第十二話 旅路と目標
「旅? 俺なんかが着いて行っても良いのか?」
「良いから誘っておるんじゃ」
そう言うと一匹はスライムに目配せをする。スライムは一匹の思惑を読み、続きを言葉にした。
「私たちがあなたの居場所になってあげる。だから、一緒に旅をしてみない?」
突然の赤いスライムの眼から涙が垂れてきた。驚いた一匹は
「そ、そんなにわしらとの旅がイヤじゃったかの?!!」
「ちげーよ……そう言うんじゃなくて、なんつうのかな……嬉しかったんだよ。俺はこっちの世界に来てから良いことが全然、なかった、からさ……俺、あの時に死んでなくて良かった……!!」
途中から涙が溢れだし嗚咽のように言葉を吐き出していた。
「おぬしはこれから、わしらと楽しい思い出を作るんじゃ。昔のことなんぞ、忘れてしまうくらいにの」
そう言いながら一匹は微笑んだ。
「とは言っても五十年以上も前なら忘れてたりするのかのぉ、ほほ」
話が一段落したところでスライムが切り込んだ。
「新しい旅仲間も増えたし、目標を決めよう」
一匹と赤いスライムも賛成のようで軽く返事をする。
まず第一に欲しいのはこの旅の最終目的だ「どこに行きたい」でも「何かになりたい」でも「あるモノを見つけたい」でも、とりあえずなにか目標となるものが必要だろう。スライムは一匹と赤いスライムに尋ねた。
「俺としてはある魔導具を手に入れたいところだな」
「魔導具? どこにあるとかは分かってるの?」
「詳しい場所までは知らんがどっかの村の地下にあるらしい」
「ハッキリ言い切らんのはおぬしが得た情報じゃないからかの?」
赤いスライムは頷く。そしてその聴き得た魔導具の概要を話し始めた。
「どっかの村の地下に呪いの進行を遅らせる魔導具を保管してるとかって、実験されてるときに聞こえた。俺のこの呪いにも効くかどうかは分からねぇが試してみる価値はあると思う」
「なるほどね。君は何かある?」
「わしは……そうじゃの、やはり人探しかの」
スライムはうんうんと頷くと自身の目標口にする。
「私はこの世界を旅してみたい、かな。漠然としちゃってるけど」
「わしは別にええと思うけどの。わしだってどこにおるのかも分からん人族を探そうとしておるんじゃ、世界を旅するのとそう変わらんじゃろて」
「ふふ、確かにそうかもね」
一通り皆の目標が出揃い、誰のから始めようかと思ったが別に考えるまでもなく赤いスライムの目標である「呪いの進行を遅らせる魔導具」を探すことになった。一匹とスライムの目標は追随していることもあり、同時進行でいける。
「当面の目標はいろんな村に行って地下を探して、ついでに君の探し人も同時にっ感じで、良いよね?」
一匹と赤いスライムも異論はなく頷く。早速と言わんばかりにスライム達は小川に沿って進み始めた。
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