添い寝

「ちょっとゴンベエ離しなさいよ」


「それはできん。おなごと同じ布団におるのに抱きしめないのはワシの信念に反する。


それにレベッカも離せと言いながら抵抗もせずに受け入れておるではないか。


どうじゃこのままワシに抱かれんか?」


「いやよ!


まだ抱かれるわけにはいかないわ!」


「まだか、では楽しみに待っておこう」

そう言ってゴンベエは抱きしめる力を強めてきた。


私とゴンベエは今同じベッドで寝ていて、

ゴンベエのいない方向を向いている私に腕枕をしながら後ろから抱きしめてくる。

何故こんな状況になったか思い出してみよう。


ゴンベエから刀を預かりハムさんとリリスと呼ばれる女の人と一緒に街に入った。


「ゴンベエ大丈夫かな?」


「大丈夫よ、ゴンベエは誰にも囚われることはないわ。そういう男よ」


「なんでそんなことあんたに分かるのよ?」


「そうね、男を知っているからかしら」


「なんの根拠にもなってないじゃない」


「じゃあ女の勘よ。


そういえばきちんと自己紹介してなかったわね。わたしの名前はリリス、ゴンベエの女よ」


「私の名前はレベッカ、Cランク冒険者よ。

ゴンベエのえーと何かよ! 


あとゴンベエの女ってところは、私は認めてないから次自己紹介する時には言わないで!」


「はいはい分かったわよ、言わないからそんな睨みつけないでよ。


まったく冒険者ってのは野蛮で怖いわね」


「悪かったですね野蛮で!そういえばリリスさんだけ記憶あるのはどうして?」


「リリスでいいわよ。わたしだけあの子達と事情が違ってね、まあ自業自得なんだけど。

あんまり気にしないでくれると嬉しいわ」


「分かったわ!ゴンベエならあなたの記憶を残した理由がきっとあると思うから気にしないことにする。

それと私のこともレベッカって呼んで。


これからよろしくね」


「よろしくレベッカ」

リリスに手を差し出しそれをリリスが握りった。


「レベッカさんそろそろ冒険者ギルドに着きますよ」


「ごめんハムさん、ゴンベエが街に来てから行くことにするからサンジェっていう宿まで乗せてくれない?」


「構いませんよ、その宿なら私の勤めている商会と近いですからね」


「ありがとうハムさん。

お礼はゴンベエの次元袋に入ってある私が討伐した魔物の素材を渡すわ。

結構珍しい素材もあるから期待してて」


「それはそれは、ゴンベエ様にも素材いただけますし、盗賊団の宝を半分貰えましたし、

さらにはAランク級の魔道具まで手に入れたのに、さらにレベッカ様にまで素材をいただけるとは。


これは昇進間違いなし!ゴンベエ様が商会に訪れる日が楽しみです!」

しきられた布の先から興奮しているハムさんの声が聞こえた。


宿に着いたのか竜車が止まり降りることにする。


「ハムさんありがとう。ゴンベエが街に入ったら私達のところに来ると思うから、ゴンベエと一緒に商会にいくわ」


「はいお待ちしております。

では失礼しますね」


「またね」

ハムさんは勤めている商会に向かった。


「ねぇレベッカ、言いにくいんだけどわたしお金持ってないのよ。


絶対に返すからゴンベエが戻るまで宿代払ってくれない?」


「別にいいけど、なんでゴンベエが戻るまでなの?」


「ゴンベエが戻ってきたら一緒の部屋に泊まればお金はかからないでしょ?


もちろん対価はわたしのか・ら・だ」


「やっぱり貸すのやめる。

どっかで男拾って泊めてもらえばいいわ。


じゃっ私は宿をとらなくちないかないから行くわね。さよならリリス」


「冗談よ!ゴンベエの変な袋に全財産が入っているのを忘れてたのよ!」


お願い貸して、路上生活はもう嫌なのよ!」

リリスは必死の形相で両足にしがみついてくる。


「次変なこと言ったら本当に貸さないからね!」


「はい!決して変なことを言わないと誓うわ!


