第三話 魔鉱石の力 5

 辺りを見回すと生い茂った草が辺り一面を覆い尽くしていた。

 草の高さは一匹の全長を優に超えており、まるでバスケットボールに囲まれたソフトボールのようになっていた。

 スライムは全長よりも高い草をかき分けながら一匹のもとに来てくれていた。


「一応、水弾を造って落下ダメージは抑えれてると思うんだけど……」


「何度か空中でぶつかったと思ったがそれじゃったか」


 ようやく視界がクリアになり、混乱も落ち着いた一匹は先程のことを振り返った。


「……急いで逃げるぞぃ!」


「え? ……ちょ、ちょっと」


 一匹はそう言うや否や、スライムを引き連れてこの場から逃走した。

 一匹がその場から移動したその刹那、ヒュッと音がし思わず振り返ると、一匹がいた場所には二本の火矢が刺さっていた。


(ぬ……やはり追ってきて居るな)


 一匹は明らかに敵意のある何かがいることを確認すると、再びスライムを連れて(跳ねながら)走り出した。

 道中、幾本か飛来してきた火矢が木々に突き刺さっていたがその中でも威力の強い火矢は、突き刺さった木ごと燃やし尽くしていた。

 始めは小さな火でも、燃料さえあればいくらでも燃え続けるのが火の恐ろしいところだ。次第に炎の勢いは増して小規模ではあるが山火事となった。


「――ねえ、何に追われてるの?」


「おそらく、エルフか人族ヒューマンじゃろうな」


「……エルフ」


 なぜか、スライムはエルフに恨みでもあるのかと思うほどに怪訝そうな表情をしていた。

 一匹は不思議に思ったが、今は話している余裕もないためそれ以上深掘りはしなかった。

 飛来してきている矢の内、ほとんどは的外れな方向に飛んでいっているが十本中一発は危うかったりする。


(ん? なんか明るい場所があるの……)


 一匹は森の中だというのに光が漏れている異様な所を見つけた。そして何を思ったのかそこへ行こうと考え、すぐさま行動に移された。


「どこにっ――?!」


 一匹の後を追ってきていたスライムは、突然方向転換した一匹に驚き声を上げようとしたが、こんな時に限って行く手を阻むように飛んできた火矢によって足を(スライムに足ないけど)止めることしか出来なかった。

 スライムは火矢が飛んできた方向を見た。スキルを使い矢を放ったであろう張本人を遠視した。


「ふぅ……『千里眼』」


 スライムの瞳が一瞬で真紅に染まると、まるで闇に浸食されるかのように徐々に漆黒の瞳へと戻った。

 このスライムが持つ『千里眼』は同族の目と同期し、同じ景色を見ることが出来るスキルだ。そして、元々はなんらかの魔物が所持しているスキルなのだが、スライムがその魔物を討伐した際に『捕食』して得たスキルなのだ。


「――! いた」


 スライムはこのスキルを駆使し近くの同族達の目と同期していき、弓を持っている冒険者らしき存在を発見した。

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