牢屋


「あれ?故障かな?


でも俺には反応する。


すいませんもう一度お願いします」


「ほれ」


「あれ?また反応しない。

おかしいな触れた人の魔力に反応して起動するはずなのに」


「門番殿、ワシは魔力を持っておらん」


「はい?またまたご冗談を。


この世界の生物は魔力がないと生きていけないんですよ!

ないわけないじゃないですか!」


「本当に無いぞ。


魔力とは違う力を持っておるがの」


「本当なんですか?」


「本当じゃ。ほれ」

妖術で右手に狐火を出し門番殿がそれを何か仕掛けがないか探している。


「どうやら本当のようですね、魔力が全く感じられませんし仕掛けもありません。


すいませんこのようなこと今までなかったので俺の判断で決められません。

一度門番の詰所に来ていただく必要があります。

あと武器は預からせていただきます」



「武器は預けるわけにはいかん。

これはワシの魂のようなものじゃから信用のおけん奴には渡せんよ。

仲間に預けるのはよいか?」


「はいそれでも構いません」


「レベッカこれを頼む」


「わかった。大事扱うね」


「頼む、では案内してくれるかの」


「では着いてきて下さい。


ロイ持ち場を離れるからここを頼んだぞ」


「了解」

同じ門番に頼んだあと門番殿は歩きだしたので着いて行くと少し大きめの建物に着きその中に入っていった。


建物の中は男臭く廊下を歩いている者は全て男で少し帰りたくなってきた。


そして門番は部屋の前で歩みを止めた。


「門番長!問題が発生しました!

入ってもよろしいでしょうか」


「問題?構わん入れ」


「は!では一緒に入ってください」

ワシは頷き一緒に部屋の中に入っていった、

部屋の中には左目に黒い眼帯をした男が座っていた。


「タウロス報告しろ」


「は!

今から報告するのは嘘のような本当の話です。

いつものようにこの方を犯罪履歴機で調べようとしたのですが反応しませんでした。


そこでこの方から魔力が無いと言われ証拠も拝見しました。


俺の判断するべき案件では無いと考え、門番長に判断を仰ぎに参りました」


「なるほど理解した。


たしかに魔力は持っていないようだな俺の魔眼が反応しない。


分かった私に任せてタウロスは仕事に戻れ」


「は!失礼します」

門番殿はワシに一礼をして部屋から出た。


「私の名はハルバスという、ここの門番長をしている。

貴殿の名を聞いてもいいか?」


「構わん。

春日 権兵衛だ。

権兵衛と呼んでくれ」


「家名があるということは貴族なのか?」


「いや勝手に名乗っておるだけじゃよ」


「そうか。


それはやめておいた方がいいぞ、貴族の癇にさわる可能性があるからな。」


「貴族か、、分かった気をつけておく」


「ああ気をつけてくれ。


一つお願いがある。

大人しく牢屋に入ってくれないか?」


「それはワシを捕まえるということかの?」


「そういうことでは無い。


私のスキルで貴殿がとんでもなく強いとわかり、正直同じ部屋にいるのも恐ろしい。


大人しく着いてきた貴殿は良識のあることは明白だが、

まだ安心して街に入れることはできない。


数日、数日牢屋の中で様子を見させてほしい。

この通りだ」


「仕方がないのう。

お主のような男に頭を下げられると断りづらいわい。


その代わりワシの仲間に言伝を頼む」


「ありがたい。


言伝は必ず伝えよう」


「では牢屋に案内してくれるかの」


「ああ」

門番長はおそらくこの街の権力者だ、

証拠は体から高貴なオーラがワシには見えているからな。


ワシは大人しく牢屋に入った。


あれから5日ほど経つが未だに出ることはできず、

毎日のようにハルバス殿から頭を下げられ謝られている。


一応犯罪者ではないのでお手洗いは牢屋の兵士に言って出してもらい詰所の物を使ってもいいし、食事もそれなりの物を用意されている。

優遇されているのが他の牢屋に入っている犯罪者どもに知られているので、文句を言われ続けている。


「おい!またこいつだけ特別扱いだよ!


何でお前だけ飯が豪華なんだよ!」


「じゃからワシは犯罪者ではないと言っておるじゃろ。

ここには事情があってここにおるんじゃ」


「知らねーよ!

ここに入るやつはみんな犯罪者なんだよ!


新入りのお前は俺達にその飯を寄越すのが普通なんだよ!」

「そうだ!」

「その肉を寄越せ!」

「俺はその柔らかそうなパンでいいぜ」

「わしはスープをいただこうかの」

「あたしはサラダでいいわよ」

近くにいる犯罪者共が欲しい物を言ってくる。


「やらん。

ワシはおなごには優しくするが男は尊敬の念がないと優しくせん」


「そのおなごってなんだよ」


「あーそうじゃったここでは通じなかったんじゃ。


女性のことじゃ」


「あらならあたしには優しくしてくれるのね」


「お主が本当に心がおなごじゃったらな。


どうせ心がおなごのふりをしておなごを油断させた後、よからぬ事をしたじゃろ」


「ちっバレてたのか!」


「その口調の方があっておるぞ」

おなごのフリをしていた男がもとの口調戻った。


「わしにはくれないかの?

年長者は敬う者じゃろ」


「お主のどこを敬えというんじゃ、この牢屋で一番の悪じゃろ。


お主の体から人間の血の臭いがしておる。

おそらく200人以上を手にかけたんじゃろ」


「人間の血の臭いが分かるということはお前もワシと同類ということじゃの。


同類同士仲良くしてくれんかの?」


「やっぱりお前も犯罪者だったんじゃねーか!」


「昔の話じゃよ。


あと同類じゃないわい。

お主は殺すことが目的じゃろ?ワシは強くなるために人を斬っていたんじゃ。


お主ように自分より弱いものしか狙わん者と一緒にされたくはないわい」


「人殺しは人殺しじゃよ。

そこに理由など求めることなど無意味じゃよ」


「考え方の違いじゃの。

お主とは仲良くはなれんから飯はやれんな」


「ふっ上等じゃ」

この老人以外は諦めてないのか騒いでいるが、無視をして昼飯を食べ始めた。


6日目、ハルバスが誰かを連れて訪れた。


「ゴンベエ殿。

この方はアルミール・サンジェシカといって、この街の領主の子供だ」


「お前がゴンベエか。

話は聞いている魔力とは異なる力を持ち、とてつもなく強いとな。


お前は街に入りたいのか」


「そりゃは入りたいじゃろ。

牢屋に入った意味がなくなるし、仲間も待っておるからの」


「そうか。

お前は剣が持っていたと聞いたが、

剣は扱えるのか?」


「剣ではないが同じような物を扱えるな」


「今から僕と剣を交えてもらう。 


剣にはその人物の全てが物語るからな。


ハルバス、この者を訓練所に連れてこい。

僕は先に行っている」


「はっ!」

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