ありがとうレベッカ!」


「じゃあ宿に入るから離して」


「はい!」

この日からリリスは私の言うことを全て守り、平穏の日々をおくった。


でも5日経ってもゴンベエは戻っては来なかった。

門番さんから聞いた権兵衛の言伝は、

「どうやら門番長がワシを見極めたいらしいので、数日は二人のもとへはいけん。

必ず会いに行くから安心して待っておれ」

だ。でも5日も会いに来ないって本当に大丈夫なのかな。


その5日間はこの街に初めて来たリリスを案内していた。


リリスは少女のような目をして街の中を見ているが、化粧も少し濃く、服装は胸元が大きく開いた少し過激な格好をしている。

まるで夜の街にいる娼婦のようだ。


リリスは私と同い年くらいの見た目しているのにとても色っぽく、すれ違う男性達が次々と釘付けになっていく。


時よりみせる仕草も彼女の魅力を最大限に引き立てるので、男性が店主のお店で買い物するとみんなデレデレしながらリリスにおまけなどを渡している。

もちろん私には当然ない。


そして6日目の昼に門番さんが来て、権兵衛が街に入れることを伝えられた。

いつ戻ってきてもいいように私達は宿にいることにした。


その日にゴンベエが戻って来たので飛びついてしまい、あとですごく照れてしまった。


ゴンベエは用事があるらしくすぐに宿から出て行きその日の夜にまた宿に戻ってきた。


「今度は一階で待っておったのか」


「ゴンベエならすぐに終わらせて帰ってくると思ったからね」


「ゴンベエお疲れ様。あなたが戻ってくるのを待ち焦がれていたわ」

そう言ってリリスはゴンベエに抱きついた。


「ちょっとリリス離れなさいよ。

ゴンベエが困っているでしょ」


「いや困ってはおらんぞ」


「ゴンベエは黙ってて。

リリス!もうお金貸さないわよ!」


「別にいいわよ、ゴンベエが戻って来たからレベッカに頼らなくてもよくなったし。


ゴンベエこの女にお金を借りたから代わりにお金を返してくれない?」


「別に構わんが」


「だめよ!ちゃんとリリスのお金で返しなさい!


「はいはい、ゴンベエわたしのお財布出して」


「ほれ」

ゴンベエは次元袋から赤色の財布を取り出した。


「はいこれで貸し借り無しよ」


「ちょっと銀貨二枚足りないわよ!」


「ちっレベッカは細かいわね、そんなんじゃ男を受け止めきれないわよ」


「余計なお世話よ!」

ゴンベエから離れたリリスから貸していたお金をもらうが、足らなかったので文句を言い、足りなかった銀貨二枚を受け取った。


「じゃあもう夜が遅いし寝ようかな」


「そうね、夜更かしはお肌の天敵だもの。

まあ男のアレを飲めばお肌もピチピチになるけどね」


「リリスってなんですぐそういうこと言うの?


はしたないわよ」


「あら男を知らない子には刺激が強すぎたかしら?」


「その喧嘩買うわよ?」

リリスが気にしていることを言ってきたので、少し癇に障った。


「それより二人ともワシが泊まる部屋はとってくれたのかの?」


「あ!」「あ!」

リリスと声が被った。


「えーとゴンベエごめんすっかり忘れてた。


ちなみに部屋は満席だから今から部屋はとれない」


「困ったのぅ。では遊郭にでも行って一泊してこようかの」


「ゆうかくってなに?」


「おなごに夜の相手をしてもらうところじゃの」


「それはだめよ!行ったら許さないからね!」


「ゴンベエいい方法があるわ、

ゴンベエがわたしの部屋に泊まればいのよ。


そこにはわたしとゴンベエしかいないからきっと良い事が起きるわ」

またゴンベエに抱きついてリリスは言う。


「だめよ!

ゴンベエ私の部屋に来なさい!」

こうしてゴンベエは私の部屋で寝ることになった。


「ちょっとゴンベエ胸を揉まないでよ、

眠れなくなるでしょ」


「すまんな、おなごが隣で寝ている時は胸を触りながら寝ると寝つきが良くなるんじゃよ。


だめか?」


「少しなら許すけど早く寝てよね」


「今日はふとっぱらじゃのう」


「まあゴンベエが牢屋にいるって門番さんに聞いて、可哀想だなって思ってたからね。

今日だけよ、今日だけ特別だからね」


「お言葉に甘えることにしようかの」

そう言ってゴンベエは腕枕している腕の手で私の胸を優しく揉んできた。

少し変な気分になるけど今日だけは我慢してあげよう。

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