甲冑

「それでいつ出発するんだ?」


「アルサ殿それはハム殿次第じゃのぅ。

まだハム殿のハム商会は軌道には乗っておるが、まだまだ油断できんからのぅ。

もう少し様子を見たいんじゃ」


「そうか。ハムは良き友を得たのだな」


「友、そうじゃな友じゃな」

昨日おなご達の話し合いは終わり、全員ワシとレベッカの旅に同行することになった。


別嬪のおなご達と共に旅をするのは悪くないから別にいいが、男共が絡んでくるのが目に見えた。

クレアとリリスとアルサ殿も鍛えることが決定した。


「ねぇーゴンベエ?」


「何じゃレベッカ?」


「あのさ昨日ふと疑問に思ったんだけど、

その次元袋って生きた生物は入らないんだよね?」


「そうじゃよ」


「じゃあ何でダンジョン素材入っているの?

レッドドラゴンの次の階層の奴も入ってるよね?

ゴンベエ生物殺せないじゃなかったの?」


「ああそのことか。

あの時は面倒なので説明せんかったが、どうやらだんじょんが作り出した魔物は生物とは違うのじゃ」


「どうゆう事?」


「そうじゃのぅ、生物には必ず魂が宿っておる。じゃから盗賊達は殺せんかった。

しかしの、だんじょんが作り出した魔物には魂なく、ただだんじょんを守るためだけに動いておった。

つまりあの中で生物といえるのはダンジョン其の物ということじゃ」


「じゃあレッドドラゴンも殺せたってこと」


「そうじゃ。あの時はこの世界に来たばかりじゃったからのぅ、少し慌てていたみたいじゃ」

顎髭を触りながら言う。


「あのーわたくしも一つ聞いてもいいでしょうか?」


「なんじゃ?」


「この世界に来たというのはどういう意味なんでしょうか?

もしかしてゴンベエ様は勇者様なのでしょうか?」

クレアが前にレベッカが聞いてきた事を聞いてきた。


「え!ゴンベエ勇者なの!

流石わたしの男ね!」

リリスが自慢げに言う。


「そうか、権兵衛が勇者。

あの強さなら間違いない、流石僕の旦那様になる男だね!」

アルミール殿はあの戦いを思い出して言う。


「なんと!勇者であったとは!

これは何という商機!

ゴンベエ殿!ぜひ勇者の名前をハム商会で使わせて欲しい!」

興奮した様子でアルサ殿が言った。


「待て待て。ワシは勇者じゃないわい。

ワシは違う世界で勇者として呼ばれ、魔王を倒したご褒美にこの世界に送ってもらったんじゃよ。

言うなれば元勇者じゃ」


「でも勇者だったのね!

わたしが勇者の子供を授かるなんて、父さん母さんついに幸運を手にしたわ」

リリスが手を組み目を閉じた。


「まさか男女と呼ばれた僕が元とはいえ勇者の妻に。

リリス殿言う通り子を身籠るとは。


あーゴンスケ、ゴンゾウ、ゴンナ可愛い僕の子供達」

アルミール殿はどこか違う世界に行っているらしい。


「待て元勇者!それは面白い設定だ!

やはりゴンベエの名前を使わせてくれ!

この世界に元勇者が現れ、ハム商会の見方をしている!これは後ろ盾としては面白い!

そしてゴンベエ殿から大量の珍しい素材や高級な素材を買えれば、嘘も真に変わる!」

さらに興奮したアルサ殿が言った。


「えーと、わたくしも子供が欲しいなーと思っております。

ゴンベエ様いつでも夜伽お申し付けください。あっでも妻にしてとは申しません、妾で充分です」

もじもじしながらクレアが言った。


「ちょっと!ゴンベエの子供を最初に産むのは私だからね!

みんな分かってるでしょうね!」


「レベッカそれは分からないわよ、子供が出来るのは運次第」


「リリス!」


「僕もそう思うよ、父上様と義母さんもそう言ってたし。

権兵衛僕は安産型じゃないけど、頑張って産むから!」

どうやらこの世界に戻ってきたみたいだ。


「アルミール様まで」


「わたくしは安産型なのでご安心ください。

それと妾なので遺産はいりません。

わたくしが一人で育てますから」


「クレアさん」


「うーんハム商会はとしてはゴンベエの子供は欲しいな。

そうすれば恩恵を得られるし。

さて私か他の職員に相談するか」


「アルサさん!だめよ!

