森の主
「はぁー!」
レベッカが角を生やした異形のものを切り裂いた。
「まさかオーガを一撃で倒せるなんて!
ゴンベエこの剣すごいよ」
「気に入ってくれてよかったわい。
それは少し苦戦したいた頃に倒したやつから出た剣だ。
ワシの見立てではレベッカに合うと思って渡したが、
やはり似合うし相性もいいようじゃの」
レベッカが持っている柄も刀身も赤黒い剣を見て言う。
「ゴンベエ本当にこの剣との相性がすごいよ!
初めて持った気がしない!」
「そうじゃろ!
そんな気がしたんじゃよ。
あとその剣には不思議な力があるんじゃが、
どうやらレベッカは発動できないようじゃな」
「ゴンベエどうすれば発動できるの?」
「方法はあるんじゃが、
今はおすすめはせん」
あの世界で見た方法を使えばできそうな気がするが今はその時ではない。
「えー知りたいんだけど」
「内緒じゃ内緒。
今はもう少しその剣に慣れることじゃな、
相性がいいとは言えまだ少し違和感があるからの」
「はーい」
レベッカは諦めたようで、
次の魔物と呼ばれるものを探しにいった。
だいぶ上層部に来たおかげで、
あの剣を持つレベッカが倒せる弱さになっていた。
「敵を殺すことをあのように喜ぶおなごがいるとは。
世界の違いがよく分かる。
まあ喜んでいるからよしとしよう」
前の世界を思い出し言った。
レベッカに魔物を任せてワシ達は上を目指した。
「やった!ついにこのダンジョンから出られる」
「なるほど、
この洞窟はだんじょんと呼ばれる空間だったんじゃな」
ワシ達は前方に光が見えたのでここから出られる事が分かった。
「ただのダンジョンじゃないよ!
新しく発見されたダンジョンなの!
私達はここを調べるために来たんだ」
「私達?
レベッカしかおらんかったぞ?」
「えーと置き去りにされたんだ」
「置き去りとはどういうことじゃ?」
「一緒にいた人たちは全員Aランクって言われる強い人たちのパーティーで、
私は荷物運びとして誘われてこのダンジョンに来たの。
そしてらそのメンバーの1人が罠にかかって、
あのレッドドラゴンがいる場所に転移されたの。
さすがにレッドドラゴンを倒せないと判断したあの人たちは、
私の足を斬って逃げ出せないようにして囮に使ったのよ」
「ふむではそのえいらんくという奴らにワシは感謝せんといかんな。
囮にしてくれたおかげでレベッカに会えたからのう。
レベッカも囮になったおかげでその服も剣も手に入れられたんだ。
よかったではないか」
すごい怖い顔をしているレベッカに励ましてみる。
「そうだけど!
でも本当に死ぬかと思ったんだもん」
「死ななかった、
それがレベッカの運命じゃったんじゃよ。
奴らもバカなことをしたもんじゃ、
こんな美人を捨ているとは。
きっと今頃後悔しているじゃろ」
「そうかな?」
「いや逆にレベッカを捨てる奴らじゃ、
自分がしたことに気づいておらんアホかもしれんな」
「きっとそのアホね」
「そうじゃな、
そのアホじゃな」
少し元気が出たのか笑顔を見せてくれたので安心した。
「洞窟から出ると森とはな。
山の中じゃと思っておったわ」
「ダンジョンはいろんなところに出現するのよ。
海の中にあったり、空の上に浮かんでいるダンジョンもあるって聞くわ」
「ほうそれは面白い。
きっとそのだんじょんは誰も制覇しておらんと思うから、
強い魔物がいそうじゃな」
「そうね。
おそらくとてつもない魔物がいるはずよ。
この前話した通り、
ダンジョンの魔物は成長してどんどん強くなるからね」
「楽しみじゃの」
ワシはこれから出会うであろう強者に胸を高鳴らせた。
「それでレベッカよ
これからどこに行くんじゃ?」
「ハカンテラって街に行くわ。
そこで生存報告をしないとギルド証が剥奪されてしまうから。
ゴンベエも一緒に来る?
