迷宮都市

「おいちゃん!」


「なんじゃ?」


「あれなに?」


「あれは迷宮都市ガーランスじゃ」

クレアに抱かれているメリサに聞かれたので教えた。


「こらメリサ!ご主人様とお呼びなさい」


「ローニャいいんじゃよ。幼き子にご主人様と呼ばれると悲しくなるわい。

ローニャもおいちゃんで良いぞ」


「い、いえそのような言い方はできません!

私はご主人様の奴隷ですから!」


「でもローニャ姉さんご主人様がそう言うならおいちゃんで呼んだ方が良くないか?」


「カリン!申し訳ありません。

どうかお許しください」

ローニャがカリンの頭を掴み一緒に頭を下げる。


「リリス」


「二人とも頭を上げなさい!

奴隷ならご主人様に不快をさせる行動は控えなさい!

大丈夫よ、ゴンベエはそんな事で怒るほど小さな男じゃないわ。

ほらゴンベエを見て、優しい目をしているでしょ。

大丈夫貴方達はもう幸せになれるのよ」

リリスは二人の顔を上げさせワシを見せる。

ローニャはまだ疑っているがカリンはニッコリ笑いかけてくれた。


「リリス様、私はこの子達を守るため長い間奴隷として過ごしてきました。

申し訳ありません、信じる事ができないのです」


「大丈夫よ、ゆっくりでいいから。

わたしもゆっくり慣れていったって話したでしょう。

貴方とわたしは違うのよ、汚れたわたしと綺麗なあなたと。

だから大丈夫よ」


「リリス!まだそんなこと言ってるのね!

そんなリリスにはこうよ!」


「や、やめてよ、今ローニャをだき、しめてるんだから!

ちょ、ふふふふふもうやめて!」

怒ったレベッカがリリスをくすぐっている。


ローニャはパチパチして笑っているリリスを見ていた。


「入ってもいいのか?」


「当たり前だ!この迷宮都市は来る者拒まず去る者は追わずだ!

この迷宮都市は強いければほとんど許されるから気をつけろよ!」

バリールが聞くと返答がきた。


「なるほどのぅ、フィーライヌ以外の皆はワシから離れるでないぞ」


「ゴンベエ私も冒険者なのよ!一人で大丈夫よ!」


「この迷宮都市にはとんでもなく強い人間達がおる。

その者達の中には粗暴な奴が結構おるんじゃ、その者達にレベッカを傷つけさせるわけにはいかんのじゃよ」


「ゴンベエ」


「安心せいレベッカは発展途上、しかもその者達より才能もある。

お主はこの迷宮都市でとんでもなく成長するじゃろう」


「じゃ、じゃあSランク冒険者になれる!」


「それはお主は次第じゃのぅ」

そう全ては彼女次第。


「それってアレのこと?」


「そうじゃ」


「そうなのね、あと少し待ってゴンベエ」


「よいぞ、他にも強くなる方法はあるからの」

この迷宮都市なら実戦経験も豊富になるだろう。


「はぁ、レベッカ頼むわよ」


「レベッカさん頼みますよ」


「レベッカ僕からも頼むよ」


「レベッカ俺からも頼む」


「ちょっと待って!他の三人は分かるけどフィーライヌさんはなんで?」


「それはレベッカと同じ理由だ」


「ゴンベエ!やっぱり当分お預け!」

怒った顔で言ってくる。


「はぁ」 「レベッカさん」 「僕はいつあの子達に会えるんだろう」 「俺はいつ強くなれるんだ?」


「もう媚薬とか飲ませて無理矢理やったらいいんじゃないですか?」


「リリー」


「ちょっ冗談ですって!

や、やめ!」

馬鹿な事を言うとこうなる事を分かっているはずなのに。

本当に初めて会った時と性格が違う。


「兄貴!この都市一番の宿屋に着きやした!」


「そうか、バリールはやはり一緒には泊まらんのか?」


「へい!俺如きが兄貴達と同じ宿なんて恐れ多い!

