貧民街

「こっちじゃよ」


「おお!おられましたか!

ゴンベエ様お願いがあります!

バリール殿をお貸しいただきたい!


実は特殊な事情で連れていた奴隷が何者達に攫われてしまったんです!

そしてその者達はとても強く、護衛が全てやられてしまいました!

お願いします!取り戻さなければ私の命がありません!」

汗をだらだら流しながら言ってきた。


「バリールお手伝いしてくるんじゃ」


「へい!」


「ありがとうございます!バリール殿こちらです」

マドワキにバリールはついて行った。


「どれワシもいくかのぅ」


「ゴンベエどこに行くの?」


「それは秘密じゃよレベッカ」


「ついて行ってもいい?」


「レベッカ今回はちと危ないからだめじゃよ。

皆も今回はお留守番じゃ。

フィーライヌ皆を頼んだぞ」


「承知」

皆を残しある場所に向かう。


商業都市は貧富の差が激しく、貧しい人々が住む場所がある。

そこには服装はぼろぼろの子供や体を売っている女性が沢山いた。

そして薬物を欲しがり柄の悪い連中に殴られている。


「兄ちゃん何か恵んでくれんか?」


「情けないのぅ、男が誰かに縋るとは」


「そんなこと言わんでくれ、儂はもう何日も食べ物を口にしておらん。

頼む」


「はぁ、ほれ銀貨二枚じゃ。

盗まれんように気をつけるんじゃぞ」


「ありがたい!」

初老の男性は先程の柄の悪い連中の所に行き、薬物を買った。

そしてその連中がこちらに来た。


「なんだい新入りにしては随分と気前がいいみたいだな!

俺達にも恵んでくれよ!

あの爺さんにはやったんだ、まさか断らないだろ?」

「まあ断っても無理矢理奪うがな」

「むしろそっちの方がたのしそうだ!」

「そうだな!」

連中は五人組。

親玉喋らずにワシを見極めようとしてる男。


「無理矢理かのぅ、どれやってみぃ」


「待て」

黙ってた男が言った。


「頭どうしたんだ?」


「この男には手を出さない方がいい。

そうだろ旦那」


「そうじゃのぅ、殺しはせんが痛い思いはさせたじゃろう」


「殺すか。

お前らあの旦那は本物の悪だ。

俺が話をつけるからお前らは帰れ」


「はい!」「へい!」「了解です!」

三人は大人しく帰ったが一人だけ残った。


「頭、俺は納得いきません、立ち合わせて下さい」


「はぁ、旦那お手柔らかにお願いします!」

頭と呼ばれる男が頭を下げた。


「頭!

悪く思うなよ俺はなめられるのは嫌いなんだよ!

オラァ!」

右腕を振りかぶりワシを殴ろうとした腕を掴み、一本背負いをして地面に叩きつける。


「ぐぅぅぅぅぅ」


「まだやるかの?」


「い、いや俺の負けだ」


「うむ潔し」


「旦那ありがてぇ。ソウキ、お前は治りしだいアジトに戻れ」


「へい」


「旦那少し着いて来てくれるか?」


「いいじゃろ」

頭の後をついて行った。


案内されたのは貧民街にあった建物とはまるで違い、少し小洒落た建物だ。


中に入ると沢山のおなご達が悪そうな男を相手に酌をしていた。


「あらガンナンのお頭、今日は新入りを連れて来たのかしら?」


「ちげーよエリアこの方は立派な俺の客だ。

旦那気を悪くしないでくれ」


「構わんよ、どうやらお主はこの貧民街の顔なんじゃな」


「貧民街?ああスラム街のことか、

まあ一応ここら辺は俺の縄張りだな」


「そうよえーと」


「権兵衛じゃ」


「ゴンベエ様ね覚えたわ。

このガンナンのお頭はこの地域を守ってくださっているのよ。

表の奴らは薬物とか娼婦とか文句をつけてくるけど、一度この都市で落ちた私達は一瞬でもいいから幸福感が必要なのよ。

それを統括してくれているのがお頭なの」

キセルと似た様な者で煙を吸いおなごは煙をはきだす。


おそらく何かしらの薬物だろう。


「エリア旦那をもてなしてくれ、

ランクは竜だ」


「かしこまりました。みんな竜よ!」

エリアと呼ばれるおなごがいうと続々とおなご達が出てきた。


「さっゴンベエ様ご案内します」

気品のある女性がワシの腕を自分の腕で組み、引っ張る様に歩いた。


案内された部屋は大広間でワシとガンナンと呼ばれる男と沢山のおなご達がいる。


おなご達は体の輪郭が分かるような服を着て踊ったり、胸元の開いた服を着て酌をしてくれた。


「どうだい旦那、これを詫びとして受け取ってくれねーか?」


「いいじゃろう。じゃがここまでで良いぞ。

夜伽はいらん」


「いいのか?俺が言えば抱き放題だぞ?」


「それは今度にしてもらおうかのぅ、

どれ本題に入ろう」


「本題?」


「のぅ、姫さん?」


「え?」

先程ワシを連れてきたおなごに言った。


おなご達の目付きは変わり鋭い、そして姫さんを庇いながらこの場から立ち去り、一人の男性が現れた。


「貴様は追っ手か?」


「違うのぅ、少し手助けをしてやろうと思ってのぅ」


「手助け?」


「そうじゃ。今のままじゃとこの都市からは出られん、いつか必ず見つかるじゃろ」


「それはお前には関係ない」


「それがあるんじゃよ。

このまま何もせずにいたら姫さんは悲惨な運命にあうんじゃ」

ワシが見た未来で姫さんは姫さんではなかった。

魂が別の者に変わり、姫さんの魂は苦しみ続けていた。


「どうやら話の通じない男の様だ」


「待ってくれ!話が違う、お前達を匿うだけでいいと言ったはずだ!

旦那は関係ないだろ!」


「すまんな、姫様のことを知っている者は少ない方がいい。

地獄で詫びよう。

はぁ!」

腰に差していた剣を抜刀しワシを斬りつけようとしてくる。

だがワシに届く前にガンナンが懐から出した短剣で防いだ。


「邪魔をしないでくれ!」


「するさ!お前もちゃんとこの旦那を見ろ!

お前が敵うわけないだろ!」


「うるさい!いくら幼馴染とはいえ私を侮辱するのか?」


「くそ!じゃあ勝手にしやがれ!死んでも知らねぇからな!」


「最初からそうしてろ。

では死んでもらうぞ」

冷静さを失っている様なので分かりやすいようにする。

そうすると彼は震えだし固まった。


「な、なんなんだお前は。

体の震えが止まらない、さっきまではこんな威圧感感じなかったのに。

だめだ動いたら死ぬ」


「だから言っただろ!どんだけ鈍ってんだよ!

旦那悪いけど抑えてくれねーか」


「待って下さい!キャンベルを殺さないです下さい!

この通りです」


「姫様」

姫さんが土下座をして頼み込んできた。


「別に殺さんよ。キャンベル殿と呼ばれておったの、少し冷静に話さんか?」


「は、はい」

キャンベル殿には選択肢はなかっただろう。

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