奴隷

「ありあと」

水色の髪をした幼女にそう言われた。


「構わんよ。間に合ってよかったわい」

その幼女の頭のなでる。


「ねぇゴンベエ、ゴンベエならもっと簡単にこの子達を救えたんじゃないかしら?」


「それは秘密じゃよ」

確かに救えた、だが幾つもの未来の中でこれが一番救える可能性があった。

流石にこの世界に影響を与えるわけにはいかないから。


「あのー今日から私達は貴方の奴隷という訳ですか?」

同じ水色の髪色の女の子が話しかけてきた。


「ゴンベエ!」


「分かっておるよレベッカ。

大丈夫じゃ奴隷にせんわい」


「そ、それは困ります!

奴隷にしていただかないと困ります!

どうかお願いします」

女の子は土下座をして言ってきた。そしてそれを真似て他の女の子が土下座した。

ワシの前には同じ髪の四人の女の子の姿がある。


この子達は姉妹。

一番上は元服するほどの年齢で、次は二歳ほど下、次は双子で幼女だ。

幼女の一人はワシに懐いてくるがもう一人は怖がっている。

この子達の村は特殊な伝染病にかかった。

それは水。

鉱山から流れ出た毒素が井戸に流れ込み、それを飲んだ村人が次々と病に侵された。

そしてこの四人が最後の生き残り。

それをあの奴隷商が延命治療を約束してかいとった。

そう事情のある奴隷の事を死んだ事で忘れ去れる為に。


「ゴンベエ、レベッカ、悪いけどこの子達を奴隷にしてくれない?

もちろんゴンベエが奴隷紋を消せることは知ってるけど、この子達には縋る人が必要なのよ」


「そう言われてものぅ、奴隷は好かんのじゃよ」


「お願いゴンベエ!この子達の面倒はわたしがみるわ!

だからお願い!」

リリスが真剣な目をして言ってくる。


「ゴンベエ私からもお願いする。

リリスがこんなに真面目な顔をするのは本当に必要なことなんだと思う」


「僕もそう思うね、あのリリス殿が真面目な顔をするのはただ事じゃないね」


「そうだな、あのリリスがそう言うんだ」


「私はどっちでもいいですよ、お金が手に入らなかったし」


「アルサさん?最近はわたくしもリリスさんほどの技量を手に入れたんですよ?」


「すいません」

アルサ殿がクレアに屈した。


「では主人はリリスという事でよいな?」

四人はコクコクと頷いた。


「ここは?」

もう一人の女の子が起きた。


「ここはワシの竜車じゃ。

どうじゃ具合は?」


「えーとあたしの身体は治ったの?」

やはり記憶までは戻せなかったか。


「そうじゃな、一応身体は治す事は成功した。

すまんのぅ、お主の記憶と心は戻せんかった」


「別にいいよ、あの苦しみから救われたから。

お兄さんが助けてくれたの」


「まあ全ては助けられんかったがのぅ」


「そう」

最後に起きた女の子はワシに抱きついてきた。


「どうしたんじゃ?」


「人の温もり。久し、ぶ、り」

女の子は泣き出した。

この子の記憶を戻せなかった理由は一つ、契約した存在が神と近しい関係にあったから。

大丈夫、いずれその存在もワシが潰そう。


この子は泣き疲れたのか眠りだした。


「フィーライヌ」


「どうした?」


「この子はお主と同じ被害者じゃ」


「ゴンベエ!」


「本当じゃ、この子の記憶にも触れた。

この子は最後の被害者じゃ」


「この子が。そうか、奴は許せないな」


「ああ許せんな」

ワシ達は怒りで満ち溢れた。


行き先は同じらしく迷宮都市との間にある都市。

商業都市ゼーンニ。


ワシらはマドワキの護衛として簡単に都市に入れてもらえた。


「ゴンベエ様ありがとうございます!

これで彼女を連れて行く事ができます!

では忙しいので失礼します」

マドワキは竜車に乗りどこかに行った。


「ねぇゴンベエ。

気になったんだけどあの人って誰を連れてたの?」


「それは秘密じゃ。

この件は関わるのは少し危険じゃからの」


「ゴンベエでも?」


「そうじゃのぅ。流石に国を相手にするのは面倒じゃからの」


「国?」


「そうじゃ」


「じゃあ忘れることにするわ」


「それが一番じゃの」

レベッカは諦めて忘れることしたらしい。


あの馬車に乗っていたのは先日滅ぼされた国の王女。

調べた限りとてつもない美貌で、この商業都市でオークションにかけられるらしい。

現段階で救い出すのは得策ではない。


ワシは宿をとり子供達に服や必要な物を買う。


「ゴベイこれほちい!」

幼女が少し高めの服をワシに見せた。


「こらメリサ!すいませんご主人様」

一番上の女の子がそう言った。


「構わんよ。ローニャも欲しいものがあったら言うんじゃよ」

一番上の子、ローニャの頭を撫でた。


「は、はい」


「じゃあご主人様僕はこれ欲しい!」

ローニャ一つ下の妹のカリンがそう言う。


「良いぞ、似合っておるしの」


「やったぁ!ご主人様金持ちなんだね!」


「まあ小金持ちと言う所じゃの、ん?」

ワシを怖がっていた幼女が羽織を引っ張ってきた。


「こ、これほちいの、だめ?」

目をうるうるしている。


「良いに決まっておるよ。

その髪飾りは良く似合っておるな。ほれこれも買ってあげよう」

髪飾りを見せてきたメリサの双子の妹アリサに、他の髪飾りをつけながら言った。


「いいの?」


「もちろん。ほら遠慮せず服も選ぶか良い。

レベッカこの子を頼む」


「はーい、アリサちゃん可愛い服選んであげる!」

レベッカにアリサを任せる。

流石におなごの店では肩身が狭いから。


「ゴンベエ様はここにおられるか!」


どうやら見ていた未来の可能性の一つが起こったらしい。


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