牢屋

「やはり牢屋に入ることになったのぅ、今回は飯は酷いのぅ」

前回牢屋に入った時は、ハルバス殿のご厚意で飯はちゃんとした物だったが、今回は犯罪者として入っているので他の犯罪者と同じ飯だ。

汁に具材はなく、硬いパンと干し肉のみ。

もちろん服も囚人服に変えられ、ワシの物は全て没収された。


「はぁ、早く来てくれる事を願うかのぅ」

出された物は全て食べる事を信条としているので、黙って食べる。

何故ワシが牢屋に入っているかというとあやつのせいだ。

そうシャスン公爵。


ワシは桜に起こされて食堂で皆と食事をとっていた、そして今日の予定を決めていると宿に武装した兵士が沢山入ってきた。


「お前がゴンベエだな!シャスン公爵様を暴行した容疑で捕縛する!抵抗すればどうなるか分からんぞ!」


「我が主がそのような真似する事はない、何かの間違いだ!」

「マイマスターはそんな無駄な真似はしない、何かの間違いだろう?」

ファルシーと大蛇が殺気を込めた目を向けて言った。


「よせ」


「「はっ!」」

二人は殺気を止め、一瞬でワシの背後に立った。


「兵士殿それは確かな罪状だろうな?あとで間違いでしたではすまんぞぅ?」


「お、脅す気か!たとえこの都市が強者を優遇するとしても、公爵家に逆らう者は許されん!大人しく捕縛されろ!」


「ふむ、ええじゃろう」


「ゴンベエ!」


「大丈夫じゃよレベッカ。既に手は打ってある」


「レベッカ、ゴンベエが大人しく捕まるって言ってるのよ、信じなさい」


「ゴンベエとリリスが言うなら信じる」


「いい子じゃ」

「いい子ね」

レベッカにワシは頭を撫で、リリスは軽く抱きついた。


「取り押さえろ」

刀をレベッカに預けたワシは金属の輪っぱをかけられ、連行された。


そして今に至る。


「おい新入り!何普通に食べてんだよ!

さっさとそのパンを寄越しやがれ!」

坊主頭の男が手を出して来たのでペチンと手を叩いた。


「人様の食事に手を出そうとするとは、躾ができてないのぅ」


「はぁ、お前らこいつにここのルールを教えてやれ」

ここの牢屋の頭と思われる奴が命令した。


サンジェシカの牢屋は一人ずつ入っていたが、この都市の牢屋は複数の人が入れられていた、だいたい十五人ぐらい。


迷宮都市らしくその牢屋で一番強い者が仕切っているらしい。


「それでお主もワシとやるのかのぅ?」

頭以外をしずめたワシは頭に問う。


「、、、、参りました」

顔に汗を大量にかいた頭が答えた。


「ほう、どうやらきちんと目利きはできているようじゃのぅ。無駄に体力を使わず済んだわい、それでお主はなんでここにいるじゃ?

お主はここに入るほど悪い人間じゃないじゃろう?」


「お前に関係ないだろう」

そっぽを向いて答えてきた。


「ワシはシャスン公爵のせいでここに連行された。もちろん無罪じゃよ」


「お、お前もか!」

ワシの方を驚いた顔をした言った。


「やはりそうじゃったか」


「ああ、俺はあの野郎に攫われた娘を助けに行ったんだ、だが娘を助けだす前に捕まってな。もう十年以上もここにいる」


「じゃからそのような諦めた目をしておるんじゃな」


「そりゃそうだろう、今助けに行っても殺されているか壊されているに決まってる。

嫁も娘が産まれた時に死んだ、もう生きている意味がない」


「そのわりにはこんなところで裸の大将をやっているんじゃな」


「ここにいる連中は俺の娘を助けだそうとして捕まったんだ、見捨てるわけにはいかねーよ」


「いい連中じゃのぅ」


「ああ、自慢のパーティーメンバーだ」

連中を見た後下を向いた。


「お主の娘の名前はシャリーじゃろう?」


「何故それを知っている!」

頭はワシを向き叫んだ。


「かっかっかっかっ!良かったのぅ、その娘は無事に生きてるぞ、まあここにはおらんがな」


「ど、どこにいるんだ!」

ワシの囚人服を掴み聞いてくる。


「サンジェシカじゃ、おそらく領主の屋敷でメイドとして働いておる」

アルミがそう言っていたのを思い出す。


「本当なのか?」


「お主の名前がガルバテならば」


「俺の名前はガルバテだ。

そうか、無事に生きていたか」

手を離しワシの目の前で座ったガルバテは左手を顔に当て涙を流した。


盗賊の拠点でクレアとシャリーは仲が良く、いろんな事を話したらしい。

その中に公爵家に攫われて違法奴隷商に売られ、その違法奴隷商が盗賊に襲われたので盗賊の拠点にいると。


「お主はここを出たあと行ってみるといい、

いい女に育っておったぞ」


「当たり前だ!俺の嫁が命を落としてまで産んだ子供だ!いい女以外になるもんか!」


「そうじゃろうのぅ、じゃか早く行かんと婚姻の儀に間に合わんぞ」


「ど、どういうことだ!まだ娘には早い!」

座っていた頭は立ち上がり叫ぶ。


「何を言っておるんじゃ、攫われた時の歳は十二じゃから分かるが、もう二十三じゃぞ?

遅いくらいなんじゃないかのぅ?」


「くそ!誰だ俺の可愛いシャリーを奪っていく奴は!」


「領主の息子の部下のタウロスという青年じゃな、それ以上は本人に会ってから知るといい」


「さっきから行くとか会うとか言ってるが、俺がここから出られる保証なんてないぞ?」


「大丈夫じゃよワシらは無実、いやお主らは多少罪はあるが、十年以上も入るほどの大罪を犯したわけじゃないじゃろう、ワシの知り合いが来てくれればすぐに出られるぞい」


「知り合い?」


「そうじゃ、おそらくじゃが三日もすればくるじゃろう」

ワシの言葉に疑いの目を向けてくるガンバテを無視して汁を一口飲む。


「薄いのぅ」




そして予想通り、三日後ワシの知り合いが騎士を連れてワシらの牢屋の前に来た。


「かたじけない」


「いやこちらもすまない事をした、噂は聞いていたんだか証拠がなくてな。

ゴンベエや君達のおかげで奴を潰せそうだ。

だがこれは貸しだぞゴンベエ」

ここでいう貸し急いでここに向かってくれた事。


「分かっておる、じゃかこちらも貸しじゃぞ?」

ここでいう貸しはワシの交渉材料の価値がとんでもない事。


「ふっ一般人が余に交渉をもちかけるなど考えもしなかった。

だがとても魅力的な交渉材料だったよ」


「そうじゃろう、お主が持つに相応しいじゃろう」


「余以外の者が持てばこの国は荒れるからな。まあそんな事はあとで話そう、バチスタ」


「はっ!」

バチスタと呼ばれたあの騎士が牢屋の鍵を開け、入り口を開けた。


「お主ら出るぞ」


「ゴンベエ、お前の知り合いはまさか」


「そうじゃよ、この国の王太子じゃ」

ワシの言葉に牢屋の中の連中が固まった。

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