王太子

それからの流れは簡単だ。

王太子がシャスン公爵を呼び出し、違法行為をした証拠であるワシらを突きつけた。


もちろんシャスン公爵も知らぬ存ぜぬを繰り返していたが、王太子が今まで集めた別の証拠を突きつけると大人しくなった。


集めた証拠の半分は盗賊が保管していた、シャスン公爵と違法奴隷商の取引記録だった、王太子を呼び寄せるついでにそれを付属して送っていた。


さらに迷宮都市にあるシャスン公爵家の屋敷を調べられさらなる証拠が出た。

こうして全ての公爵家の屋敷を調べられる事が決定した、その結果シャスン公爵家は取り潰された。


「お主は帰らんでよいのか?」


「せっかく迷宮都市まで来たんだ、暫く休暇を楽しむよ。それに余がいないと分かっている兄上達を泳がさないといけないからね」

足を組みながらコップでお茶を飲み椅子に座る王太子がいた。


「一掃する気かのぅ?」


「もちろん、兄上達は野心が強すぎる。

長男であるハルバート兄上は母の母国と組みこの国を植民地にする気だ、次男のロンドルス兄上は宰相と手を組み裏からこの国を操る事を企んでる。

三男のガルシア兄上は武芸の才能がありすぎて、隣国と戦いたいと過激派と手を組んでいる。四男のデール兄上は少し意味合いが違うが嫁のいいなりで、人体実験や怪しげな事をやっている、それを使いこの国を支配するのがあの女狐の狙いらしい。


この国の平和を保つには兄上達は必要ない。

特に一番危ないのは女狐だ、あれは余でも恐ろしい」


「そうじゃろうのぅ、人を人として見てないからのぅ。じゃがこの国でもっと恐ろしいのはその者ではないぞ」


「ゴンベエか?」

ニヤリと笑いながら答える。


「かっかっかっかっ!その答えは考えなかったのぅ。じゃかそういう意味では無い、強さでは無く、その行いが恐ろしいんじゃ。

女狐のやろうとしている実験を既に成功させている者がおるんじゃ」


「なんだと!どの実験だ!」

立ち上がり聞いてくる。


「生贄による不老不死、他人を依代にした悪魔の召喚そしてその悪魔の力を己へ付与、そして他人の記憶の変換。

一番恐ろしいのは悪魔の人間化かのぅ」


「最初の三つはなんとなく分かるが、最後はどういう事だ?」


「そのままの意味じゃよ、本来悪魔は肉体を持たない、だから契約することで現世に留まる事ができるんじゃ。その悪魔に無理矢理肉体を与えて現世に留める、つまり契約という縛りもなしに自らの力を使えるようになるということじゃ」


