国王
ワシはあぐらをかき、握った両手を床に当て頭を下げた。
「何をやっている!早く跪かんか!」
「お待ち下さい!この者はこの大陸の出身ではございません、この国の礼式を知らないだけなのです!」
アルミが宰相に向かって叫んでいるようだ。
「貴女はサンジェシカの娘だな、いくら貴族の娘だとしても許可もなく発言するのは無礼であろう!」
「余か許す、ゴンベエは余の友人だ。
いいな宰相」
アンドレが庇ってくれたようだ。
「かしこまりました王太子殿下。
それでは国王陛下の御入場です」
扉が開く音がした後三人ほど歩く音が聞こえた、そして一人の人間から凄まじい圧をかけられた。
「おもてをあげよ、今回の功績により一度目で顔を上げる事を許す」
ワシは素直に顔を上げると、圧をかけてきた男が鋭い目をしてワシを見ていた。
「ふむ、アンドレアの言う通り油断ならん男のようだな、この度SSSランクダンジョン制覇、感謝する。
君が制覇しなければきっと、迷宮都市ならびこの国は無くなっていただろう、本当によくやってくれた」
「ありがたきお言葉」
ワシは頭を下げて言った。
「それで一つ聞きたい、何故余ではなく、アンドレアにコアを渡したのだ?」
国王の言葉で謁見の間と呼ばれる、この場にいる貴族共が騒ぎだした。
「不敬だ!」「陛下を蔑ろにするとは」
「これだから冒険者は」「どうせ王太子殿下に媚びを売ったんだ」「ふっ愚かな平民だ」
などと聞こえる。
「黙れ!余はこの者に聞いているのだ!」
ワシにかけていた圧をここにいる貴族達にもかけた、かけられた貴族は顔を青ざめ黙った。
「お答えいたそう。単純でございます、陛下とワシが出会ってなかったからでございます」
「では今は余に渡してもよいと考えるか?」
「どうでしょう、陛下とワシが王太子より会わなかったのはコアが持つべき人を選んだのではないかと、ワシは思いますのぅ」
「コアが選んだか、ではアンドレアから余が奪うのもコアが選んだという風になるのかのぅ?」
さらに今度はワシの知らない圧をかけてきた、おそらくスキルと言うやつだろう。
「なるほど、自分の子供が友人から渡された贈り物を奪うとは、この国の王も大した事ないのぅ」
ニヤリと笑いながら答える。
「貴様!国王陛下にそのような事を言うなど許せん!ここで殺してくれる!」
おそらくこの部屋でワシとアルミ以外を除いた者の中で、一番強い男が剣を抜きワシのところに歩いてきた。
「おい、いくら騎士団長でもそれ以上近づけば殺すぞ?」
アルミからとてつもない殺気が謁見の間に広がり、殺気になれてない貴族達は泡をふき倒れた。
「き、貴様!何をしたか分かっているのか!」
冷や汗を垂らしながらワシに向かって来た男が言う。
「もちらんだ、僕は自分の旦那様に手を出す輩は殺すと決めているんだよ。
それにSSSランクダンジョンを制覇した男だよ?君程度で勝てると思っているのかい?」
「アルミ、気持ちは分かるがよせ」
貴族のアルミと元貴族のフィーヌは仲がいい、だから事情は知っている。
本当はすぐに動きたいのを必死に止めている、仇を打つのはフィーヌだからと。
「ダマラスキ下がれ」
「はっ!」
騎士団長は言われた通り下がるが、アルミをものすごい顔で睨んでいる、もちろん殺気をこめた目で。
「ワシのおなごにそのような殺気を当てるのはやめてもらおう」
「ひっ!」
ワシの軽い殺気を受けた騎士団長は青ざめ尻餅をついた。
「ゴンベエ、勘弁してもらえるか?これでもこの国一の騎士なんだ」
「いいじゃろう、騎士団長殿命拾いしたのぅ」
アンドレの言葉でワシは殺気を消し国王に目を向ける。
「全く父上はお遊びが過ぎます、言ったでしょうゴンベエは余達の物差しではかれない化け物だと」
「そうだな、まさか騎士団長までも怯えさすとは考えなかった」
「はぁ、ゴンベエ父上がすまない。宰相続けよ」
アンドレは軽くワシに頭を下げた。
「かしこまりました。
SSSランクダンジョン制覇の褒美に冒険者ゴンベエには勲章が与えられる。
この国で二番目の勲章[赤竜炎章]を!」
宰相がそう言うと意識を保っていた貴族はざわめいた。
「鎮まれ、まだ続きがある。
巫女様より恩賞として巫女様との謁見の許可がでている!さらに冒険者連盟より白金貨100枚の報酬、さらに国王陛下より一代限りの名誉公爵を与えられる」
「ふむ、名誉公爵はよいからこの子の父親の爵位をあげて欲しいのぅ」
「いいだろう、王太子の権限でサンジェシカ伯爵を侯爵に陞爵させよう。
他に欲しい物はあるか?」
「一つだけ欲しい物、いや行きたい場所がある。アンドレは分かるじゃろう?」
「目的は分からないが行きたい場所は理解した。これは貸しだぞ?」
「それは行ってみないと分からんぞ」
「待て、余の許可なくあそこへは入れんぞ」
どうやら少し遅くなったが国王は理解したらしい。
「父上、シャスン公爵を潰した功績を使わせてもらいます」
「お前がそこまでは入れ込むとは以外だな、よかろう許可してやる」
「ありがとうございます父上」
「ではこれで謁見は終了とする」
ワシ達はこの謁見の間を案内される形で出て行った。
「ねぇ権兵衛すごい怖い顔で笑ってるからやめてくれると嬉しいんだけど」
「すまんのぅアルミ、つい嬉しくなってのぅ」
「そんなに巫女様に会えるの嬉しいの?レベッカにまた怒られるよ?」
「そういえば巫女と会えるらしいのぅ、
今ワシが嬉しいのはまた強者と戦えることじゃよ」
「SSSランクダンジョンを制覇した権兵衛が強者と言う相手かー、僕も見てみたいなぁ」
「無理じゃな、今のお主じゃ意識を喰われてしまうわい」
「そっかぁ残念」
「かっかっかっかっ!安心せいお主はその強者よりはるかに強くなるからのぅ。
今はその時を待つんじゃ」
「権兵衛がそう言うならそうなんだね、でも少し悔しいや。
あれだけ力の差があったのにみんなに追いつかれちゃったからね」
「そうじゃのぅ、その気持ちが大事じゃよ」
アルミは冷静に自分と相手の力量を理解できるようになった、それがこの子が聖剣を抜いた時に恐ろしい力になる。
もし完璧に聖剣の力を使いこなしたら、ワシでも倒すのに時間がかかるだろう。
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