群衆の街
第六話 廃墟な街
数分後目的地にたどり着いた。が、先ほどの村Aと比べると活気がない……というか人が住んでいるっ気配が一切ない。
よく見ると屋根は崩れ落ち石段にはひびが入り、いたる所にツタが巻き付いていた。
人気がないとはいっても魔物や盗賊が寝床にしている可能性もあるので慎重に進んだ。
「この村? はいったい何なのじゃろうな……」
一匹はあたりを見渡しながら独り言をした。
「柵とかもなかったし、畑なんかもないね」
一匹とスライムはこの村の感想を言い合いながら歩き進んだ。しばらくするとほかの家より一際大きな建物が見えてきた。外観自体はほとんど廃れているがなぜか妙に真新しい。入り口付近にはスライム六匹分ほどの大きさの看板が落ちていた。おそらく看板を支えていた留め具が風化して重さに耐えきれず落下してしまったのだろう。
「……文字が書いておるの……」
「……読めるの?」
「……いや、読めぬな」
(冒険者ギルド……ここにしっかりとあったのじゃな)
実は一匹、人族の言語を少しだけ読むことができるのだ。とはいっても「冒険者ギルド」と「買取」「受付」だけなのだが。
この三つくらいは覚えておけと言われていたがこんなところで役に立つとは……
ざっと周囲を確認し一匹とスライム以外いないことを確認すると割れた窓ガラスから中へ侵入した。中へ入ると真っ先に外観と内装の違いに驚いた。
あまりにも――綺麗すぎるのだ。机はすべて足をつけて立っているし椅子もきちんと机の周りに並んでいる。そして机の上には汚れた皿にコップ。あたかも
次に本来ならば依頼掲示板があるであろう壁際へ行ってみた。流石にというべきか紙は一枚も張られてはいなかった。が、そのかわりに不自然な額縁が飾ってあった。依頼掲示板のボードよりかは遥かに小さく一匹よりかは少し大きい程度の額縁は四五度ほど傾いている。なにかあるのだろがあいにくとジャンプしても届きそうにない。かといって魔法で外そうにも一匹は細かな作業はあまり得意ではないためこれも断念した。
「――君! こっちに来てよ!」
不意に受付の奥のほうから一匹を呼ぶ声が聞こえた。すかさずスライムがいる場所へ向かった。
「これは……なんでこんなことになっておるのじゃ?」
真っ先に一匹は疑問の声を上げた。それもそのはず、本来そこにあるはずのものがないのだ。いや、あるにはあるのだが原型をとどめておらずかろうじてソレと認識できるのだ。
「受付の奥にあるってことは裏口……じゃよの?」
「だと思うんだけど……このありさまだと、ね」
扉の取っ手は完全に無く、開閉するための留め具も引きちぎれ、地面にはおそらくこの扉の材料なのであろうかと思われる木くずが散乱している。客観的に見れば、もともと扉はなかったかのようにも見えるのだがまるで
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