているから安心して」


「では行くとするかのう。ハルバス殿世話になった」


「ゴンベエ殿それは嫌味というやつかい?」


「当たり前じゃ、牢屋の中で他の犯罪に随分と文句を言われたからのう。お返しじゃ」


「ではありがたく受け取っておこう。

それぐらいさせてもらわないとな」


「かっかっかっ!変わった御仁じゃの」

ウィンクしてハルバス殿はお返しを受け取ったので、面白くなり笑った。


「権兵衛何しているの!早く行くよ!」


「ではハルバス殿またの」


「はい、弟をよろしくお願いします」


「大船に乗った気持ちで待っておれ」

ワシは一番初めにハルバス殿と会った部屋から出て行った。


詰所を出ると、ハム殿の馬車よりだいぶ小さい豪華な竜車が停めてあり、それに乗るようアルミール殿に言われた。


竜車の中は人が六人ぐらい乗れる大きさで、アルミール殿と向き合うように座り竜車は発進した。


「随分と小さいな竜車じゃの」


「権兵衛これは竜車じゃないよ。貴賓車と言って人だけが乗るように作られているんだ。


それに引いている竜はきちんとした血統を持った竜しか引けないんだ」


「貴賓、ということは貴族などの偉い人しか乗れないということかの?」


「そうだよ。これはサンジェシカ家特製のデザインがされた貴賓車なんだ。


一度見ただけでどの貴族が乗っているかわかるようにね」


「なるほどのう。たしかにそれならば顔ぱすのように貴賓車ぱすができるのう。


門番からしたらとても楽に見分けられてありがたいのじゃが、

ただ真似をして簡単に街に入ってしまえるのは危ないのう」


「それは大丈夫だよ!それをしたら死罪だからやるはずないから」


「どこにでも阿呆はいるからの、気をつけることじゃな」


「本当に大丈夫だよ。


その貴賓車パス?する時はこの貴賓車についている特別な魔道具と、門についている魔道具が反応することで見分けられるから」


「魔道具とは便利な物じゃの」


「そうだよ!この国は魔道具を発明したおかげで大きく発展したんだ。


特にこの街は初めて魔道具を発明した人、

ご先祖様のサンジェシカ様がいたおかげで至る所に魔道具が置いてあるんだ。

ほらあそこ見て」

アルミールが貴賓車についてある透明の壁から見える水が次々と出てくる置物を指差した。


「あれはね空気中にある水分を吸収し、浄化してから水を出しているんだ。


噴水といって、夏場は子供達が噴水の水を貯めてある場所でよく泳いでいたりするんだ。

この街にある魔道具で一番有名なんだよ」


「なんと!空気中から水分を使うなど凄まじいな。あれがあれば無限に水を得ることができるではないか!」


「そうだよ。でも魔法具を作る時に魔法陣っていう紋章のようなも物を刻むんだけど。


複雑すぎて真似ができないんだよね、

本当はあの魔道具を量産して村々に設置したいんだけどね。

そしたら水不足を解決できるのに」


「複雑か、そうでもないような気がするがの。後でワシが見て真似できたらアルミールに教えてやろう」

ワシが見る限りワシが持つ不思議な道具より作りが簡単そうに見える。


「なんか権兵衛なら本当に真似できそうだから期待しちゃう」


「期待してよいぞ」

そんなことを話していると貴賓車は停まり、仲間のいる宿に着いたらしい。


「ゴンベエ!」「ゴンベイ!」

宿に入り二人を呼ぶよう宿の店主にアルミール殿が言ったので店主が二階に向かい、聞いた二人は急いで下りてきてワシを見つけたようだ。

二人はワシに駆け寄り飛びついてくる。


「ゴンベエ心配したよ!よかった街に入れるんだね」


「ゴンベエ無事で何よりだよ。わたしだけ無事に入ってしまったから悪い気がしてたまらなかったし、会いたかったわ」


「わ、私も会いたかったわよ!」


「そうかそうか。

ワシも会いたかったぞ、二人とも元気そうで何よりじゃ」

飛びついて来た二人を両腕で抱きしめて頭を撫でる。


「ゴンベエ今日から一緒にいられるの?」


「そのことなんじゃが少しやることができての、今日はレベッカに預けたワシの得物を取りに来たんじゃよ」


「そっか、ちょっと待ってて」

レベッカは刀を取りに戻ったようだ。


「ねぇゴンベエ、ゴンベエと一緒に来た人ってもしかして女性?」


「よく分かったのぅ、女性じゃよ」


「やっぱり!これは警戒しないといけないわね」


「何を警戒するんじゃ?」

何を警戒するか聞こうとするとレベッカが戻って来たみたいだ。


「ゴンベエ、手入れもゴンベエの真似をしてしておいたよ!」

ワシは刀を抜き状態を確認する。


「レベッカありがとうのぅ、しっかり手入れがされておる」

レベッカの頭を撫でながらお礼を言う。



「大事にするって言ったからね」


「権兵衛そろそろいいか」


「そうじゃったの。

レベッカにリリス、少し用事を済ませてくるから大人しく待っておるんじゃよ。

行ってくる」


「ゴンベエ絶対帰ってきてね!」


「ゴンベエ待っているわ」

後ろの二人に手を上げて答える。


アルミールとまた貴賓車に座った。


「アルミール殿何故そのような顰めっ面をしておるんじゃ?」


「別にー。ただ権兵衛の仲間が女の人で、しかも大人の女性で、権兵衛に抱きついていたからイラついてなんかいないし。


しかも二人とも美人だから少し自信を無くしたなんて思ってない」


「何を言っている。アルミール殿は美しいと何度も言っておるじゃろ」


「だから軽々しくそんなこと言わないでよ!

もう!」

アルミール殿は機嫌を直したのかニヤニヤしている。


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