第八話 冒険者ギルド 3


風撃ウィンドドロップ


 魔法陣の中央から風が渦巻き竜巻が出来上がった。風は辺りにある物全てを吸い込み始める。

 突然何もないところから竜巻が出来たことによりギルド内は騒然とし始めた。冒険者は皆立ち上がり剣を構える者、杖を構える者、拳を構える者が現れた。

 一匹とスライムは冒険者に蹴られるといけないので机の下に移動している。


「あの魔法はなんじゃ?」


「風撃。見た目は竜巻と同じだけど、小さな風の刃がいくつもあの中で回ってるの。あれに触れたら指くらいなら軽く吹っ飛ぶよ」


 冒険者は竜巻を凝視しながら警戒態勢をとっている。一人の男が魔法で相殺を試みた。中央で回っている風撃とは逆回転の竜巻を生み出し攻撃した。


竜巻ストーム!」


 竜巻が風撃に接触するや否や風音を増して消失した……竜巻だけが。風撃は勢いを増し1.5倍の大きさとなった。魔法を放った男は魔法は通じないと思ったのか後ずさりし杖を降ろした。


「さ、今のうちだよ」


 そういうと椅子を木箱の前まで押した。スライムが一匹の背中を借り椅子の上に乗ると丸められた羊皮紙を二枚ほど咥えた。地面へ飛び降りるとスライムが自身の体内へ吸収してしまった。


「?!」


「これはね、ストレージっていうスキルでね。口の中が異空間になって何でも回収することが出来るの」


 スライムと一匹は冒険者達を一瞥するとギルドを去った。スライムと一匹が街から出ると自然に魔法が解除される。風撃は一切の音を立てず、あたかも元からそこには何もなかったかのように消滅した。これには冒険者達みな驚いていたがスライムと一匹に知るよしもなかった。

 少し歩き街から離れると先程盗んできた地図を口の中ストレージから取り出した。まずは一つだけ、丸められた地図の開くところを一匹が踏み、スライムがその上をゆっくり歩きながら器用に開いた。スライムが置き石用に魔鉱石を取り出すと一匹が居た場所とスライムが踏んでいた場所にそれを置いた。


「……ふむ」


 スライムと一匹は地図の真ん中に寄り、見下ろすような形で地図を眺めた。


「……そういえば、人語読めぬの」


「そう、だね……」


 すっかりと失念していたが地図にも人語が描かれており全く読めそうになかった。絵が描かれているおかげでなんとなく、こっちのほうにでかい街があるなとか、砦っぽいのがあるな、くらいしか分からない。


「あ、これ私たちの巣じゃない?」


「ぬ、そうじゃな」


 一匹達の巣、つまりあの巨大な山が地図の中央右辺りに描かれていた。さっきまでいた街は恐らく中央から左上辺りにある木に囲まれたこの街だろう。他にも転々と街らしきものがいくつかあった。


(家の下辺りにあるのが最初に行った村かの……して、少し左にある崩れたような絵があの廃墟なんじゃろうな……)


「う〜ん……」


 スライムは逡巡するように声を唸らせた。一匹は何を悩んでいるのか訊いた。

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