第十一話 過去の話 4
「……ちょっと訊きたいのじゃが、ここの世界とは違う世界とはなんなのじゃ?」
一匹は首を傾げながら訊いた。
「なんて言えば良いんだろうな~……宇宙つっても異世界が太陽系と同じ構造してるわけないだろうし、そもそも別の銀河が~とか言っても伝わらねぇだろうし……」
突然赤いスライムはブツブツと独り言を始めた。しばらく唸り声を上げながら葛藤? していると良い説明の仕方を思いついたのか、パッと顔を上げると普通の声量で話し始めた。
「あ、俺らってスライムじゃん。スライムって基本弱いから戦わないし出来るだけ戦闘避けてるだろ」
さっきまでの会話と内容が突然変わり一匹は不思議に思うが、話を進めないことには意味がないと思い「まあそうじゃな」と頷いた。
「スライムの世界がこれな」
と言いながら両手で何かを持ったような動作をしつつ隣へ置いた。続けて
「で、まやっぱ異世界と言えばドラゴン? が種族の頂点だったりするだろ?」
一匹は内心ドキリとするが顔には出さないように頷く。
「普通に暮らしてたらお互いの……領域? テリトリー? ……あ、縄張りか。縄張りには入らねぇし、自ら干渉しにいくこともしねぇだろ。それこそなにか原因がない限りは」
ドラゴンと言いながら両手で掬い、スライムの世界を置いた隣にドラゴンの世界を置いた。
「こっちの世界は魔法が発達してるっぽいが、俺の居た世界では魔法は空想上のモノで存在してないんだ。その代わりに科学っつう……機械とかが発展してる」
「……かがく? きかい?」
一匹は単語の意味がよく分からず頭を捻った。赤いスライムも説明するのは面倒なのか「聞いても分かんねぇと思うぞ」とだけ言い説明を終わらせた。
「でまあ、さっきの説明で言うと俺の存在は人里に現れたドラゴンって感じだろうな。もしくは縄張りから除外されたゴミ……とかか?」
ここまで説明すると今まで黙って聞いていたスライムが声を出した。
「つまり、あなたの存在自体がこの世界にとってのイレギュラー。本来ならば居るはずのない存在、で合ってる?」
「だいたいそんな感じだな」
「……ずっと気になっておったのじゃが、その目の魔石はもしやドラゴンのモノかの?」
一匹としてはどうしても気になる。なぜ赤いスライムから懐かしい感じがするのか、なぜ赤いスライムの魔力の波長が一匹と似ているのか。
一匹はもしやという思いと本当にそうなのかという思いを込め、答え合わせをするかのように訊いた。
「?! これって見ただけで分かるもんか? まあ魔力量が明らかにおかしいから分かんのか。ああ、ドラゴンの魔石だ」
もう一つ、一匹は訊きたいことがあった。ドラゴンの魔石だということは分かった、だがそれだけだ。それがネームドならば確実に一匹の、いや
「ならば、そのドラゴンの名は分かるかの?」
「残念ながらそこまでは知らねぇよ。あいつらがドラゴンの魔石だって言ってたのを聴いてただけだ」
「なるほどの……いやなに、少し気になっただけじゃよ」
一匹はホッとするとともに作り笑いを浮かべながらごまかした。
(魔石が小さすぎて正確には分からないんじゃが……わしの、もしくはわしと同等の存在の魔石だというのはほぼ確実には合っているだろうの)
一匹が考えながら納得したところで、話は終わったとばかりに赤いスライムはどこかに行こうと背を向けて歩き始めた。
「ぬ? どこに行くのじゃ?」
「どこってそれは……」
「居場所がないんじゃろ? ……だったら、わしらと一緒に旅をせんかの?」
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