2人のおなご


「はははははは」


「ちょっとゼイクどうしたの?

しっかりしてよ!」

指名手配の男は正気を保てなくなり狂ってずっと笑っている。


「おなごよその男はもう元には戻らん。


そしておなごよひとつ聞きたい。


お主は盗賊の仲間か?」


「そうよ!


そうしないと生きていけなかったのよ!

もし仲間にならなかったらこの子みたいにされるからね!」

おなごは動かないおなごを指差して言う。


「なるほどの、

お主の事情は理解した。


お主が約束を守るなら生かしてやろう」

前の世界で多くそのようなおなごを見つけ助けてきた。


「約束なんてしても処刑されるわ。


ここに来たったことは下の連中も助けたんでしょ、

あの子達はゼイクにやられてないから正気を保っている子が残っているはずよ。


だから私が盗賊の仲間だって証言されるわ」


「そうじゃの。


じゃが盗賊に捕まっていた記憶を残した場合じゃがの」


「どうゆう意味よ?」


「まあ見ておれ」

ワシは動かなくなっているおなごもとに向かった。


「その子に何しても意味ないわよ。


ゼイクが獣化して一晩中やり続けたからね。


獣化すると性欲が増大していくらやっても収まらないの。

それを利用して女を壊すのを楽しんでいたわ」


「本当に外道じゃの。


どれ、

今綺麗にしてあげるからの。


妖術『遡及』」

おなごに右手かざし妖術を使う。

ワシの右手が白く光りその光がおなごを包んでいく。


光が収まると体液で汚れていたおなごは綺麗な姿に変わっている。

そして開いていた目をパチパチとしてワシを見た。


「あのーすいませんここはどこですか?」


「ここは盗賊達の拠点じゃ。


お主は攫われていたんじゃよ、

安心しなさい何もされておらんから」


「私攫われたんですか!


もしかしてあなたも攫われたんですか?」

おなごが盗賊のおなごに聞いた。


「そうじゃ。


此奴もお主とおなじ輩に攫われたんじゃよ、

あそこにいるずっと笑っている男の仲間に。


どれこれを着るといい」

次元袋からわんぴいすなる物をおなごに渡した。


「服?


きゃー!

み、見ないでください!」

おなごは自分が全裸であることに気づき悲鳴をあげ手で胸と大事なところを隠した。


「かっかっかっ!

いい物を見せてもらったわい!


どれワシは後ろを向いておこうかの」


「ちょっとどういうことなの?」

後ろを向くと盗賊のおなごがこちらに来ていて、

後ろで着替えているおなごに聞こえない声量で聞いてきた。


「その前にお主も何か着ないのか?」


「わたしはこの館で常に全裸でいるように命令されていたからもう誰に見られても平気なのよ。


それより本当にどういうことの?」


「ワシの力で体も心も記憶も全て盗賊に攫われる前の状態に戻したんじゃ。


つまりお主を盗賊の仲間だと知っておる記憶は残っておらん」


「なにそれ!

とんでもないスキルね。


そうだわ、

ねぇそれわたしにもやってくれない?

元のわたしに戻りたいの」

おなごがワシに抱きつき上目遣いでお願いしてくる。


「無理じゃな。


これは心が綺麗な状態の者しか使えん。


お主は盗賊と長く居すぎたんじゃよ、

ここが濁っておる」


「そんな、

好きで盗賊なんてやってなかったのに。


不公平だよこんなの」

おなごはワシの胸で泣き始めた。


本当は元に戻すことはできる。

だが元に戻してもまた同じことが起こりこのおなごは同じようにするだろう、

今回はワシが来たから死なずにすむが次は処刑される。


もし本当に反省したら体だけは元に戻してやることにしよう。


「ご、ごめんね。


ところでさっき言っていた約束の話をしてもらってもいい?」


「よいぞ。


お主はこれからワシと共にいることじゃ、

決して離れてはいかん」


「それはあなたの女になれってこと?」


「違うわい。

お主を守るためじゃ。


お主は昔から悪いことがよく起きるじゃろ?」


「そうよ。

小さい頃は病気がちで外に遊びにいけなかったから友達もできなかったし、

体がよくなると次は母さんが重い病気になって看病するためにどこにも行けなかった。


その病で母を亡くすと今度は住んでいた家が燃えたわ。

父と2人で路上生活しながら住む家を探してなんとか見つけても、

仕事が見つからずすぐに追い出されたわ。


遠くにいた祖父が来てくれて家と仕事を用意してくれたおかげでなんとか元の暮らしのように戻ったのも束の間。


祖父と父が乗っていた馬車が盗賊に襲われて2人とも死んだわ。

祖父の遺産はすべて他の親戚に持っていかれ、

わたしは盗賊に売られたわ。

祖父と父を殺したこの盗賊にね」

おなごは涙を流しながら過去を語ってくれた。

最後はしゃがみ込んでしまった。


「辛かったですね。


私も家族全員が魔物に殺されましたし、

親戚に遺産も持っていかれました。


そして私も盗賊に攫われたようですし、

少しだけならお気持ちが分かるような気がします」


「あんた。


ご、ごめんね!

ごめんね!」

盗賊のおなごの話を聞いた着替えを終えたおなごが、

盗賊のおなごを抱きしめ過去を語った。


それを聞いた盗賊のおなごは謝りながら抱きしめてくれるおなごの胸で泣きじゃくった。


「あ、ありがとう。

少し心が落ち着いたわ」


「いえ、お役に立ててよかったです」


「そろそろ不便になってきたのう。


お主達の名前を教えてくれんか?」


「わたしの名前はリリスよ」

盗賊のおなごはリリス。


「私はクレアです」

壊されていたおなごはクレア。


「ワシは春日 権兵衛。

権兵衛とよんどくれ」


「ゴンベエ?変な名前ね。

まあよろしく」


「よろしくお願いします。

ゴンベエさん」


「よろしく頼む。


リリスよ、

地下にいる者達はどういう状態なんじゃ?」


「あー地下にいるのはまだ何もされてない女よ。

ちなみにわたしは会ったことないから」


「ならば問題なしじゃな。


今から助けに行くとしよう。

2人はここで待っていてくれるかのう?

少し事情があるんじゃ。


リリス、約束はどうするんじゃ?」


「あんたの女になるわよ」


「そういう意味じゃないんじゃが?


まあよいか。

リリス、下の者達のことはワシに任しておけ。


では行ってくる」


「ゴンベエ任したよ!」


「それよりリリスさん服を着てください」


「そうね。

たしかあそこにドレスがあったような気がする」

後ろからそんな会話が聞こえた。

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