第十五話 誘発と暴発


「どうやってと言われてもの……火を消してきたとしか」


 赤いスライムは今気がついたかのか、素早く辺りへ顔を動かした。状況を確認すると一度頭を落ち着かせるため、


「ちょ、ちょっと」


「なにしてるの?!」


 驚いたスライムとシルフィがすぐさま声を上げる。一匹はちょうどその光景を見ておらず頭を傾げた。


「いや、大丈夫だ。


 確かにスライムには物理攻撃は通らない。とは言っても限度はあるし、下手すると核を破壊して自滅もあり得る危険な行為だ。

 なにが「俺はスライムだからな」なのかは瞬時には理解できなかったが自殺とほぼ同然の行為をしたのだ。スライムとシルフィが驚いても仕方がない。

 と、ここまでの光景を見ていたきょうすけは大きくため息を付くと気怠そうに声を発した。


「そろそろ良いよなぁ? おめぇら全員刀のサビにしてくれよぉ!!」


「――っ? 危ない!」


 目の前にいるシルフィには目もくれず赤いスライムへと突撃する。シルフィが咄嗟に展開した結界は意味を成さず空に浮かぶ。刀を振り上げたきょうすけは一直線に振り下ろした。が、何かがぶつかり数センチ右へとズレてしまう。飛んできた方向へ目を向けると


「忘れないでよね」


 スライムがどや顔で立っていた。(スライムに足ないけど)きょうすけは舌打ちをすると刀を持ち直す。左手で構えると右手を持ち上げ魔法を放つ。


「『炎壁』!!」


 咄嗟の判断で防御を敷くとその場から飛び退いた。


(くっそ……俺だけなら良かったが、あいつらを巻き込むわけにはいかねぇ)


「どうしたんじゃ? 固まっておるぞ」


 たった数日だが一匹とスライムには良くしてもらった。こんなところで、ましてや昔の知り合いに殺させるわけにはいかない。

 知らぬうちに赤いスライムは震えていた。全身強ばらせ苦虫を噛みつぶすように歯ぎしりを立てる。一匹はどうしたのか訊くも言葉は返ってこなかった。


(くそがっ……なにきょうすけ如きに怖じ気づいてんだよ!! 動けっ、動けよくそ!)


 動かない身体を必死に叱咤するが、まるで凍っているかのように踏み出せなかった。段々焦りを覚えだし赤いスライムは――切った。


「きゃっ」「わわっ」「ぬぉぉ」「ぐっ……」


 突如として爆風とともに周囲が弾け飛んだ。至近距離にいたみんなは四方八方へと勢いよく飛ばされてしまう。

 ――気がつくと辺りには何もなかった。文字通りの意味で、見渡す限りの地平線。つまり周囲十何キロ以内にはということ。


「……みんなは、どこじゃ」


 身体を起こし周囲に目を走らせていると、ポロッと言葉がこぼれ落ちた。


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