銀翼の騎士団

「君達が噂のニューフェイスだね」

食事処で昼食食べていたら、白銀鎧を身に付けている鋭い目をしたおなごに話しかけられた。


「そうよ、貴女に関係あるかしら?」

リリスが動じずに答える。


「ああ、僕はこの迷宮都市の代表でね、君達がダンジョンを汚い手段で攻略していると相談されたんだよ。

今日は君達を見極めに来た」


「ふーんそれで貴女は私達をどう見たのかしら?」


「君が抱きついている男以外は確かに強者と言えよう。特に君は恐ろしい魔力をしているね」


「ふふふ、どうやら貴女の目は節穴のようね。この中で最も恐ろしいのはこのゴンベエよ」

リリスは先ほどよりワシの腕を強く抱きしめながら言う。


「すまないね君の男を馬鹿にしたのはすまない、だが本当にその男が強者とは思えないんだよ」


「まるで昔の僕を見ているようだね」

笑いながらアルミール殿が言う。


「何やら喧嘩を売られて気がするんだが?」


「あら?先に喧嘩を売ってきたのはそちらよ?」

リリスが黒い気を出しながら言った。


「そうですね、ゴンベエ様を馬鹿にしたのは許せませんね」

弓に矢を当てながらクレアが言う。


「この人にはお仕置きが必要かもね、僕の旦那様を馬鹿にしたんだから」

アルミール殿が剣の柄に手を触れて言う。


「へぇー場所を変えてやろうか!

喧嘩を売られたのなんて久しぶりだよ」

ガタガタと机や椅子、窓や扉が揺れだした。


「よせ」


「分かったわゴンベエ」


「分かりましたゴンベエ様」


「分かったよ権兵衛」

三人は大人しく矛をおろし昼食を食べ始めた。


「へぇー随分飼い慣らしているね」


「お主もわざと挑発するな、安心せいワシらは卑怯な真似はしておらんよ」

ワシ達はわずか三日でF、E、Dのダンジョンを制覇し、皆Cランク冒険者になった。


明日からCランクダンジョンに挑む事になる。


「ふーん今日は引く事にするよ。

でも不正が発覚したら殺すから」

目に殺気を乗せてワシに言ってくる。


「かっかっかっかっ!ワシに殺すとは久しぶりに聞いた。

そうじゃのう、お主と戦えるなら不正をしてみるのは一興じゃのぅ」


「僕相手にそんな口を叩ける男は初めてだよ、君が不正をするのが楽しみだ」

おなごは帰り際にそう呟いた。


「ゴンベエあの子懲らしめていい?」


「今のリリスではあの者には何もできんよ」


「そうなのですかゴンベエ様」


「クレアの気持ちも分かるが、あの者はこの迷宮都市で最も強い。

アルミール殿が相打ち覚悟で戦っても腕一本というところじゃの」


「この僕が相打ち覚悟でその程度なんだね。

それはやばいね」

アルミール殿は今のところ一番強い、次に強いのはフィーライヌだ。


「もしかして戦っていたらわたし達はやばかっのかしら?」


「そりゃそうじゃろ」


「ねぇゴンベエ、わたし達はあの子より強くなれる?」

少しイラついているリリスがそう聞いてきた。


「あの者が今のまま驕っていたら確実にお主達の方が強くなる。

だから今は安心してワシに任せよ」


「分かったわゴンベエ」


「かしこまりました」


「分かったよ」

リリス、クレア、アルミール殿が答えた。


「ゴンベエ様私はこれ以上戦いたくないんですけど、なんか戦っている時は楽しいんですけど、後で思い出すと恥ずかしいんです」


「アルサ」


「はい、諦めますご主人様」

アルサ殿には悪いが戦闘を続けてもらう必要がある、彼女の為にも。


「なぁあんた達代金はいいからここから出て行ってくれないか?」

この店の店主がそう言ってきた。


「なによ!わたし達がいたら迷惑って言いたいの?」


「そうだ、[銀翼の騎士団]の団長に目を付けられたお前達をこの店に置くわけにいかない」


「誰よそれ」


「さっきいた女性だよ、あの人はこの都市の治安を守るSランクパーティーの団長なんだよ。あの人に敵対したらこの都市にはいられないんだ。

だから今すぐ出てってくれ」


「店主殿ここの料理は持って帰っても良いか?」


「それは構わないが」


「ありがたい、じゃが代金は払うぞ。

迷惑料込みじゃから釣りはいらんよ。

もしワシらの容疑が晴れたらまた来る、

皆行くぞ」

ワシの言葉に従いおなご達は後ろから付いてくる。

食べていた料理は次元袋に入れて帰る。


「ゴンベエ」


「リリスそう膨れるな、クレアも眉間に皺を寄せると美人さんが台無しじゃよ。

アルミール殿もその殺気やめるんじゃ、ほれ」

アルミール殿の頭を撫でるとアルミール殿は少し頬を赤らめ、機嫌を直した。


「ゴンベエ」「ゴンベエ様!」


「分かっておる」

二人の頭も撫でてあげた。


「あのーゴンベエ様私もして欲しいわけじゃないんですが、仲間外れは嫌なんですけど」

アルサ殿が服を引っ張って言った。


「どうしようかのぅ」


「諦めます」


「アルサ殿は諦めるのが早いのぅ、そういう所はよくないのぅ」


「仕方ありませんよ私はそういう風に育てられましたから」


「アルサ殿、いつかその呪縛を解いてやるから安心せい」


「呪縛?」


「今は気にせんとええ、この迷宮都市でお主はお主になれるということじゃ」


「アルサ、大丈夫だからゴンベエに任せなさい」


「はいご主人様!」


「本当に調教済みじゃのう」

ワシの二人を見てそう思った。




「それでレベッカはどうじゃ?」

夜にクレアに酌をされながらフィーライヌに聞く。


「筋は悪くない、だが何故がぎこちない動きをしていてな。何かを恐れているような動きだった」


「それはそうじゃろ、あの子は置き去りにされ一人で自分より強すぎる存在と戦い死にかけたからのぅ」


「それだけか?」


「よく見ているのぅ、フィーライヌお主はレベッカの姉のような存在になってくれると嬉しい」


「それは構わない、

あの子は少しだけティアラに似ているからな。自分一人で全て抱える所がな」


「かっかっかっかっ!

そこまで分かっておるなら任せられるのぅ、レベッカはワシらの中で一番過酷な過去を持つからのぅ」


「やはりか、だが笑うのは気に食わない」


「それはすまん、お主の心が和らいだのか分かったから少し嬉しくてのぅ」


「ふ、ふざけるな!」


「フィーライヌ様ご飯をその様にしてはなりません!」

フィーライヌは目の前にあった自分の食器のを手で薙ぎ払い、料理が散らばる。

それをローニャが注意した。


「ロ、ローニャすまん。今片付ける」

フィーライヌは子供達にとても甘くローニャ達に逆らえない。


妹想いだからな。

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