第六話 廃墟な街 3

 ――古びた冒険者ギルドからの帰り道。


「それにしてもあそこに居た人達はいったいなんだったんだろうね~」


「そうじゃの。凍っておったしの、何か氷属性の魔物に襲われたとか考えるのが妥当じゃろうな」


「そうだよね~、でもみんな座ってたんだよ? なにもせず無抵抗で凍らされちゃったのかな?」


「そこなんじゃよ。わしも一番そこが疑問に思っておるんじゃ」


 一匹とスライムは住み家に帰るまでの道すがらあの町について色々と考察しながら帰路へついていた。


「……わしが知る限り、人族は恨み強く生に関しての執着力が強い。はずじゃ──」


 その言葉にスライムはまあ確かにと頷いた。そのまま一匹が言おうとしていたことをスライムが繋いで喋った。


「──だからあんな死に方はおかしい……でしょ?」


「う、うむ」


「でも、みんながみんな強いとは限らないし……少なくとも生きたいって思ってる人は少なくないと思う。それに……なにもしなかったんじゃなくてっていう可能性もあると思う」


「なるほどの……」


 一匹は空を見上げながら考えた。すっかり日は傾き辺りは薄暗くなりつつあった。雲が少しずつ漂い今にも雨が降りそうだ。


「雨が、降りそうじゃの」


 スライムも空を見てそうだねと言った。


「雨は、嫌い? 濡れたくないなら走って帰る?」


 スライムからそんな提案をされたが一匹は首(スライムに首ないけど)を横に振り拒否した。


「嫌い……ではないの。あまり良い思い出はないがの」


 一匹はそう言うと下を向いて立ち止まった。スライムは急に一匹が立ち止まるものだから不思議に思いどう声を掛けようか迷ってしまった。

 いつの間にか雲行きが怪しくなりぽつぽつと降り出してきてしまった。

 スライムが言葉に詰まっていると一匹は突然しゃべり出した。地面を見たままゆっくりと何かを噛み締めるかのように。


「……まあでも、そうじゃな。わしがもしあの日から立ち直れているのだとしたら……わしは──」


 雨は一瞬にして豪雨になり一匹の言葉を最後まで聞くことが出来なかった。俯いたまま何かを言っているようだがまるで聞こえない。スライムと一匹は激しい雨に身体を打たれながらただ呆然と立っていた。


「君はっ──」


 同じくスライムも何か言おうと大声を上げたがこの雨では一切の言葉が地面にたたき落とされ、お互い相手に届くことはなかった。

 一瞬一匹がこちらを向いた。

 虚ろな目をしていた。

 なにかに期待していたような、希望を持っていたかのような、もう目。

 そして一言、口を動かして何かを伝えようとしていたようだがもちろんスライムの耳に届くはずもなくそのまま微笑むと──溶けた。否、液体状に広がった。スライムはどうにか一匹に近づくと自身の身体を器のように変形し抱えた。

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