董卓英雄伝説 董卓は極悪人ではなく仁政を行い漢王朝を復興した義士だった

shikokutan(寝そべり族)

華燭の典

第1話 董卓 いきなり死亡フラグ立つ

 その日、長安の宮城の近くにある董卓の屋敷は、赤い垂れ幕や竜、鳳凰といっためでたい図柄の提灯によって華やかに飾り立てられていた。

 使用人たちは、忙しく走り回り、飾りつけをしたり、お祝いに必要な品々をそろえたりしている。

 その合間にあちこちで噂話を交わした。

「董卓様もいい年して20歳そこらの娘に夢中になるとはな。おまけに、華燭の典だとよ」

「なんでも、董卓様の妻になるお人は、ただの妾にしておくには、惜しい絶世の美女なんだそうな。四千年に一人の美女だとよ」

「一目見たら、魂を抜かれるほどの美女だそうだ。董卓様が夢中になるのも仕方ないそうな」

「もともとは呂布将軍の嫁となるはずが、あまりに美しすぎて、董卓様が横取りしたそうな」

「そりゃ、傾国の美女と言うやつか。董卓様は、皇帝陛下を擁立して、漢王朝復興を目指そうと為されているというのに、こりゃ、ここで運が尽きるのかな」

「しーっ。声がでかいぞ」

 使用人たちは慌てて、口を閉じると元の仕事に戻った。


 門から、精悍な若武者が入ってきたところだった。

 龍を擬人化したような顔立ちに、筋骨隆々としたたくましい体つき。背の高さは、実際には、平均より高い程度であるが、三メートルはあるのではないかと思わせるほどの圧倒的な存在感を放つ。

 将軍の中の将軍と呼ぶにふさわしい男、ほかならぬ、呂布、字は奉先である。

 見る者を射竦めるその眼差しに、陰りがあった。

 呂布が戦場で愛用する「方天画戟」は、今、呂布の手にはない。

 針の穴をも射貫くという呂布愛用の「俺の剛弓」も持っていない。

 腰に董卓から賜ったという「七星剣」を差しているだけである。

 この「七星剣」、どんなに頑丈な鎧だろうとも切り裂くことができ、貫くことができるという当時において最高級の神剣である。

 呂布が董卓を殺すのに、「方天画戟」も「俺の剛弓」も必要ない。ただ、「七星剣」を一突きするだけで、董卓はあの世行きだろう。

「いや、呂布ほどの剛力をもってすれば、董卓を殴り殺すこともできるんじゃないか」

「この華燭の典は、この赤い垂れ幕のように、血に染まるかもしれんな」

 呂布が通り過ぎた後で、使用人たちは、そんなことをささやき合っていたのである。

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