「ではこの国に人間の皮を被った悪魔がいて、自由に力を使える。それはやばくないか?」


「やばいんじゃよ、契約によって本来の力を制限される悪魔が制限無しに力を使うんじゃからのぅ」


「、、、、、ゴンベエは何故それを知っている?」


「そうじゃのぅ、ワシのスキルと言った方が分かりやすいかのぅ。それとその実験の研究の犠牲者が二人ほどワシの仲間じゃ」


「そうか、その実験をした者はどこにいるか分かるか?」


「王都」


「何だと!こんなところで休暇している場合ではないではないか!」

コップを地面に投げつけ王太子が言う。


「戻ってどうするんじゃ?何か手はあるのかのぅ」


「それは、、、、、」

王太子は下を向いて考えている。


「そういえばワシはSSSランクダンジョンを制覇したんじゃが、この国から褒美などでんのかのぅ?」

ワシはニヤリと笑いながら聞いた。


「褒美?、、、、そうか!ゴンベエ一緒に王都に来てくれ!ゴンベエなら何とかできるんだろ?」


「内緒じゃ、じゃがワシの喧嘩を買ってくれるならなんとかなるのぅ」


「喧嘩を買う?」


「こっちの話じゃよ、そうじゃ出発は三日後にしてくれるかのぅ、最後の仕上げが残っておるんじゃ」


「それは構わんが、何をする気なんだ?」


「ワシの逆鱗に触れた者がおってのぅ、仕置きをせんといかん」


「SSSランクダンジョンを制覇したゴンベエの逆鱗に触れる者がいるとは、馬鹿だな。

では余から一言好きにしろ、その馬鹿共はこの国に必要ない」


「ふむ、お主がワシより強かったらワシはお主に仕えていただろう」

瞬時にワシの考えている事を言い当てるとは驚いた。


「それはもったいない事をした、だがゴンベエより強くなるのは無理だな」

素直に己の非力を認めた。


「ふむ、お主にこれをやる」

次元袋から一つの書物を出し、王太子に渡した。


「これは?」


「それは百獣の書、ワシがそれなりに強いと感じた獣が百体入っている。

お主は自身はそれ以上強くはなれんが、それを使いこなせば一人で一国と渡り合えるぞ」


「、、、、これはとんでもない代物ではないか?」


「どうじゃろうのぅ、その中に入っている獣はお主を認めないと出て来んからのぅ、まあ気長にやるといいじゃろ。

ん?既にお主を認めた獣がいるぞ」


「グリフォン?待てこれはあの伝説上のグリフォンか?」

本の一ページが光り、王太子がそこを開くと、グリフォンの絵と名前が描かれていた。


「どうじゃろうのぅ、出してみればいいんじゃないかのぅ」


「どうやるんだ?」


「そうじゃった、心の中で出て来いと思いながら名を呼ぶんじゃ」


「分かった、『グリフォン』」

グリフォンが描かれていたページがさらに光り輝き、その光が本から出て、グリフォンの形になったあと光りは収まった。


「ほ、本物だ、何と美しい姿なんだ、おっと。

なかなか可愛い奴だな」

グリフォンは王太子の顔に嘴を優しく擦り付けた。


「気に入ったなら名前を付けてあげると良いぞ、力も上がるからのぅ」


「では今日からラプスト、この国の古い言葉で始まりを意味する」

グリフォンは大蛇に名前を付けたように少し光り輝いた。


「ちなみにそのグリフォンは単純な戦闘では三番目に強い。そのグリフォンに認められたじゃ、きっとすぐに下位の者にも認められるじゃろう。

じゃがグリフォンより強い二体は別格じゃからそのつもりでおると良いじゃろう」


「別格、、、、伝説ではドラゴンを蹂躙したと言われるグリフォンより強い存在。

それは逆に恐ろしいな」


「かっかっかっかっ!安心せい、お主の命令に必ず従うからのぅ。それとその本はお主とお主が譲渡した者しか使えん」


「つまり余の後継者にも使えるようにもなるという事か?」


「そうじゃ、代々受け継いでくれると嬉しいのぅ」

顎の髭を触りながら言う。


「当たり前だろ、受け継がない馬鹿はいない。だがガルシア兄上のような戦争を起こそうとしている奴に渡ると大変だな、何か考えなければ」


「そこは大丈夫じゃ、お主が望めば死後その本の番人になり、使う者を見極められるからのぅ。まあ望めばじゃが」


「おそらく望むだろうな」


「ゴンベエ殿!その番人は使用者以外にはなれないのだろうか?」

王太子の後ろにいたバチスタに聞かれた。


「なれなくはないが、その使用者と深い信頼が無くてはなれん」


「では私が番人となりましょう王太子殿下!」

王太子に跪き宣言する。


「バチスタなら安心して任せられるかもな、まあその時になったら二人で話し合おう」


「はっ!」

バチスタは納得したのか頭を下げた。


「ではワシは行くことにする」


「ちょっと待ってくれ」


「なんじゃ?」


「そういえばと思ってな。

余の名前は、

アンドレア・フォン・ドラベルム。

アンドレと呼んでくれ、ゴンベエとは対等に付き合いたい」

手を出してきた、南蛮風に言うとしぇいくはんどだろう。


「いいじゃろうアンドレ、ドラベルム昔の言葉で竜と交わる者じゃったな」


「いや正確に言うと竜人と交わる者だな、余の祖先である初代国王は竜人と交わった者から産まれた人間で、竜人の力を持っていたらしい、まあ本当かどうかは分からないがな」


「なるほどのぅ、じゃからこの国の王族の紋章は赤い竜なんじゃな」


「よく赤い竜って分かったな、これは国家機密なんだぞ?」

アンドレの左胸に竜の顔の紋章があった。


「簡単じゃよ、王位継承権があるのは赤い目を持つ者だけなんじゃろ?」


「なるほどそこから推理したのか、我がドラベルム王国にとって赤は特別だからな」


「そうじょろうのぅ、ではワシは今度こそ行くとする」

手を離し王太子に背を向ける。


「では三日後に会おう」


「妖術『幻界』」

ワシは後ろ向きに手を振った後幻界に入った。


次の日、王都、公爵領、迷宮都市で捕われていた公爵とその部下の男達は腐乱死体となっていた。


そしてこの国の至る所でも腐乱死体が見つかったそうだ。

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