武器

「権兵衛、どうこの宿?」


「泊まる予定じゃった宿より居心地は良いのう。まるで実家に帰ったときのようじゃのう」


「そうだろう!この宿は迷宮都市で唯一和む場所なんだ!」


「アルミール殿は来た事があったんじゃな」


「そりゃあ来るさ、僕の力を試すためにね!」


「わたくしも一度だけ来た事がありますね、力を求めて。

ですがその頃の冒険者はもっとやばかったので大変でした」

酌をしてくれるクレアが言う。


「へぇークレアが力を求めるなんて意外だね」


「レベッカ、人にはいろんな事情があるのよ」


「リリスはなんでか知っているの?」


「知っているわよ、でもレベッカには少し早いわね」


「ねぇー私これでも25歳なんだけど?

なんでリリスはいつも子供扱いするの?」


「そうねぇ、言動が子供っぽいからかしら」


「僕もレベッカが八つも年上だと聞いた時は驚いだよ」


「私も年上だと聞いた時は驚きました」

クレアとレベッカは五つ違い。


「俺も」

フィーライヌは六つ違い


「私も驚きました」

アルサ殿は一番年上でレベッカと三つ違い。


「ゴンベエは年相応だと思うよね?」


「そうじゃのぅ、おなごは年齢など気にせずに自分らしく生きるのが一番いいぞ、

じゃからあまり気にするな。

皆が違うからこそいいんじゃよ、

子供扱いではなくレベッカ扱いじゃよ」


「なんか誤魔化された気がするけど、

ゴンベエがそういうならレベッカ扱いされておく」

レベッカはワシのおつまみを頬張る。


「それでクレアは決まったのかのぅ」


「はい、わたくしは弓にします」

戦えない組を戦えるようにする為に合いそうな物を幾つか提案しておいた。


リリスは短剣、弓、棍

リリスは短剣を選んだ。


アルサ殿は槍、剣、盾

アルサ殿は槍を選んだ。


クレアは弓、銃、盾

今日クレアは弓を選んだ。


「銃もいいとは思ったんですけど、わたくしのスキルは弓の方が合ってる気がしますので」

クレアのスキルは鷹の目。

周囲一帯を立体的に見れるらしい。

銃は一直線にしか飛ばないが弓は使い方によって曲げることができる。

障害物などに阻まれても弓なら届くと考えたのだろう。

それに弓武術と呼ばれるものを両親から習っていたらしい。

弓武術とは接近戦を主とした武術と言っていた。


「じゃあわたしが前衛でアルサが中衛でクレアが後衛でいいわね」


「それはどうかのぅ」


「違うのゴンベエ?」

困惑した顔でリリスが聞いてくる。


「武器で判断するのはちと勇み足じゃのぅ。

ワシならアルサ殿が前衛、クレアが中衛、リリスが後衛じゃ」


「ゴンベエ様、わたくしが中衛ですか?」


「そうじゃ。クレアはこれから接近戦と味方の援護、そしてリリスの護衛を学んでもらう」


「リリーの護衛ですか?」

クレアも理解できないようだ。


「そうじゃ、リリスお主には呪術を教えよう」


「呪術?」


「お主の特性。つまり心に潜む深い闇、厄運、後悔の念それを元に使う呪いじゃ」


「ゴンベエそれなんか怖いわ」


「大丈夫じゃ、使いこなすことができれば二度とお主には悪いことは起きん」

呪術、自らの厄運や負の気を操る、それを使いこなせば自ずと何をすれば悪いことが起こるか分かるようになる。

つまり自らを襲ってくる厄災を払い除ける。


「本当に!」


「本当じゃ」


「あのー私が前衛は嫌なんですけど?

私の本業は商人ですし」


「安心せい、アルサ殿は三人の中で最も戦闘の才能がある。レベッカと同じくらいかのぅ」


「ゴンベエ様それは冗談が過ぎるのでは?」


「なら明日はそれを証明してやるわい」

明日ワシらはダンジョンに向かう。

アルサ殿の本当の姿を教えてやろう。


「まあ戦闘ができるようになれば商品を自分で取りに行けるから嬉しいですけど」


「あのーゴンベエ様私達は戦わなくていいんですか?」


「わたしもゴンベエのためにがんばるよ?」

ローニャとワシが名付けた桜が聞いてきた。


「お主達は今は戦わんでいい。じゃがいずれは己を守る為に戦えるようにしてやるわい」


「で、ですが」


「ローニャ、ご主人様の命令は絶対でしょ?」


「はいリリス、、、お母さん」

リリスは自分のことをお母さんと呼ぶように命令している。

リリスはこの子達の母親代わりなるつもりだ。


「よろしい!ほらこれをお食べ」

リリスが注文していた料理が来たので五人にも食べさせる。

本当に優しいおなごだ。


「ねぇ権兵衛僕には何か教えてくれないのかい?」


「アルミール殿はまず自分の限界を知ってからじゃな」


「一応分かってるつもりだけど」


「まだまだじゃな、随分と格下ばかりと戦ったせいで本来の力が出せてないぞ」


「そうなんだ、分かったもう一度自分を見つめ直してみるよ」


「それがいい」


「レベッカ、言わんでも分かるな?」


「うん、フィーさんを参考にして戦えばいいんだね」


「そういう事じゃ。

フィーライヌ、レベッカを頼んだぞ」


「承知、だかレベッカも頼んだぞ」


「えーと、はい」

いつものようにレベッカが皆にからかわれ楽しく酒を飲んだ。

夜も遅くなったので解散して、部屋のベッドと呼ばれるところに寝転がる。


「どれ久しぶりにお主に会えて嬉しいぞ」


【そうか妾は特になんとも思わん。

それでなんのようだ?】


「そう邪険にせんでもええじゃろう、

この前面白い酒を手に入れたんじゃよ。

これをやるから今日は添い寝してくれんか?」


【ほう、ドラゴンの肝漬けか】


「いまはドラゴセルと呼ばれておる」

王太子も本当に欲しかったわけじゃないので、秘密の場所のような部屋から拝借した。


【いいだろう。しかし随分と呼ぶのが遅かったな】


「昨日まで旅をしていたからな、

なんじゃワシが恋しかったのか?」


【そ、そうではない。ただ少しだけ寒かっただけだ】

旅に出る前は頻繁に呼び出し酒を貢いで添い寝を要求していた。


「そうか、じゃあおいで森の主よ」

大人しくワシの腕の中に入ってくる。


【エリナーデ】


「そうか、エリナーデやはりお主の体温は心地よいのぅ」


【本当に変わった男だ、妾も暖かい】

いつもワシとは逆の方を向くのに今日はワシの胸に顔を押しつけてきた。

ワシは嬉しくなり髪を撫でながら眠りについた。

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