第八話 冒険者ギルド 4

「ほら、ここだよ」


 するとスライムが地図の左端にある街を指差してきた。一匹はスライムの言わんとする事が分からず首をひねらせた。(スライムに首ないけど)


「この街に行こうと思ってるんだけどね、今から行こうとしたら日が暮れそうなの」


 スライムのスピードを考えると今から巣に帰るとしてもどちみち日が暮れてしまう。


(翼が恋しいのぉ……このぐらいの距離ならすぐ着くのじゃが)


「どこかで野宿でもするかの?」


「う~ん……あ、あの廃墟に泊まらない?」


 そう言いながらスライムは家の左にある崩れた画を指した。


「こんな不気味な場所に好き好んで行く魔物も人族もいなさそうでしょ?」


 そうと決まれば早速、スライムと一匹は数日前に行った廃墟へと向かった。道中日が沈んできたのもあってか夜行性の魔物がちらほらと見受けられた。が、一度も戦闘することはなく上手く隠れながら進むことができた。


「――ここに来るのが、なぜか久しぶりな気がするの」


「あれから四日しか過ぎてないんだけどね…………ほんとに、あの時は心配したんだからね」


 スライムは悲しそうな、それでいてどこか安心した笑みを浮かべている。一匹は申し訳なさそうにしながら「あの時は……おぬしに迷惑をかけてしまったの。すまないの」と謝った。


「ううん、君が無事だったんだから平気だよ。むしろもっと私を頼ってくれて良いんだからね」


 スライムはそう言いながらあどけない笑みで嬉しそうに微笑んだ。

 ――翌日。スライムは身体の異変に気付き目を覚ました。なぜか身体が焼けるように熱い。一匹を見つける直前と同じ感覚に陥っていた。スライムはギルド内にある姿見の前に慌てて立った。


「おでこが……あちっ」


 おでこ辺りに火傷したような跡があり、手を伸ばして触ると案の定熱を帯びていた。

 と、その時だった。おでこから突起物が生えてきた。硬くなく、かといって柔らかすぎず不思議な角? だ。


「見間違えじゃなかったんだ……」


 スライムは唾を飲み込むと一人で語り出した。


「一万体に一体目覚めると言われてる伝説の! 自動微回復が付与された角!」


 完全に突起した角を鏡でまじまじと見つめるスライム。角は白く、長さは五センチほど。そして熱を帯びている。異常なほど熱い、体感で言うと火球ファイアボールをおでこに乗せているような感じ。


「水弾」


 おでこを見上げながら魔法を発動し鏡を見ながら手慣れたように移動させると角に触れるため、水弾で角とおでこの接着面を冷やし始めた。最初は湯気が出ていたもののしばらくするとぬるま湯くらいになり、やっと素手で(スライムに手ないけど)触れるほどの温度になった。

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