お礼もしたいし」
「もちろん一緒にいくぞ、
行く当てもないしの。
ではレベッカ案内を頼むぞ」
「ここら辺の魔物は弱いから私に任せてよね。
さっ行きましょう」
レベッカが前を歩きワシがついていく。
森の中は少し暗く、
生えている花やキノコ、虫も動物のようなものも前にいた世界やあの世界とまるで違う。
「レベッカ。
あれはなんじゃ?」
「あれはこの森の主よ」
虹色に輝く人間を指差して聞くと、
この森の主だという。
強い。
ワシは刀を抜こうとする。
「ゴンベエ待って。
あの主は人間の味方なの、
殺さないで」
「そんな泣きそうな顔をするでわない。
あの者に敵意がないことぐらいわかっておる。
じゃがトカゲとは別格の存在だったから、
少し手合わせをしたかっただけじゃ。
レベッカあの物が気にいるものは知っているか?」
「お酒かな?
村にあった祭壇にお供えられていたよ」
「そうか。
森の主よ殺気を放ってすまなかったな、
これをやるから許せ」
次元袋からお酒が入った瓶を出し森の主に投げた。
森の主はこちらを見たまま瓶を掴み、
瓶ごと口の中に入れた。
【強気ものよ。
感謝する、
これを持っていけ】
神と同じように頭の中に直接聞こえた。
森の主はおなごのようだ。
「レベッカこれはなんだ?」
森の主から投げられた物を掴み、
見てみると紋章が書かれた丸い球だった。
「これは森の主の紋章がついた玉ね、
さっき言ったこの森の近くの村にある祭壇に描かれていたから間違い無いわ。
効果は調べてみないとわからないけど」
「ふーんまあ貰えるものは貰っておくかの。
森の主よありがたく」
森の主は消えるようにいた場所から去った。
「ほう、やはり強いな。
ワシに察知されずに消えるとは。
この世界は実に面白そうじゃ」
「ゴンベエすごい顔してるよ!
ちょっと怖いからもとに戻して!」
「おっとすまんな。
これからあのような強者に出会うことを考えたらつい。
ではレベッカ案内の続きを頼む」
「もう。
じゃあ行くわよ」
ワシ達はしばらく歩くと森を抜け街道のような整備された道を歩き始め、
暗くなる頃には小さな村に着いた。
「止まれ!
何者だ」
「私はCランク冒険者のレベッカよ、
少し前にこの村で宿をとったものだけど。
覚えてない?」
「たしかに見覚えはあるが、
なぜきた時のメンバーが一緒ではないんだ?」
「それは少し事情があって、
あの人達に置き去りにされたの。
そしてこの人に命を救ってもらえたのよ」
「ふむ。
そちらの人は少し怪しいが犯罪者ではないんだな?」
「むしろ私を救ってくれたんだからいい人よ。
入れてくれない?」
「いいだろう。
だが変なことしたら捕まえるからな!」
門番の人がワシを見ながら言う。
「このゴンベエ、
何もしないことを誓おう。
レベッカに迷惑をかけるわけにはいかんからな」
「よし通れ」
「ありがとう門番さん」
レベッカがお礼をいい、
ワシとレベッカは村に入った。
村で一つだけの宿に泊まったが、
一緒の部屋ではなかったことが少し残念だった。
「さて、そろそろ出てきてもよいぞ」
部屋の中で独り言を喋る。
【よく気づいたな強き者よ。
異世界から来たそなたにはこの世界はどう映る?】
森の主と同じ声で緑色の髪と深緑色の目をした美女がワシの前に現れた。
レベッカは色っぽいが少し女の子と言ったところだが、
この美女は完全に色っぽいお姉さんだ。
「実に面白そうじゃの。
全て生物が見たことのないものばかりじゃ。
まあ人間は変わらんがな。
それを聞くために来たのか?」
【そうだ。
妾はこの世界を守るために存在する。
そなたのような化け物が、
この世界を壊そうとするのをどんな手を使っても止めないといけない】
「ほうどんな手を使ってもか。
そうじゃの、
ワシの望みはわかっておるのであろう?」
【分かっている。
強き者がいる場所が知りたいのだろう】
「それも知りたいが。
まずお主を知りたいもんじゃの」
【妾を抱くつもりか】
眉間に皺を寄せて聞いてくる。
「いずれはそれを望むかの。
この世界で最初に抱くのはレベッカと決めている。
今日のところは添い寝でも頼もうかの」
【よかろう。
だが一つ忠告しておく、
妾を抱けばそなたは死ぬぞ】
「かっかっかっ!
それは実に面白い。
楽しみにしておこう。
ほらおいで」
森の主はの身体は少しひんやりしている。
その体を腕の中に収め、
柔らかい感触を少しだけ堪能した。
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