第六話 廃墟な街 2

「ここでいったい何があったのじゃろうな……」


 一匹は独り言ちた。スライムも賛同するように頷いた。

 それからは一匹とスライム一緒に行動することにした。この場所は後にして受付の裏の部屋――事務室に行ってみることにた。


「ぬ? 鍵が掛かっておるのか?」


 軽く扉を押してみたのだがびくともせず一匹は困惑した。するとスライムが前に出てきた。


「ちょっといい? ……水流操作……開いた」


「ほぉ~すごいの」


 一匹は素直に称賛した。そしてもう一度軽く扉を押してみた。


 ビュォォォォ


 扉は内開きではなく外開きだったようだ。扉の隙間からこちらの常温が吸い込まれ中の冷気が勢いよく扉を押し開きながら迫ってきた。間一髪スライムの炎弾が一匹と冷気の前で弾け氷像にならずに済んだ。扉は勢いよく開かれた反動で一八〇度周り壁に激突した。その衝撃で取っ手はもげ落ちた。


「……なっ?!」


「……えっ?!」


 同じ反応で驚いた。部屋の中が完全に凍っていたのだ。いたるところに氷柱ができ、一部雪になっている個所もあった、がそれ以上に衝撃な事実が目の前にあったのだ。


「さすがに死んでる……の」


 人がいたのだ。それもこの部屋の壁際に幾人も。全員腰を下ろし体育座りで目を瞑っている。全身を氷で覆われて。

 この部屋に窓はなくあるのは受付に繋がるこの扉だけで照明もなかった。だが部屋の真ん中にはダイニングテーブルとでも呼べる大きさの机が置いてあった。椅子や書棚などの家具はなくあるのは凍り付けにされた氷像と机のみ。ダイニングテーブルとはいってもそこまで高さがあるわけでもなく、充分一匹のジャンプで乗ることができる高さだった。


「これは……一体なんじゃ?」


 机の上には一冊の本と数枚の紙切れが広げられていた。紙には幸いと言うべきか文字と一緒に絵も描かれていた。


「どうしたの?」


 そう言いながらスライムも机の上に登ってきた。スライムも紙を見ながら唸った。


「なにかの絵……だよね?」


「そうじゃろうな。一体何を表しておるのやら……」


 一匹とスライムは顔を突きあわせながら考えた。


「ぬっ……すまんの」


「あっ……こっちこそ……」


 お互い目と鼻の先にスライムボディを突きあわせほぼ同時に視線を逸らした。一匹は少し顔を赤らめながら右上を向き、スライムは耳――があれば耳も赤くなっているだろう――まで赤くなり右下を向いた。

 前までは(といっても会ったのは数日前だが)顔を突きあわせても何も感じなかったのに……一匹は不思議な気持ちに陥っていた。

 と、一匹がモヤモヤしているとスライムから声を掛けられた。


「……も、もうこんな時間だよ。そろそろ帰ろう?」


 一匹は特に深く考えることもなく視線を逸らしたまま頷きこの部屋を後にした。

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