第八話 冒険者ギルド 2
「ほんとうに、人族達はわしらに気付いていないのじゃな」
一匹とスライムは街道の真ん中を進みながらそんな会話をしていた。少し歩くと冒険者ギルドが姿を現した。やはりと言うべきか冒険者ギルドの入り口はどれも同じで、廃墟にあった風化した冒険者ギルドと全く同じ外観外装をしている。一匹は少し複雑な表情をしながら中へ侵入した。
「──おいねぇちゃん! 酒を来れ」「──でさ、あたいらも大変だったんだよ」「──しょ、少々お待ちください」「だ~か~ら~俺たちはこのクエストを受けたいって言ってんだろうが!」
ものずごい賑わいだった。内装もあの廃墟と全く同じはずなのに、唯一違う点と言えば至る所に冒険者がおり、まるで繁盛している洋服店のようになっていることだ。
一匹とスライムは瞬きをすると顔を合わせた。
「それで中に入ったのはいいが、一体何をするのじゃ?」
流されるままに冒険者ギルドに入ってしまったが、スライムの意図が見えず一匹はその疑問を口にした。
「ほら、やっぱり地図はあったほうがいいでしょ?」
「う、む? まあ、そうなのか?」
一匹には別に地図がなくとも空を飛び回れば良いだろうにと、特に地図が必要な意味が分からず頭上に
「必要だよ! 少なくとも
まるで考えていたことを読まれたかのような物言いに一匹は思わず苦笑を漏らした。スライムは冷やかされたのかと思い頬を膨らませる。一匹は微笑を残しながら謝った。
「……それで、その地図はどこにあるのじゃ?」
「ほら、あそこだよ」
そう言ってスライムは指を(生やして)差した。一匹がスライムの指先に視線をやると、大きな洋紙が丸められ木箱にいくつも入っているのが目先に飛び込んできた。
「あのぐるぐるかの?」
「うん、あのぐるぐるだよ」
「……どうやって取るのじゃ? さすがに位置が高くないかの?」
見れば一匹を三体くらい重ねた高さがある。
一匹は身長が二十cm、横が三八cmあり、スライムは身長が一八cm、横が二四cmある。手足(触手)を伸ばせば何とか届くだろうが一匹曰く意外とコントロールするのが難しいとのこと。
「見ててね」
スライムがそう言うと手を掲げ何かの魔法を発動させた。空中に緑の魔法陣が現れると少しずつ大きくなっていき次第にギルド内を覆う大きさになった。これほど大きいにも関わらず誰一人として声を上げることなく普通に過ごしている。
一匹がドラゴンだったから分かるのかも知れないがスライムが今集めている魔力の質がすごく澄んでおり一切淀みが感じられないのだ。
(これほど澄んだ魔力……わしは見たことがないの)
一匹は心の中で素直に称賛した。
と、準備が整ったのかスライムは魔法陣から目を離し一匹を見た。
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