大丈夫です俺もAランク冒険者ですから金はありやすから!」


「分かったわい、では皆行くぞ」

竜車から降りるとそれなりの宿のようだ。


「すまんがこの宿で一番高い部屋の頼む」


「お客様申し訳ありませんがご自分に合った宿を取る事をお勧めします」


「ほう、ワシがこの宿に相応しくないと?」


「とんでもございません、ただこの宿に相応しい方は一目見ただけで分かりますと言っているだけです」

どうやらワシら風貌を見て相応しくないと言っている。

無精髭を生やし後ろで結んでこの世界に相応しくない着物を着ているワシ。

冒険者の格好をしたレベッカ。

娼婦のような格好をしているリリス。

一般的な服を着ているクレア。

貴族とバレないように少し貧相な鎧を付けているアルミール殿。

リリスのせいで服が乱れたアルサ殿。

そして少しだけぷっくりしだした五人の子ども達。


「では遠慮することにするかのぅ、

皆いくぞ」


「ちっ初めてからくんなよ」

皆には聞こえないだろうがワシには聞こえた。

対応した男は選択を間違えた。


「どれ、どうしようかのぅ」


「権兵衛、僕の知り合いの宿でいいなら紹介できるよ。

まあ少し貧相だけど」


「アルミール殿の知り合いか、なら大丈夫そうじゃの」


「本当は提案したかったんだけど、この子達に豪華な宿も見せたかったからね」


「アルミちゃんすき」


「ありがとうメルサちゃん」


「アリサもすき」


「ありがとうアリサちゃん」

クレアの次に意外にもアルミール殿に懐いている。

リリスはお父さん的な立場なので少しだけ嫌われている。

嫌われ役をやるリリスはやはり優しい。


「おい!お前いい女達を連れているじゃねーか!俺達にも分けろよ!」

アルミール殿の案内で歩いていると冒険者と思われる男達に囲まれた。


「なんじゃお主ら?」


「俺達はAランクパーティー!

その名を[暴虐の竜]!

逆らわない方が身の為だぜ?」


「身の為のぅ、どれフィーライヌ任せたぞい。レベッカよく見ておくといいぞ、お主と同じ剣使いじゃ」


フィーライヌは剣を抜き男達に向かっていく。

男達も己の武器を抜いた。


「皆は子ども達の目を隠して耳を塞いで周りを囲みなさい。

妖術『結界』

その中に入れば大丈夫じゃ」

結界は名の通り結界を張る。


「すごい」


「そうじゃろレベッカ。

あれが己の持つ才と真剣に向き合い努力した結果じゃ。レベッカがいずれ到達し超える強さじゃ」

フィーライヌは相手の剣を最小限の動きで避け、死なないように柄の先で攻撃し気絶させている。

その姿はまるで舞を舞っているようだ、

女性特有の開いた腰を軸に重心移動していて、剣は重心移動した力を乗せて放たれている。


「な、何者だ!俺達はAランクパーティーだぞ!お前ら人質を取れ!」


「それは無理じゃのぅ」

自称Aランクパーティーは結界に阻まれて皆に触れる事すらできない。


「ふぅ。終わったぞスケさん」


「お疲れ様じゃな、さてこいつらはどうしようかのぅ」


「おいお前らが戦闘していた奴らか?」

どうやら衛兵のような者達が来た。


「そうじゃが、この都市では強ければなんとかなるんじゃろ?」


「その通りだ!なるほどこいつらに絡まれて返り討ちにしたんだな!


ありがとう君たちこいつらは女性に酷いことしたと訴えがあったんだが、Aランクパーティーだから手が出せなくてな。


よしお前ら手錠をかけて詰所に連れてくぞ!」

衛兵らしき者達は男達を連れて行った。


「フィーさん!すごいですね!

ゴンベエに聞いていた百倍はすごかったよ!」


「あ、ありがとう」

フィーライヌはレベッカに両手をブンブンと上下に揺らされていた。


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