姫
「そんなことが可能なのか?」
「可能じゃ」
「容姿を偽るスキルは聞いたことあるが、
魔力を別の人のように偽るのは聞いたことがない」
「そうじゃろうのぅ、それがあるから街や都市に犯罪者が入らんのだから」
この都市に出入りするときは、サンジェシカに入る時に使った板を必ず触れる必要がある。
しかもこの都市の物は名前も出るらしい、
だから都市を出る時姫さんの正体が分かってしまう。
「ゴンベエ様、それは真なのですね?」
「そうじゃよ姫さん、試しに誰かやってみるかのぅ?」
「じゃあ俺が試そう。
一応俺は姫様とキャンベルの保護者だからな。
だれか認識装置を持ってきてくれ」
見守っていたおなごの一人がどこかに行った。
「では認識装置という物が来る前にやっておそうかの。
妖術『変換』
これで終わりじゃ」
ワシは右手の人差し指と中指だけを立てて、
少し遠くにいるガンナン殿の姿を撫でるように左から右に振った。
「旦那、本当に今ので変わったのか?」
「変わったぞ。ちなみに名前はケンシンと出るようにしてやったぞ」
「ガンナンの旦那どうぞ」
「ありがとうレレちゃん。
どれ、、本当だ!
名前がケンシンになってる!」
「ガンナン本当か!
見せろ!、、姫様!見てください!
本当に変わっています!」
キャンベル殿は姫さんのもとに行き装置を見せ、変わっていることを伝えた。
「で、ではわたくしはこの都市から、いえこの国から出られるのですね」
「はい!出られます!
あれ?ゴンベエ殿出られるのは分かりましたが、これでは姫様だと仲間に証明できません」
「大丈夫じゃよ、時間が経てば戻るようにできるからの」
「なんと!ゴンベエ殿、先ほどは失礼した!
どうか頼みます、姫様は我らの最後の希望なんです」
「キャンベル殿達は国を再建させる気かの?」
「それは分かりません。逃げた同士達の数は少なく、再建したくてもできないような気がします。
ゴンベエ殿はどう思われますか?」
キャンベル殿が悲しい顔をして聞いてくる。
「できなくはないのぅ。
お主達が知らぬ者たちがおる」
「知らぬ者達?」
「そうじゃ、山の民じゃよ」
「山の民!ですが彼らと我らは犬猿の仲です!手を貸してくれるとは思えません」
「それが今はできるのじゃよ。
お主らの国を滅ぼした国が、お主らと山の民の間に交わした契約を破ったんじゃ。
今、山の民は怒っておる。
そして上の者達は前の国の方が良かったと思っておる。
もちろんお主らの国の民達ものぅ」
「姫様、どういたしましょう」
「まずは仲間と合流し、山の民と会ってみたいと思います。
何故がゴンベエ様の仰ることは信じられます」
「そうですか。ではそのように」
話はまとまり明日二人はこの都市を出ることになった。
ワシは帰るのも面倒になったので部屋だけ借りた。
「さて、何の用じゃ?」
「申し訳ありませんゴンベエ様。
一つだけお願いを聞いてはいただけないでしょうか」
「それは遠慮しておこうかのぅ」
姫さんは服を脱ぎながら近づいてきた。
「そう仰らないで下さい。
これでも何人もの殿方に求婚されるほどの美貌があると自負しております。
ゴンベエ様、
もしこの国から出られても、山の民のもとに行く前に死んでしまう可能性があります。
その前に一人の女になりたいのです。
聞いてはいただけませんか」
姫さんはワシの前で美しい裸体を露わにした。
「はぁ、姫さんの目的はワシを自分の勢力に取り込みたいんじゃろ?」
「ええ、キャンベルが恐れるほどの力を有する貴方が欲しいのです。
そしてわたくしと共に来てください。
そうしていただけるならこの身を好きして構いません」
真剣な目をしてワシに言った。
「わたくしは国を再建しなければならないのです、わたくしを信じている彼らと彼女らのために。
ゴンベエ様、房中術は一通り教わっております。
さあ好きにしてください」
姫さんはワシが眠っていた隣に寝転がる。
「はぁ、姫さんこれをやるから今日は帰りなさい」
「あらゴンベエ様は女に恥をかかす方なのかしら」
ペロリと舌を舐めずったあとに言う。
「無理するでない。
手が震えておるぞ、本当は抱かれるのは怖いんじゃろ?」
「そ、そんなことはありません!
大丈夫ですから速くお抱きください!」
「何が好きで怯えるおなごを抱くんじゃ、
まったく」
ワシは寝るために外していた羽織を姫さんにかける。
「ゴンベエ様、本当に抱く気はないのですね」
「そうじゃ。
姫さんがワシの力がどれほど欲しいかは、今の覚悟で分かった。
じゃからこれを渡すと言っておるんじゃ」
姫さんがようやく手に取ってくれた。
「その短刀は鬼刀、鬼を二匹ほど使役できる」
「鬼ですか?」
「そうかこの世界にはおらんのか、
鞘を抜いて赤鬼、青鬼と呼んでみれば出てくる」
「鞘を抜いて『赤鬼』『青鬼』。
きゃっ!な、なんなのですか?これは魔物ですか?」
短刀から二匹が出てきた。
「これが鬼じゃ、その短刀を持つ者に絶対の服従する。
強さはそうじゃのうトカゲ、れっどどらごんといったかの?
あれの三倍は強いのぅ」
鬼の大きさは六尺六寸。
赤鬼は二本の角生え、目は全て赤く染まり口からは下から上に牙が生えている。
青鬼は一本角生え、目も全て青く染まり口からは上から下に牙が生えている。
「レッドドラゴンの三倍ですか!
なんと、こんなに可愛らしい見た目なのに」
鬼の見た目は何故か可愛い、
なぜなら動物のようにフサフサ毛が生えているから。
最初見た時赤鬼は仁王立ちの猫、青鬼は仁王立ちの犬にしか見えなかった。
「ゴンベエ様、これを本当にいただけるのですか?」
「言ったじゃろ、姫さんの覚悟が伝わったと。それに男が一度渡すと言った物を引っ込めるのはいかんじゃろ」
ワシは目配せして言った。
「ゴンベエ様。ありがたく頂戴します」
「よろしい。
そうじゃ、もう一度名前を呼べば刀に戻るぞ」
「は、はい。『赤鬼』『青鬼』戻りました。
不思議ですね、あんなに大きいのにこんな小さな剣の中に戻っていくなんて」
「そうじゃのぅ、まあ生物ではなくまじないみたいな存在じゃからのぅ。
まあ深く考えないことじゃ。
きっとキャンベル殿も心配している、帰りなさい」
「ゴンベエ様、ゴンベエ様は大好きだった兄上様に少し似ている気がします。
明日お別れなのですから、今日だけ一緒にいていただけませんか?」
少し涙目になった姫さんに言われた。
「しょうがないのぅ。
ちゃんと服を着るなら一緒に寝てあげよう」
姫さんは脱いだ服を着てワシの手を握りながら眠った。
姫さんは「兄上様」と寝言を言ったあとに一筋の涙を流した。
これから彼女が遭遇するであろう困難を乗り越えられるように祈った。
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