クレア
「どうご主人様?」
「たいしたもんじゃ、間違いなく美味い」
「じゃあ!」
「約束通りカリン専用の包丁を作ってやろう」
「やった!!」
カリンは椅子から降り両腕を上げながら飛び跳ねた。
「カリンみんな食事中なんよ、大人しく椅子に座りなさい」
「はいリリスお母さん」
「ねぇ君の名前はカリンっていうの?」
「うわっびっくりした、そうだけど」
音を立てずにカリンの側に来たヴラに言った。
「ふーん、ねぇカリン僕の眷属にならない?」
「眷属?」
カリンは首を傾げた。
「ヴラ!ごめんなさい気にしないで欲しいわ、ヴラその話は今はやめなさい」
「はーい、じゃあカリン僕とお友達になってよ?」
「友達?いいよ!」
「ありがとうボクの名前はヴラ、よろしくね」
「よろしく!」
二人は握手してニッコリと笑いあった、だがヴラの目は獲物を狙う狩人のように見えた。
「ねぇゴンベエ」
リリスが耳打ちをしてきた。
「分かっておる、大丈夫じゃよ二人なら」
「ふーん、お母さんまだ子離れしたくないんだけど」
「大丈夫じゃよ、当分先じゃから」
「ん?どうしたんじゃ?」
服を引っ張られた方を見るとメリサとアリサがいた。
「メリサも」「アリサも」
「そうじゃのぅ、野菜を全部食べられたらご褒美をあげよう」
それを聞いた二人は席に戻り顔をしかめながら野菜を頬張った。
「ゴンベエ、二人ならなにあげるの?」
「二人はレベッカと逆の才じゃからのぅ、杖でもやろうかのぅ」
聞いてきたレベッカに答える。
「ゴンベエって本当になんでもわかるんだね」
「なんでもじゃないがある程度ならなんとなく分かるだけじゃよ」
ヴラ坊と同じような事を言ってきたアルミール殿に答える。
カリンとヴラ坊が仲良く喋り、ミラさんが皆と仲良く話しているのを見ながら夕食を食べた。
夕食を終えカリンに渡す包丁とメリサとアリサに渡す杖を作成し、最後の仕上げをしていると部屋の扉が叩かれた。
「ゴンベエ入るわよ」
リリスはワシの返事を待つ事なく扉を開けて入ってきた。
「ゴンベエ今日でわたしの独占は終わりよ、今日からはクレアをよろしく頼むわ」
クレアの両肩を後ろから掴みリリスが言ってくる。
「リリー」
「大丈夫よクレア、ゴンベエなら全て受け入れてくれるわ」
「でも、、、、」
「はぁ、ゴンベエする前にクレアの話を聞いてあげて」
「それは構わんが」
「じゃ、わたしは部屋に帰るからクレア勇気だすのよ!」
「リリー!!」
リリスはクレアを部屋に押し入れた後扉閉めた。
「ゴンベエ様、、、」
「そんな不安そうな顔をせんでもええ、ほらここに座るとええぞ」
ワシは椅子を次元袋から取り出し、座るように言った。
「はい、ゴンベエ様」
「それで何をワシに話したいんじゃ?」
おどおどしながら座ったクレアに聞いた。
「それは、、、以前盗賊の拠点でリリスに話した事を覚えてますか?」
「お主の家族が魔物に殺され、遺産が親戚に奪われた話かのぅ?」
「はい、実を言うと少しだけ違うのです、ですのでわたくしに起きた悲劇を聞いていただきたいのです。
その前にゴンベエ様はわたくしの正体を知っていますか?」
「エルフじゃろ」
「やはりお気付きだったのですね」
「お主の体を元に戻した時に分かったんじゃよ」
「『解』」
クレアの耳は伸び尖っていき、そして髪が金色に変わった。
「よく意識を失ってもその魔術が解呪されなかったのぅ」
「この魔術はわたくしを助けてくれる者と出会うまで解けないようにしていましたので」
「助けるのぅ、それはクレアを探している奴か?」
「さすがゴンベエ様です、では今からお話しする事に嘘偽りはございません。