ゴンベエを本気で好きな人以外抱かせないんだから!」


「かっかっかっかっ!

実に面白い話じゃな。

そうかワシの子供か、考えた事もなかったわい。

お主は本当にワシの子を孕む気かのぅ?

ワシは碌でもない男じゃぞ?」


「ゴンベエは碌でもないなんてことはないよ。少し目つきはエッチだけど、他の男と違ってなんか嫌じゃないし。

死にかけた私を助けてくれたし、贈り物くれたし。

恥ずかしくていえなかったけど、すごい感謝しているのよ」

レベッカは顔を真っ赤にして言った。


「そうよ!ゴンベエよりいい男はいないわ!

だってこのリリスの男だもの!」

また自信満々に言った。


「そうですね、絶望しかなかったわたくしやわたくし達を助けてくれました。

わたくし達もとても感謝しています」

クレアが目を閉じて祈るように言った。


「そうだね。もし碌でもなかったらあの時は殺されていただろう。

それに初めて女扱いされた。

とても嬉しかったよ」

アルミール殿が真剣な目で言った。


「私は、、特にないな。

あるとすればハムを助けてくれたことくらいか?

まあ感謝しているよ」

アルサ殿が言った。


「なるほどのぅ、どうやらこの世界ではワシは良い人間に見えるらしい。

かっかっかっかっ!

まこと面白い世界よ」

過去のワシを少し思い出し笑う。

でも平穏はこれまで。


「おい!ここにゴンベエって奴いるだろう!

出てきてもらおう」

ワシらと宿に泊まっていた者達が朝食をとっている食堂に、柄の悪い奴らが入ってきた。


「権兵衛ならワシじゃが?」

キセルで一服しながら答える。


「お前か!ちょっとついてきてもらおうか!」


「なぜじゃ?」


「しらばっくれんな!お前のせいでうちの商会は大変な事になってんだよ!

いいから黙ってついてこい!」


「バルイト!商人の端くれならきちんと説明しろ!」


「支店長、、いやもうあんたは支店長じゃねーから命令は聞かねー!

ゴンベエさっさと来い!」

ワシの腕を掴みどこかに連れて行くようだ。


「ゴンベエ!」「ゴンベエ様!」「ゴンベエ殿!」

レベッカとクレアとアルサ殿は焦ったような声を出すが、残り二人は呆れた顔をしている。


ワシはどうやら前に来た商会に連れてこられたようだ。


「それでワシを何故呼んだんじゃ?」


「決まっているだろ詐欺師!

盗んだ素材をよこせ!」


「盗んだとは?」


「ハムの野郎の商会に素材を卸しているんだろ!お前のような奴にあんな珍しい素材を卸せるわけがない!

一体どこから盗んだんだ!

黙っててやるから私の商会に全て置いていけ!」

すごい形相のゼーニスと呼ばれるちょび髭男が言った。


「あれはだんじょんで魔物を狩り手に入れた物じゃよ。

盗んではおらん」


「嘘を言うな!お前のような奴には無理だ!」


「ゼーニスさん少し痛めつければ素直になりますよ」


「そうか、バルイト頼んだぞ」


「はい。ということで少し痛い目にあってもらうぞ。

オラァ!



ウア゛ー」

ワシを殴った手の指は親指を除き全て折れた。


「ふむ、軟弱じゃのぅ」


「お前ら!全員でかかれ!」

25人全てがワシに攻撃してきた。


「それでゼーニスといったかのぅ、これで終わりかい?」

攻撃した全ての男達は攻撃した箇所が全て折れていてのたうち回っている。


「ば、ばかにするな!おいあの方をよべ!」

秘書のようなおばさんが部屋を出ていき誰かを連れてきた。


「こいつが悪党か。

俺は悪は許さん。死ね!」

ワシを斬ろうとした剣を右手な人差し指と親指で止めた。


「なかなかの腕前じゃ。

ならば分かるじゃろう?」


「くっ!いずれ斬る!」

甲冑を身につけたおなごの声をした人は逃げ出した。


「さて帰ることにするかのぅ、帰って良いか?」


「は、はい!どうぞお帰りください!」

ワシは商会から出て先ほど逃げたおなごに会いに行く。


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