今から約百二十年前になります、わたくし達エルフは人間に見つからないように隠れ里と呼ばれる場所で平和に暮らしていました。
隠れ里のある場所は森に囲まれ結界が張られ、魔物などの脅威もありませんでした。
あの日以外。
あの日は里で新たな族長を祝う宴がひらかれ、音楽や踊り子、美味しい料理に美味しいお酒、皆楽しくしておりましたが、急に結界が消滅したのです。
そして奴が現れました。
世界を守るはずの神獣フェンリルが。
神獣と呼ばれているのですから、最初は親族長がフェンリルと交渉を始めましたが、そのかいはなく新族長はすぐに殺され、
そして次々と仲間達が殺されていきました。
わたくしは母様に連れられ森の中にある洞窟に避難しました、母様が様子を見てくると言って里の方に行きました。
次に母様に会ったのはフェンリルの口に咥えられ、血だらけの姿でした。
母様を食べ終えた後フェンリルは言いました。
『百年逃げきれれば返してやろうクレアーレ』
わたくしは名前を知られていることに疑問を感じ、何故知っているかを問うと、フェンリルの姿はエルフの姿に変わりました。
そのエルフは族長候補と言われていた、叔父でした、叔父が言うには禁呪を使ってフェンリルの姿を借りたんだそうです。
代償は自分の精霊を邪神と呼ばれる存在に捧げることでした。
そしてわたくしに譲渡されるはずだった母様の精霊を奪ったのです」
「つまり遺産とはその母親の精霊ということか?」
「はい、エルフは死ぬ時に我が子に精霊を譲渡し、我が子の精霊と譲渡した精霊を融合させて力を引き継いできたのです」
「不思議な種族じゃのぅ、ところで百二十年前ということはもう返してもらったのか?」
「いえ、叔父は力に支配され自我を失いました、もうあれは神獣の力を持ったただの魔物です。もう約束も覚えてないでしょうが、何故がわたくしを追ってくるのです。
魔術は見つからないようにするためにかけてました。
母様の精霊を取り返す方法はただ一つ討伐することです、
ゴンベエ様わたくしはご存知の通り神獣を倒す力はありません、ですから討伐できそうな人を探していたのです。
そしてレッドドラゴンを一撃で倒したと聞いた時は確信しました。
その人だと。
ゴンベエ様申し訳ございません、わたくしは恩を返すと言いながらゴンベエ様を利用して叔父を討伐してもらうつもりでした」
「知っておる、お主が付いていきたいと言った時、目に悲しい殺意を感じたからのぅ」
「ゴンベエ様は分かってわたくしを側に置いたのですね、敵いません。
ゴンベエ様レベッカさんやフィーライヌさんに聞きました、ゴンベエ様と交わると力が手に入ると。
本当なのですか?」
「本当じゃ」
「そうなのですね、ゴンベエ様わたくしの身体を好きにして下さい、その代わり力を!
神獣を倒せる力を下さい!」
椅子から降り、土下座してお願いされる。
「クレア、交わるだけで神獣を討伐するほどの力は手に入らん」
「そ、そんな」
クレアは顔を上げ涙を一筋流した。
「じゃが方法はあるぞ、ワシを信じてくれるなら」
「信じます!ゴンベエ様を信じます!」
「そうか、じゃが今はお主の身体が力に耐えられんから待つんじゃ」
「はい!」
「いい子じゃ、どれ話が終わったのなら部屋に帰りなさい」
クレアの求めている力を与えられないので帰らせることにした。
「えーと、それは嫌です。ここまで来たんですからしませんか?リリーにいろんなこと聞いたので少し気になってまして、、、」
「そうか、じゃあおいで」
「はい!」
クレアがワシに飛びついた。
柔らかいクレアの包容力はとても素晴らしかった。
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